湾岸地域における前例のない軍事的準備
2012年09月20日付 al-Hayat 紙

2012年09月20日 木曜日『アル=ハヤート』

【ドバイ:リヤード・カフワジー*】

異なる標題の下、アラブ湾岸地域における軍事的準備行動が加速している。それは一つの目的のために他ならない。すなわちイランの核開発プログラム停止への努力が導く可能性のある全てのシナリオに備える事だ。米国とイスラエルの間で声明が衝突しあい、対立口調が激しく、また語調が強まっているにもかかわらず、米政権はイランに対する政策を修正し、核開発を進めるイランの迎え入れ、共生からイラン政府の核兵器取得を阻止する政策へと転換したことは明白になった。専門家の大多数はイランの核開発プログラムの進展を防止するための経済制裁や政治的圧力が失敗に終われば、遅かれ早かれ軍事的選択に繋がるだろうとの見解で一致している。もはや今日において米政府とイスラエル政府の意見の対立は、それが強制的な手段によるものであれ、イランの核武装への転換を阻止すべきか否かにあるのではない。いつ、その阻止のために軍事的選択を踏み切るべきかで対立しているのだ。

イラン問題とその影響を議論するために欧州のある首都で今月行われた非公開の会議に集った米国や欧州の政府関係者や専門家らによれば、イスラエル政府は同国の諜報機関によるイランの核開発プログラムの進展の度合いに対する評価を主張しているとの事だ。この評価でイスラエル政府はイラン政府が1年以内に核兵器を保有すると予測するが、一方で米国による評価はイラン政府がより長い期間、すなわち2~3年要すると指摘している。またイスラエルによる評価は、イランの核施設に対するいかなる攻撃への、想定される反撃規模においても米国の評価と異なっている。また、イスラエル政府高官らはイラン側による反撃が制限されているとの考えを押している。その理由は、仮にイラン政府がホルムズ海峡封鎖に踏み切り湾岸地域の米国企業を標的にした場合、欧米・アラブ勢力に対する勝ち目のない戦争の中に自らを見出す事をイランは恐れているからと考えるためだ。一方、米政府高官らの大多数はイランによる反撃が地域的・国際的戦争を引き起こす程大きなものになると考えている。

前述の会議では、複数の声明によりイスラエル側のバラク・オバマ大統領に対する信頼が欠如した状態の存在が明らかになった。またオバマ大統領が適切な時期に本当に軍事的選択に踏み切れるかについても信頼が欠如しており、それを原因としてイスラエル政府は米大統領選期間中にオバマ氏に圧力をかけること決定した。米政府高官らの中には、オバマ大統領が大統領選で勝利する公算が高くなるとイスラエル政府が感知した場合に、同政府がイランの主要な核開発施設のいくつかへの空爆やミサイル攻撃を仕掛けることを恐れる者もいる。イランの反撃が大きく、ホルムズ海峡閉鎖や米軍基地への攻撃を伴う場合には、オバマ政権自身が欧米・アラブの同盟の先頭に立って、戦争への突入を余儀なくされる事態に直面するだろう。

そして将来的ないかなる戦争においても、特に海上・航空作戦や弾道ミサイル、巡航ミサイルに対する防衛、機雷除去において米軍が最大の役割を担うだろう。

軍事評論家らは、過去数年に発されたイランに対する軍事的選択への踏み切りの脅威と現在起きていることの間の今日における基本的な違いは、本格的な軍事的準備の規模にあることに注目している。それも湾岸地域では前例のない規模である。というのも米国は単独で、3隻の空母と数十隻の駆逐艦、フリゲート、掃海艇、揚陸艦の他、特殊部隊や揚陸艦や巡航ミサイル装備型原子力潜水艦のための海上基地を結集しているからだ。この基地は、共同軍事演習の名の下でアラブ(ペルシャ)湾やオマーン湾にしばらく配置されてきた欧米・アラブ勢力の駆逐艦やフリゲート、掃海艇により援護されている。同様に、弾道ミサイルに対する防衛の共同演習の実施という理由で、米国の艦船や軍がイスラエル沿岸の内部・前方に配置されている。

専門家らは軍事的選択へ踏み切る時節を巡って意見が分かれる一方、将来的に破壊的戦争が勃発し、それが国際経済や湾岸地域、軍事・民間のインフラ設備を失い、経済が崩落し、領土の統一性が脅かされる事になるイランにとっては特に大きな痛手となる、という点においては全員が一致している。

*戦略問題専門家

(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介
されています。)

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( 翻訳者:川上誠一 )
( 記事ID:27648 )