エジプト:「歴史的エスナ再生プロジェクト」が第16回アーガー・ハーン建築賞を受賞
2025年09月16日付 Al-Ahram 紙
■エスナ復活プロジェクトが20年ぶりにエジプトを世界的な建築の場に復帰させる
【カイロ:本紙】
エジプトのシャリーフ・ファトヒー観光・考古大臣は、ルクソールの「歴史的エスナ再生プロジェクト」が第16回アーガー・ハーン建築賞を受賞したことに喜びを表明した。同プロジェクトの受賞は、キルギス共和国の首都ビシュケクで開催された式典のなかで発表された。
ファトヒー大臣の代理として、同省の研修担当顧問であるスハー・バフガト博士が地方開発大臣であるマナール・アワド博士率いるエジプト使節団とともに、授賞式に参加した。これにより、2001年のヌビア博物館、2004年のアレキサンドリア図書館以来、エジプト建築は20年以上ぶりに、世界的建築のシーンに再び復活することとなった。
エジプト建築が世界的な地位に復帰
ファトヒー氏は、理想的なかたちでのプロジェクト終了に貢献した関係者全員の惜しみない努力を讃え、今回の受賞がエジプト建築の世界的な地位における分岐点となると評価したうえで、このプロジェクトは、地域固有のアイデンティティの保全と将来志向を両立させ、他のエジプト各都市でも応用が可能である規範的なモデルであると付言した。
スハー・バフガト博士は、「歴史的エスナ再生プロジェクト」プロジェクトの受賞は、公共部門や市民社会、支援当局という様々な開発パートナーとの協力における卓越した試みが評価された結果であると説明し、同賞の上級審査委員会が、このプロジェクトを「伝統的な建築の保持というプロジェクトの枠を超えた、他に例をみないモデル」と評価したと指摘した。同プロジェクトが、地域社会の効果的な参画のもとで、遺産の保全と、経済、社会、文化面での強化とを融合させたものだからである。
さらに審査委員会は、エスナでの成果は、手工芸、文化的慣習、伝統料理といった無形遺産がもつ役割を、都市・文化再生の本質的な要素として際立たせたと指摘した。
また、20以上の遺跡や25以上の郷土料理レシピがファイリングされたほか、エスナの婦人らの主導のもとで、「木工ワークショップ」や「オクラ・キッチン」のような小規模の経済的なイニシアチブが複数始動した。
歴史的エスナ再生プロジェクト
「歴史的エスナ再生プロジェクト」はスペイン、オランダ、米国の各政府などを含む国際的なパートナーからの資金提供を受けて、、「タクウィーン統合的地域社会開発財団」が設計、実施した。
同プロジェクトは、建築遺産の保護と都市における文化的・経済的活動の活性化を融合させた包括的な開発ビジョンに特徴づけられてた。同プロジェクトのもとでは、ワカーラ・ガダウィー(商業施設)の修復、その数十年ぶりの一般公開のほか、フヌーム神殿一体の整備、伝統的なカイサリーヤ市場の開発や15におよぶ遺跡の外観の刷新、歴史的なバザールの開発の発展、さらには、伝統工芸・修復・観光ガイド分野においてエスナの若者400人以上に対する研修が実施された。
エジプト代表団には技師でもあるアブドゥルムッタリブ・イマーラ・ルクソール県知事のほか、タクウィーン統合的地域社会開発財団の共同創設者も含まれた。また式典には、国内外の要人、受賞国の代表者ら、世界各国の専門家・建築家らが出席した。
アーガー・ハーン建築賞が1977年に設立され、建築業界でもっとも偉大な賞のひとつとみなされていることは特筆に値する。この賞は3年おきに、建築の卓越性と、地域社会の文化的・社会的ニーズへの対応の両立に成功したプロジェクトに対して授与される。そしてこの賞は、建築家や建設者から自治体や職人まで、プロジェクトの受賞に関わった全員に敬意を表すものである。
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( 翻訳者:小林友哉 )
( 記事ID:60783 )