スーダン:バシール前大統領らのICCへの引渡(2)
2020年02月13日付 al-Quds al-Arabi 紙

■アラブの大統領の国際刑事裁判所への身柄引渡は歓迎すべきことなのか

【本紙】

こうした事実は、バシール前大統領の弁護人が引渡の決定を「政治的敵対行為であり、復讐だ」とみなす理由を明らかにしている。また、同弁護人は、この決定は「スーダンに多大な影響を及ぼす」ような治安・政治的影響があるだろうとの認識を示している。実際、権威的で象徴的なこの決定によりスーダン国外にも政治的影響を与えることが想定されている。というのも、今回の発表が実行され、バシール前大統領と指名手配中の高官らの引渡が行われれば、アラブの指導者の歴史の中で大きな先例を築くことになるからだ。2011年の数々の革命の勃発以来、多くのアラブの指導者が解任され、失脚し、殺害されてきた。しかし、もしバシール前大統領が引き渡されれば、アラブのエリートや市民たちは今後、アラブの体制やその指導者らが国際法の裁定に従い、市民に対する重罪の責任を負うという先例に依拠することができるようになるのである。このことは、スーダンやアラブの人々にとっては公正の実現という可能性のある希望を与えることになるだろう。

アラブの指導者の殆どは、彼らの地位や人々、行動という観点から言えば、国際秩序の中でアラブを代表する恥ずべきモデルとなってきた。彼らが独裁的支配の座から降りることは殆ど不可能なことであり、大抵の場合血みどろの内戦をもたらした。何十年にも及ぶ専制政治を経ると、政治システムは恐ろしいほど衰退する。そしてそれは反体制派にまで及び、今度は反体制派が独裁的な性格を受け継いでしまう。数十年にわたる投獄、弾圧、圧政は彼らを非民主的で反抗的な組織へと変え、対立する他の政党の追放あるいは撲滅、復讐のために争う組織へと変えてしまうのだ。

バシール前大統領の引渡はもちろん重要な先例となる。しかし、重罪を犯し血で手を染めた(前大統領時代の)高官らが権力の座に留まり続けるためにバシール前大統領を身代わりにしたり、国際システムに近づくために生け贄として差し出したりするべきではない。

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( 翻訳者:堀嘉隆 )
( 記事ID:48550 )