シリア:「ダーイシュ」はハッド刑を実行
2014年03月24日付 al-Watan 紙


■「盗み」や「殺人」に対するハッド刑を適用…ダーイシュはアレッポで男の手を切断、ラッカでは磔の刑を実行か!?

「ダーイシュ」の略称で知られるテロ組織「イラク・シャーム・イスラーム国」は、ラッカ市で斬首刑やキリスト教徒に対する「ジズヤ」(訳注:イスラーム国で非イスラーム教徒に課せられる人頭税)の課税を行った後は、アレッポ県マスカナ市で盗みを働いたとして男の手を切断した。

反体制派の複数の新聞がSNSサイト「フェイスブック」上で動画を配信したが、その中では目隠しをされた男が目の前のテーブルに腕を固定され、武装した男の一人が彼を掴んで動けないようにし、別の武装した男が刀を使って手首を切り落とそうとしている様子が映し出されていた。

ダーイシュは、武装した男らが、盗みを働いたのだという男の手を切断している画像集を公開した。ダーイシュは、その男が罪を悔いあらためるよう、イスラーム法シャリーアによる判決の執行が求められたのだと主張している。手の切断は多くの人々が集まった面前で行われ、武装した男らは「アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)」と叫んでいた。SNSサイト上で複数の新聞が報じたところによれば、同組織は数週間前にも、アレッポでお腹を空かせた子供たちに食べさせようとして鶏を盗んだ男の手を切断していた。

イスラーム国は数日前にも、SNSサイト「フェイスブック」上の同組織に関係する新聞で、彼らの主張によれば殺人を犯しお金を盗んだという男に対して「報復刑」を実行する動画を配信していた。

動画では男の死体が映されており、ダーイシュによれば男はまず頭部に銃弾を撃ち込まれて殺害され、その後公道脇の壁に磔にされたという。動画には住民らが集まっている様子も映し出されており、その中には携帯電話で磔にされた男の写真を撮っている少年らの姿もみられた。

数週間前には「ダーイシュ」はラッカ市のキリスト教徒に対しジズヤを課し、「保護の契約」を結んで「キリスト教徒」に3つの選択肢のうち一つを選択することを強いた。その選択肢とは、「イスラーム教に入信すること、さもなければ現在の宗教に留まるがジズヤを支払い、イスラーム法シャリーアによる統治に従うことを選ぶ、また、それらを拒絶する場合、その者たちは戦士であり、彼らとイスラーム国の間には剣以外のものはない。そして彼らが選んだのはジズヤを支払うことだった」。

「ダーイシュ」は、以前は反体制派の戦闘員の勢力下にあったシリア北部のエリア多数を制圧している。一方、アレッポ、イドリブ、デリゾールの各地域と郊外において、「ダーイシュ」と自由軍の民兵武装集団との戦闘が数か月にわたって継続しているが、過去3か月の間にそれらの戦闘は最高潮に達した。そのため、「ヌスラ戦線」がダーイシュにその行為の一部について明らかにするためシャリーア法廷に従うよう要求し、さもなければ追放に直面すると脅すに至った。ダーイシュの戦闘員の制圧下にある地域の多くが彼らの行き過ぎた行動、公開処刑の実行、公の場における鞭打ちなどの刑罰に苦しんでおり、そのためにこれらの地域の多くの住民はダーイシュに反対するデモに出た。

ダマスカス当局は、「ダーイシュ」も、その他の武装集団同様「テロ」組織であるとみなしている。また「ダーイシュ」の指導者らは組織に戦いを挑むもの全てを脅迫しており、「革命反体制勢力国民連立」と自由軍の人員らを「妥当な標的」であるとみなしている。

テロ組織アル・カーイダに属する「ダーイシュ」は2006年にイラクで結成され、現在シリア北部の多数の地域を勢力下においている。指導者はアブー・バクル・バグダーディー氏。


*訳注:ハッド刑とは、イスラーム法学者によりコーランに明記されているとされる刑罰。手足の切断や石打ち、むち打ちの刑などが含まれる。




本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:前田悠作 )
( 記事ID:33346 )