イラク:バルキース・シャラーラと記憶のかばん(2)
2021年11月26日付 al-Quds al-Arabi 紙

■バルキース・シャラーラと記憶のかばん:イラク人の食とリフアト・チャーディルジーの香りについて

【ムハンマド・トゥルキー・ラビーウー】

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料理は世界を変えることを目指す芸術であると、ジューン・アダブーンは言った。この思想を踏襲しながら著されたバルキースの著作『料理人』は、イラクの「ダール・マダー」社より出版されると、瞬く間に読者から大きな注目を集めた。ただ、汎アラブ主義者のインテリ、故ハイルッディーン・ハスィーブは、初稿を読んだ際にネガティブな反応を示した。バルキースの記憶では、彼女は夫で建築家の故リフアト・チャーディルジーとともに、当時まだアラブ統一研究センター(CAUS)の所長を務めていたハスィーブを訪ねたことがある。この時、リフアトはハスィーブに2つの原稿を渡した。ひとつは、『人類文明における建築とその役割』というもので、もうひとつは『人類文明における料理とその役割』という表題だった。ハスィーブはこれら2つの表題を手早く確認しただけで、チャーディルジーのひとつ目の原稿の出版を承諾した。一方で、料理人と食の社会学に関する本の出版は拒否している。おそらくこれは、ハスィーブの研究センターの特色として残っていた傾向だった。すなわちこの研究センターは、汎アラブ主義と想像上のアイデンティティの問題への関心を保ち続けた一方で、人文学のそのほかのトピックやアプローチに関する思索を採用することはなかった。

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( 翻訳者:下宮杏奈 )
( 記事ID:52917 )