「私はコーランを暗記したおかげで命を救われました」—ある元死刑囚の話(1)
2015年12月09日付 Jam-e Jam 紙

【ジャーメ・ジャム紙別冊タペシュ13面:マアスーメ・カーゼミヤーン】

 ある冬の寒い日の夜、彼の人生は新たな道へと迷い込んだ。それは彼を、死の一歩手前まで至らせ、そしてその後、自由の喜びを与えた道だった。

 夜11時頃、いつもの夜のように、彼は喫茶店を出て家路についた。いい一日とは言えなかった。ツキもなかった。朝、父親からもらった10万トマーン〔※日本円で約3300円〕を手に家を出たが、そのすべてを博打ですっていた。

私はメチャクチャ腹を立てていました。誰に対しても我慢ができませんでした。家に帰って夕飯でも食べて寝ようと、独りごちました。ある路地に差し掛かった時、バイク乗りが路地から飛び出してきました。その人物は私にぶつかると、地面に倒れました。何が起きたのか、私にはわかりませんでした。気が付いた時には、私の手には血まみれのナイフが握られていました。そして若い男性が、血まみれになって地面に倒れていました。近くにいた2人が殺人を目撃していましたが、私には近づこうとはしませんでした。人殺しの罪には死刑だということを、私は知っていました。だから、私は逃げたんです。

 通報を受けた警察官らが、殺人現場へとかけつけた。遺体は法医学のもとに送られ、初動捜査が行われると、殺人犯の身元はサイードという名の人物であることが特定された。サイードは〔女性への〕迷惑行為や悪事、飲酒の罪で、これまで数度にわたって警察に逮捕されたことがあり、彼は警察官らにとって周知の人物だった。

 警察官らがサイードの隠れ家を特定し、彼を逮捕するのに、1ヵ月を要した。サイードは取り調べのなかで、殺人の罪を犯したことを自白した。

この1ヶ月は、人生で最悪の日々でした。自分の影にさえ、怯えていました。毎晩、悪夢を見ては目を覚ましていました。逮捕されて、はじめてホッとしました。私がキサース刑(同害報復刑)を受けるのはわかっていましたが、でも私の人生に、もはや恐いものなんてありませんでした。わたしは大きな過ちを犯しました。その報いがキサース刑だったのです。

つづく


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( 翻訳者:KNI )
( 記事ID:39630 )