2006-12-31  Murat Yetkinコラム:サッダームの処刑は誤りでありイラクの混乱を増幅させる(Radikal紙)

イラクのサッダーム・フセイン元大統領が2006年12月30日早朝に処刑されたことが公式に発表された。
無慈悲な独裁者達を記憶にとどめておく方法は、彼らを処刑することだ。
独裁者だけではない。反逆者や抵抗勢力の指導者達を記憶にとどめておく方法も彼らを死刑に処すことだ。死刑には間違いを訂正する余地はない。(執行してしまったことを)後悔することも許されないし、過ちはなくならない。死刑を執行しなければよかったなどとは言えないのだ。

死刑は、刑罰ではないのだ、殺人なのだ。

1982年にドゥジャイル村で148人のシーア派男性がまとめて殺害された作戦行動を命じた罪で、サッダーム・フセイン元大統領に死刑判決が言い渡された。サッダームは、同様に1986年から87年に数万人のクルド人が殺害されたアンファル作戦ならびに1988年にハラブジャで5千人のクルド人が死亡することになった化学兵器による襲撃を命じた罪でも死刑が求刑され公判中だった。

無慈悲な独裁者だった。サッダームが統治していたイラクでは、拷問が国家運営のための普通の手段になってしまっていた。多くの知識人を犠牲にしたトルクメン人達も抑圧されていた。イラクは世界で最も裕福な国のひとつであるが、サッダームのティクリート出身者とバアス党以外の集団、とくに人口の大半を占めるシーア派は全く恩恵を受けることが無かった。

1991年にクウェートを占領したイラクに対して国連と世界を動かしたにも関わらず、2003年には戦争を正当化するわずかな国を従えて行った米国のイラク攻撃が今日たどり着いたところは、すでに米国で出版された本格的な書籍のタイトルになるくらいの大失態だ。

米国のブッシュ大統領は、自身の産物であるこの大失態を一掃するために、いつの日からか出口を探している。イラク攻撃の立案者のひとり、ドナルド・ラムズフェルド氏を国防長官から辞任させたことがどのような変化をもたらしたか議論される一方で、ブッシュ大統領は数日前に重要な会議を行った。テキサスにある私邸で行われたこの会議には、ロバー ト・ゲーツ新国防長官、リチャード・チェイニー副大統領、コンドリーザ・ライス国務長官、そして統合参謀本部議長のピーター・ペース海兵隊大将が参加した。

この会議の2日後、12月30日の夜明け直前にサッダーム・フセインは数日前に下された死刑に処された。死刑執行が、大半のイスラーム国が使っているサウジアラビア式のカレンダーに則って30日から始まった犠牲祭の初日、そして犠牲祭中の特別礼拝が始まる前というタイミングが選ばれたことも象徴的な意味をもつ。死刑執行は、多くても4つの国の政府が歓迎した。それは米国、英国、イスラエル、イラン。示唆に富む「四カ国連合」だ。一部のアラブ諸国では、国家レベルで服喪が宣言された。ロシアによる「社会が混乱するだろう」という警告は全ての点において的を得ており、正しい。

EUおよび人権団体は死刑を野蛮な行為として非難した。トルコ国内において、EUの方針や人道的側面に適した唯一のコメントは、共和人民党のデニズ・バイカル党首がしたものだった。政府は「どちらにもつかないでおこう。」という考え方で、はっきりとした態度表明をしなかった。

サッダーム・フセインのあらゆる暴虐行為にも関わらず彼の処刑は、次の2点の理由から間違いだった。
1. 人道的、法的観点から死刑に反対する必要があったから。
2. 死刑判決を出した裁判所は、外国の占領統治下で設立された機関であるから。

首相、財務大臣、外務大臣を政治的理由によって、そして三人の大学生を「体制を揺るがしかねない」という理由で処刑し、9月12日の悲劇を経験した後で、死刑が誤りであるという結論に至った国として、そしてまた、世論の大半によって死刑が当然だと思われているアブデュッラフ・オジャランの死刑を停止させ、憲法改正によって死刑をなくした国として、少なくともこれは言うことができたのに。

サッダーム・フセインの処刑は、政治にも結果を残さないだろう。米国はこの方法でシーア派やクルド人の共感と支持が増強するだろうと考えたかもしれない。しかし中東の伝統的な考え方ではこの死刑は終わりではなく、始まりと認識されるだろう。

サッダームの最後の言葉が「結束を固めなさい。」であったといわれている。私はイラクがすでに崩壊過程に入ったと思う。それをひとつにまとめる力、それは現在、アメリカ軍の存在だ。そのアメリカ軍が撤退し始めるにつれ、イラクの崩壊(分裂ではなく崩壊)が目に見えるかたちになってくるだろう。2007年にトルコを待ち構えている諸問題のなかにこの問題もある。

これらのこと全てにもめげずとにもかくにも、犠牲祭と新年が皆様に健康、平和、そして幸福をもたらしますようにお祈り申し上げます。

URL: http://www.radikal.com.tr/haber.php?haberno=208815

(翻訳者:丹羽 貴弥)

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