バインチュンを作る習慣を後の世代に伝えることがとても必要
2018年02月15日付 VietnamPlus 紙
家族のメンバーがバインチュンを作りに一緒に参加し、温かく楽しい雰囲気に包まれている。(写真:トゥイー・ヅオン/ベトナム通信社)
家族のメンバーがバインチュンを作りに一緒に参加し、温かく楽しい雰囲気に包まれている。(写真:トゥイー・ヅオン/ベトナム通信社)

 現代社会において、多くの伝統が失われつつあるが、ベトナム人がまだ今でも維持している伝統的価値がある。それは、旧正月テトの機会にバインチュン[ベトナム風の四角いちまき]を作り供物に捧げる習慣である。旧正月テトの時期にバインチュンを供物にし、拝むことは、生活の様々な面を映し出している。
 バインチュンは、民族の文化の濃い象徴的な食べ物ということを人々に喚起させるだけでなく、ベトナムの人々一人ひとりがより誇りに感じ、より珍重するよう、はたらきかけもする。ずっと長く存在するベトナムのテトの魂のような、皆で集まって和むテトの日の神聖な産物である。

   バインチュンを作る風俗のルーツ

 『バインチュン・バインザイ[丸い餅]』の伝説によると、バインチュンを作る習慣は、第6代雄王の時代が起源という。祖先の法事を行う際に、雄王が、子供たちを集め、「供物にふさわしい物を見つけた息子に王位を継承させる」と伝えたのだ。
 ほとんどすべての皇子達は、森へ行ったり、海へ行ったりして珍しい物を探した。郎僚(ランリエウ)皇子のみは、最も貧しく困難な状況にあったため、貴重で珍しい供物を探しに行くことができなかった。そこで、彼は、糯米、緑豆、豚肉、ナルコユリの葉といったとても身近な農産物を使って、2種類の餅を作った。父王が捧げる供物にする、天と地を象徴するバインチュンとバインザイである。
 郎僚(ランリエウ)皇子のバインチュンは、生活が満ち足りている「地」を象徴した。なぜなら、中に糯米、緑豆、豚肉というふうに、動物と植物が十分に入っていたからである。香りが良く美味しい真四角のバインチュンが、新春に雄王に捧げられることはとても意義があったため、王は満足し感動した。王は、郎僚皇子に王位を譲ると決定した。
 それからというもの、バインチュン、バインザイを作る習慣は、民間に伝わり、継承され、テトが来る度に祖先に捧げる際に欠かすことの出来ない供物となり、後の世代の、水を飲んでその源を想う心を表現するものとなった。
 
   後世代に伝えることがとても必要である

 [旧暦の]年末、故郷から遠く離れている人の誰もが、自分の仕事を早く終わらせて帰省し家族で集まることを願う。なぜなら、誰もが、家族で集まって祖先に捧げるバインチュンを作りたいと思っているからだ。
 昔は、テトの2日から3日前くらいに、大抵、どの家も、バインチュンを作るための材料を準備した。テトの前大晦日に、バインチュンを作るために、家族の皆で庭に出て、共に葉を拭き、豆を鍋で洗い、米を研ぎ、肉に下味をつけた。しかし、一番楽しいのは、バインチュンを火にかけ、火が通るのを待つ時間だ。屋外は霜で身を切られるように寒いが、赤い炎が燃える台所周辺の温かい雰囲気にはかなわない。
 多くの世代にとって、バインチュンは、離れていた人も皆で集まって和むテトの時の大きな喜びである。美しく、目がつまった、真四角のバインチュンには、祖先を崇拝する祭壇に特別な場所が用意され並べられる。バインチュンを、子供たちは新春の贈り物のように、特別に作られるものと覚えている。
 現在、バインチュンを作り、捧げることは行われているが、もはや[これまでと同じように]完璧に行われてはいないようだ。都市では、わずかな家庭のみが、バインチュンを作る習慣を維持している。その他、供物に捧げるバインチュンが欲しい大多数の家庭は、バインチュンを専門に作る人に注文するか、もしくは市場で購入する。
 バインチュンを煮るための道具も大きく変化した。これまでと異なり、圧力鍋やガスの火などを使用するようになったところもある。テトの雰囲気も、そのようなこともあって、次第に薄れてきている。
 まさにこのため、多くの場所で、人々が、この習慣を引き続き実施するよう運動・奨励し、テトの香りと味わいを再び探し出そうとしている。バインチュンを作る各コンテストを通して、家や小道のあちこちの隅にいくらかでもテトの雰囲気が戻ってきた。
 バインチュンがテトを思い起こすのか、それとも、テトがバインチュン作りを思い起こすのか?おそらく、それらが混ざり合って、ベトナム民族の文化の象徴となり、バインチュンがテトの象徴になったのだろう。
 今日の現代的なライフスタイルが、より多忙になり、より満ち足りるようになった中で、テトのバインチュンの中に深く隠れている文化・伝統を、将来[の世代]に継承していくことがとても必要である。
 テトにバインチュンを作る習慣については、伝統的な食べ物という意義とは別に、将来の各世代のために大切に維持するための文化遺産に昇格させる必要はないだろうか。

関連記事[テトの霊魂がある食べ物における五行相生の哲学的な思索]
https://www.vietnamplus.vn/triet-ly-tuong-sinh-ngu-hanh-trong-mon-an-linh-hon-cua-ngay-tet/426887.vnp

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( 翻訳者:メディア翻訳ベトナム語班 )
( 記事ID:4181 )