シリア:ネタニヤフ首相がシリア南部に「侵入」か
2025年11月21日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ネタニヤフ首相がシリアの「緩衝地帯」を視察…軍事行動とは異なる「政治的越境」を演出
【本紙】
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が先週水曜、シリア領内の「緩衝地帯」で視察を行い、日常的な侵犯・検問・拘束を伴う軍の作戦とは性格を異にする戦略的な政治的越境を図った。同首相は国防・情報・外交の要職を帯同して視察の意味合いを強調することに専心しした。同首相に随行したのは、イスラエル・カッツ国防相、エヤル・ザミール参謀総長、ダヴィド・ジーニ・シャバク長官、ギル・ライヒ国家安全保障会議議長、ラフィ・ミロ北部方面軍司令官、ヤイール・フライ第210師団長のほか、ギドオン・サアール外相、ヤヒエル・ライテル駐米大使、そして「地区における政府活動調整官」(COGAT)のガッサーン・アリヤーン少将(ドゥルーズ派。2014年に「カッサーム旅団」による待ち伏せ作戦により負傷)であった。
ネタニヤフ首相は、政府報道局の説明によれば、「国防軍」の拠点で現地評価を行い、「北部戦線の情勢」に関する安全保障ブリーフィングを受け、部隊の即応態勢を協議する会合を主宰したうえで、兵士向け演説で攻勢・防勢能力の重視を訴えた。発言は「同盟者であるドゥルーズの保護、そして何よりイスラエル国家の防衛」に重点を置き、任務がいつでも変化し得ると部隊に伝えた。視察の翌日には、イスラエルの戦闘機8機がシリア領空に進入し、南部から中部(ヒムス、ハマーの2県)を経て地中海沿岸のトルコ国境近くまで飛行した。
この訪問は、ガザに対する激しい空爆と、レバノンに対する攻撃の拡大と並行して行われた。レバノンではサイダー近郊のアイン・ヒルワ難民キャンプが先に標的となり、住民に多数の犠牲が出た。リタニ川以南の外側にも打撃が広がる中、アラブ・国際各レベルでこれに見合う抑制や均衡は見られなかった。例外的に、フランスはゴラン高原からの撤収とシリア主権の尊重を要請し、レバノンへの攻撃激化に懸念を表明した。カタールはアイン・ヒルワへの攻撃とレバノン主権の侵害を強く非難し、国際法・国連憲章の重大な違反だとした。さらに、サウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子がドナルド・トランプ米大統領と会い、シリア問題とレバノン問題の打開についてイスラエルを交えた形で協議したことが伝えられた。
イスラエル公共放送協会は、シリア南部からの撤収をめぐる意見対立を背景に、イスラエルとシリア当局の交渉が行き詰まったと視察の前日に発表した。報道によれば、イスラエルは「安全保障協定」の署名を拒否し、自らが占拠する拠点からの撤収の見返りとして「平和条約」の締結を条件とした。
これに関連して、シリアのアフマド・シャルア暫定大統領は先週、最終合意に至るには、イスラエルが2024年12月8日(バッシャール・アサド前政権によるダマスカス支配が崩壊した日付)以前の境界に撤収することが必要だとの立場を示した。発言は、イスラエルが志向するものが単なる「平和条約」ではなく、なおも占領拠点の全面撤収を含まない方向に及ぶことを示唆した。大統領はまた、米国を含む多数の国際アクターがシリア側の立場を支持しており、トランプ米大統領もこの見解を支持し、可能な限り速やかな解決を後押しする意向だと述べた。
シリア政府は、欧州連合だけでなくロシアも「国際的な関係諸国」に位置づけることに力点を置き、ロシアがシリア南部で部隊再配置に向けた措置を講じているとの報道も伝えられた。これは今月17日に高位の軍事代表団が広範な現地視察を行った後の動きであり、米国との調整の下で進んでいる可能性が高い。
以上を踏まえると、少なくともシリア領域でのイスラエルの大幅なエスカレーションは、国際・地域の枠組みがネタニヤフの思惑と逆方向に動く中で、首相およびその政権による「個人的な挑戦」の色彩を帯びていると解釈可能である。
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( 翻訳者:国際メディア情報センター )
( 記事ID:61174 )