ペロシ米下院議長、アルメニア訪問、トルコとアゼルバイジャンを非難

2022年09月18日付 Milliyet 紙

ナンシー・ペロシ米国下院議長は、アルメニア訪問でアゼルバイジャンとトルコ双方に対して扇動的な声明を発表した。アゼルバイジャンからはペロシの発言に反発が起こった。

ナンシー・ペロシ米下院議長と下院議員らからなる訪問団は、アルメニアで接触を始めた。今年8月に台湾を訪問して当該地域に緊張をもたらし、中国と米国を対峙させたペロシは、アゼルバイジャンとアルメニアの衝突について、今回のアルメニア訪問で扇動的な声明を出した。昨日(9月17日)夕刻に首都エレバンに到着したペロシには、フランク・パロン下院エネルギー・貿易委員長、アンナ・エシューならびにジャッキー・スピアー下院議員が同行した。

■「認められるべき」

議員団は午前中、エレバンのいわゆるアルメニア人ジェノサイドの犠牲者のために建てられたツィツェルナカベルト記念碑を訪問した。その後ペロシはアレン・シモニャン・アルメニア国民議会議長と対面し、外交会談出だしからアゼルバイジャンとトルコに対し扇動的な発言を行った。会談後の共同記者会見でペロシは、「アゼルバイジャンにより開始された、ということが認められるべきだ。アルメニアに対するアゼルバイジャンの違法かつ殺傷的な攻撃により、我々のアルメニア訪問は大きな重要性を持っている。下院としてこの攻撃を激しく非難する」と述べた。

■「責任はアゼルバイジャンとトルコにある」

地域問題は外交的手段で解決されるべきだとするペロシは、以前もトルコとアゼルバイジャンに衝突の責任があったと述べ、「会談冒頭でも、下院両党が長年続いている衝突の責任はトルコとアゼルバイジャンにあると言及した」と話した。

ペロシはまた、米国は地域安定のために積極的に動いており、このような非常事態にはアルメニアのそばにいると述べ、「全世界的な独裁政治との戦いにおいて、我々はアルメニアのそばにいる」と述べた。

■「米国はアルメニアの政治経済において重要な役割を担っている」

アレン・シモニャン・アルメニア国民議会議長は記者会見で、アゼルバイジャンがアルメニア領土に対し軍事攻撃をしかけたと主張し、「米下院議員団のアルメニア訪問は、我が国にとって最も困難な時期に実現している。この点、訪問に感謝する。ご存知のように、9月13日以降アゼルバイジャンは、アルメニアの主権領土に対し新たな攻撃を開始した。アゼルバイジャン軍はアルメニアの国境陣地だけにとどまらず、複数の居住地や民間インフラにも容赦なく砲撃を行った。残念ながら多数の犠牲者が出ている」と発言した。

■アゼルバイジャンから反発

アゼルバイジャン外務省による声明では、ナンシー・ペロシ米国下院議長のアルメニアでの声明に反発が示されるとともに、「ペロシは、今回の訪問を米国内政治課題と米国のアルメニアロビー団体の支援を得るために利用したとみられる。米国の国内政治課題の企みやとロビー団体の利得がアルメニアを通して南コーカサスに持ち込まれることは容認できない」と述べられた。

ナンシー・ペロシ米国下院議長は、アゼルバイジャン・アルメニアの衝突を受け、昨日公式訪問として同行の訪問団とともにアルメニアに到着し、衝突の責任はアゼルバイジャンにあるという声明を行った。ペロシの声明に反発を示したアゼルバイジャン外務省は、ペロシの声明はもろい地域平和を強化するのではなく、緊張を高めようとしていると述べた。

外務省は、ペロシは親アルメニアの政治家として知られており、訪問団に親アルメニア下院議員がいることがそれを証明していると強調し、「米国の下院中間選挙期間が近づいていることを考慮すると、ペロシはこの訪問を米国内政治課題と米国のアルメニアロビー団体の支援を得るために利用したとみられている。米国の政治課題の企みやロビー団体の利得がアルメニアを通して南コーカサスに持ち込まれることは容認できない」と表明した。

■「アゼルバイジャンに対する虚偽不当な非難は受け入れられない」

外務省は、地域情勢を揺るがすペロシの声明を遺憾だとし、「アゼルバイジャンに対する虚偽不当な非難は受け入れられない。アルメニアでのペロシの発言は、アルメニアプロパガンダを土台として行われた声明と捉えられるべきだ。これは、アルメニア・アゼルバイジャンの二国関係の正常化に向けた努力に対する大きな打撃である。こういった一方的な歩みや根拠のない声明は、もろい地域平和を強化するのではなく、緊張を高めようとしている」と述べた。

■ペロシ訪問の意味とは?

アルメニアの挑発が続くなかでのペロシの今回の訪問の意味とは何か?CNNテュルクの生放送で退役大佐のギュルセル・トクマクオールが解説した。トクマクオールは次のように述べた。

「ペロシの台湾訪問の枠組みでみると、米国はペロシを通じて、独裁政治に対する民主主義という視点の政策を説明するための活動を実行し始めた。

中国と米国の緊張関係は知っての通りだが、その緊張を刺激するようにグローバルメディアでトピックが取り上げられた。反発があったが、他の訪問団が後に続いた。今、米国がペロシを使って南コーカサスに接触したこの瞬間を指し示す必要がある、というのは今後米国代表団がやってくる可能性が高いからだ。いくつか訪問団が訪れた後、計画が作られると予測すべきだ。

要するに、ここでアルメニアにどういった支援がされるのか、ということだ。政治的に、国際メディアで行われるサポートや防衛上のニーズ、これらは全て、虐殺記念碑の訪問でトルコの神経を逆なですることが目的だ。それを書き留めておく必要がある。アゼルバイジャン・アルメニア衝突にも留意する必要あるが、本質的にはここ南コーカサス問題で、米国がロシアに対しどのような動きをするのか、ペロシを通じて読み解くことにある。大きな視点から見れば、この作戦開始の第一歩として位置づけられるだろう。」


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翻訳者:安井 悠
記事ID:54077