イラン選挙後の中東の未来 ペルシア湾の新たな課題とアメリカに対するサウジアラビアの絶望
2021年06月20日付 Hamshahri 紙


 イラン・イスラーム共和国の第8代大統領にライースィー師が選ばれたことには、明確なメッセージが込められていたが、中東地域の国家関係の未来にどのような影響をもたらすのだろうか?

【ハムシャフリー電子版】西アジア地域で相次いで実施される数多くの選挙は、ペルシア湾地域の王政諸国を取り組むべき課題に直面させ、中東域内関係の未来を影響下に置いてきた。シリアやシオニスト政権[イスラエル]の選挙後に実施されたイラン大統領選にも明らかなメッセージが込められており、現在、専門家らが中東諸国間に想定される将来について分析しつつ、推測に勤しんでいる。

 トムソンロイター研究所は、ある報告書の中で「イラン政治が右傾化してきているため、この国とペルシア湾岸アラブ諸国との関係は核合意次第になる可能性がある」と記した。アナリストらの言によれば、ペルシア湾地域のアラブ諸国とイランとの交渉が、イラン大統領選において原理主義派寄りの法官[ライースィー師]が勝利した後で難化する可能性があるとはいえ、これらの国々の関係強化のために設定された対話の流れが止まる可能性は低い。

 金曜に選挙でエブラーヒーム・ライースィー師が勝利したことを受け、シーア派のイランとスンナ派のアラブ王政諸国間の関係改善の見通しは、最終的には2015年核合意再建の進展次第である。何年も前から対立状態にあるイラン・サウジアラビア関係は、核交渉のテーブルに世界の大国が再び着いたのと同時に、イラン太陽暦の新年初めから新しい段階に入っており、2国間での直接対話がオルディーベヘシュト月[西暦4月21日~5月21日]から始まっている。

 アラブ首長国連邦の政治アナリスト・アブドゥルハーリク・アブドゥッラー氏はこう語った。「現在イランは明白なメッセージを伝えており、彼らは一層保守的な立場に移行しつつある。しかし、中東地域の危険で難しい状況ゆえに、イランはより急進的な立場をとることを避けるだろう。ドバイを中心にイランにとっての貿易の窓口であるアラブ首長国連邦と、域内で仲介者の役割を担うことが多いオマーンは、即座にライースィー師に祝福の言葉を送った。しかしサウジアラビアとバハレーンのみが、ペルシア湾地域の国々で唯一、新大統領に関して言及していない。」

 サウジアラビアのウカーズ紙コラムニスト・ハーリド・アル=スライマーン氏は以下のように記した。「顔を変えることはできるが、イランの指導者は[あくまで]アーヤトッラー・アリー・ハーメネイーである。」欧米への従属を容認しない批判者であり、イラン指導者と共通の目標を有するライースィー師も、核交渉の継続を支持してきた。ペルシア湾研究センター所長のアブドゥルアズィーズ・サーゲズ氏も、核交渉の成功とアメリカとの関係改善によって情勢は良くなるだろうと述べた。

 しかしながら、ジュネーブ安全保障政策センターのジャン=マルク・リクリ研究員は「核合意再開とイランに対するアメリカの制裁解除は、ライースィー師の権限強化、イラン経済危機の緩和およびペルシア湾交渉における圧力行使の原因となる。」と信じている。しかし、イランとペルシア湾岸アラブ諸国は一国たりとも、ペルシア湾海域での石油タンカーやサウジアラビアの石油施設への攻撃、そしてソレイマーニー司令官殺害を含む2019年の緊張状態へ後戻りすることを望んでいない。バイデン大統領が指揮するアメリカ軍の中東での影響力低下により、ペルシア湾岸諸国間でより現実的なアプローチが促進されるだろう。

 他方、バイデン大統領はイランのミサイル計画の再制御と、ペルシア湾岸アラブ諸国の最も主要な課題としての、イエメンをはじめとする中東地域での民兵組織の支持をやめさせることを望んできた。リクリ氏は以下のように語った。「サウジアラビアの人々は、自身の安全保障のためにこれ以上アメリカを頼ることはできないと理解している。そして、イランがイエメンへの直接的な攻撃とその泥沼化を通じて、この王国[サウジアラビア]を圧力の下に置いてきたことを分かっている。」サウジアラビアとイランの交渉は主にイエメンに焦点を当てている。イエメンではサウジアラビア主導の軍事同盟が、イランと協力関係にあるホウスィー[フーシ]運動に対し、長年に渡って戦争を行っているが、[この戦争は]6年前からアメリカの支持を失っている。

 イギリス王立国際問題研究所のサナム・ヴァキール研究員は先週、以下のように記した。「中東域内の対話は、特にペルシア湾の安全保障について継続されるとみられるが、この交渉の進展はイランの立場にかかっている。」

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( 翻訳者:TM )
( 記事ID:51296 )