コラム:バグダーディーの「ダーイシュ合州国」
2014年11月14日付 al-Quds al-Arabi 紙
■バグダーディーの演説を分析:アラブは「ダーイシュ合州国」
【社説】
「例え不信仰者が忌み嫌おうとも」と題した2日前の最新の演説において、「ダーイシュ」(イスラーム国)の指導者アブー・バクル・バグダーディー氏は、挑発と祝福の言葉を織り交ぜつつ、エジプト、イエメン、サウジアラビア、リビア、アルジェリアが、彼が宣言した「自称カリフ国家」の「州」となったと述べた。その上で、「ローマに到達するまで、ムジャーヒディーンは進軍」を続ける、と誓った。
演説の中には、危険な兆候を示唆する注目すべき点がいくつもあった。
第一に、演説の文言によれば、バグダーディー氏は、「イスラーム国の新たな諸州」の樹立と、「それらの総督の任命」を宣言した。「また、われわれは、前述した全ての州やその他の州においてわれわれに忠誠を誓った団体、個人の忠誠を受けいれたことを発表する。われわれはメンバー各自に、それぞれに最も近い州に合流することを求める。また各メンバーは、われわれによって任命された総督に従順に従わなければならない」。エジプトの「アンサール・バイト・マクディス」は、数日前に「ダーイシュ」に忠誠を誓っている。また、リビアの組織「ヌスラ」も今年6月、同組織に忠誠を誓った。
バグダーディー氏は明らかに、国際有志連合の空爆による無視できない影響から注意を逸らすことを目的として「戦場」の拡大に努めている。空爆の影響により、彼はシリア北部のアイン・アラブ市(コバーニー)の支配を強化することに失敗し、さらに、イラク各地の戦線において進軍が停滞した。しかし、このことは、彼がイラクやシリアにおいてのみでなく、地域の全ての国にとっての大きな危険・脅威を生み出しているという事実に矛盾することではない。
バグダーディー氏が彼の言うすべてのアラブ諸国に組織を拡大すると主張していることに現実性があるかどうかは別としても、彼の演説は、テロの新しい拡張図、そしてそれに対して行なわれると予想される戦いのあり方を描き出している。この演説の後、少なくともエジプトとリビアの高官は、自国の領土にダーイシュが存在することを否定できなくなった。そしてアメリカ人は、その頭や腕が野蛮な怪物のように増えてしまったテロの存在の事実から逃れられなくなってしまった。テロは、より大きな題目のもとに正式に活動をし始めたのだ。つまり、テロとの戦いは、さまざまな名前がつけられたとしても、一つの国、あるいは一つの戦線のみでの戦いにとどめることはできないのである。
(後略)
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:前田悠作 )
( 記事ID:35910 )