聖母信仰遺産の実践の管理効果を向上させる
2020年06月09日付 VietnamPlus 紙
ドンタイ[霊的職能者]のグエン・ドゥック・ヒエンがクアン・ホアン・ムオイ神の降臨を披露した。
ドンタイ[霊的職能者]のグエン・ドゥック・ヒエンがクアン・ホアン・ムオイ神の降臨を披露した。

 聖母信仰の、伝統の価値は保護される必要があり、不適当な点は阻止する必要がある。元来の素晴らしさを維持しながら現代の生活に合わせていくためである。

 タインドン [霊媒師(原語:thanh đồng清童)]とクンヴァン[楽器の演奏者。供文。原語:cung văn]が個人的な目的を実現させるために信仰を最大限活用する例が少なくない実態が、遺産の実践の参加者や国家管理機関の責任と役割の向上に関する問題を突きつけている。聖母信仰の素晴らしい価値や意義の保護を目指すためである。
 専門家によると、特にハノイをはじめとする聖母信仰の活動が行われている各地域では、如何なる時よりも今、遺産のより良い管理のための方法が必要とされている、という。
 国家管理の角度からみると、ハノイ市文化スポーツ局が各関係機関と連携して聖母信仰に関する全面的な研究を実施し、そこから効果的に管理する方向性を示すことができるという。
 更に、文化スポーツ局が、聖母信仰を実践する遺産に対する国家管理工作に関する研修・養成を、ハノイ市内の各レベルの文化関連業務に携わる幹部職員に行う、としている。
 グエン・ティ・イエン博士・准教授によると、「各社会組織や文化研究所は、聖母信仰を維持するために重要な活動の教育や教授における各関係者、国家、コミュニティの間をつなぐ役割を、引き続き促進する必要がある。また、バーンホイ [聖母信仰を行うグループ。原語:bản hội)]内のメンバー間の関係に関する規約、ハットバン[巫師が臨席して諸位の神を祭って行う歌と音曲。(原語:hát văn)]、ハウドン[憑依儀礼(原語:hầu đồng)]儀礼、儀礼用具、衣裳、儀礼における規約、各タインドン、バーンデン[訳者注:神殿での信仰をケアする人々のグループと思われる。原語は bản đền]などの間のマナー文化における規約といった、聖母信仰の実践をガイドするような各規約を構築する必要もある」という。
 それに加えて、各文化管理機関は、トゥーニャン、ドンデン[訳者注:神殿などを管理しそこでの儀式を開催する人を指すと思われる。原語はthủ nhang, đồng đền]、タインドンなどの責任、役割を高め、都市や各レベルの聖母信仰文化クラブの活動を促進する必要がある。聖母信仰活動に対するコミュニティの役割を引き上げるためである。

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 各レベルの聖母信仰文化クラブは、カリスマ性があるドンタイ[霊的職能者。原語:đồng thầy]やチューデン[神殿の管理人。原語:chủ đền]を集められる必要がある。聖母信仰の世界で各タインドンに積極的な影響を与えるためである。一方、宣伝工作を促進し、人々が聖母信仰の積極的な価値や限界を理解できるようにし、そのことにより、限界[良くない点]と戦いこれを抑えていくことを意識し、良い点などを発揮できるようにする。
 「ベトナム人の三府聖母信仰の実践」がユネスコによって人類の無形文化遺産と称えられてから4年あまり経った。この遺産は、コミュニティによる保護や価値を発揮するための努力を通して持続的な生命力と力強く広がる力が確認された。しかし、この無形文化遺産の保護、維持の実践にはまだ不備がある。
 ハノイ市スポーツ文化局によると、市内全体には、聖母信仰の遺跡や場所は2000箇所あまりにあり、このうち、4箇所がフー[府。原語:phủ]、210箇所がデン[殿。原語:đền]、892箇所がディエン[殿。原語:điện]、33箇所がミエウ[廟。原語:miếu]、その他数カ所が個人的なディエン、という建築物である。
 特筆すべき点は、特に聖母信仰がユネスコによって人類を代表する無形文化遺産に認定されてから、この数年、私的所有のものが急増していることだ。
 多くの研究者によると、ドンタイになりたい人が12年間の修養を経てようやく「デードン[霊媒が産まれる。原語:đẻ đồng]」に至る。しかし、少なからぬ人々が3年間「トゥードン[霊媒を試行する:thử đồng]」を行ったばかり、あるいはたった1年行っただけで、自ら自分自身にドンタイと封じている。
 そこからまた、多くのドンタイが聖母信仰の実践を一つの職業と考え、人々の信心を悪用し、個人的な利益を得ている。つまり、占い、託宣、脅すといった異端迷信活動を行い、コンニャン[レンドンの補佐役など。原語:con nhang]や弟子に、多くの供物を購入させ、多額のお金をばらまかせ、沢山の禄[原語:lộc]を得られるようにしている。
 昔は、各先人[霊的職能者。原語:các cụ]は、あまり託宣しなかった。国泰民安を願う優しく華美で細かい心配りがなされた内容の言葉が伝えられた。しかし、現在、一部のタインドンは、脅し、過度に世俗的な内容の託宣を出し、周りの人々の心理に影響を与えている。
 多くの専門家は、「以前、この儀礼がまだ『きれい』だった頃、ハウドン[憑依儀礼。原語:hầu đồng]の供物は、気持ち次第だったが、今は供物を購入するための費用やザードン[ある神が降臨して帰るまでを示す単位がザー。原語:giá]毎に禄として配るお金の金額がとても大きく、禄を配る場面が各ザードンの中心となってしまった。人々は、各オンドン[男性の霊媒。翁童。原語:ông đồng]、バードン[女性の霊媒。婆童。原語:bà đồng]から、禄であるお金をもらおうと殺到する」という。
 実際、現在、多くのハウドンの儀礼は、歪曲[biến tướng,(変相)]され、最初から終わりまで物質化されるまでに至っている。各タインドンの他の病は、いつも自分を基準にして照らし合わせて、自分が一番と考えており、いわゆる「自分」が大き過ぎることである。
 上記の現象のほか、一部の文化研究者は、「ベトナム人の三府聖母信仰の実践」遺産が[ユネスコに認定される]栄誉を得てからこれまでの長い間存在してきた実状を指摘した。それは、称号の乱れと称える形式の乱れの状況である。
 多くの組織が、聖母信仰に関連する専門性がなく、あるいは研究活動を行っていなかったが、栄誉を称えるプログラムや饗宴を自ら開催していた。特に社会の世論で緊急問題とされたのは、証明書の乱れと芸人の乱れの現象である。
 研究者である、ベトナム文化信仰研究保護センターのファム・トゥ副所長は、その原因の一部として、[ユネスコに]認められてから聖母崇拝活動が過度に急速に発展したため、管理工作を迅速に変化させて対応することができなかったことを挙げている。
 それに加えて、聖母信仰活動を、歪曲し、間違ったものにしてしまう[原語:sai lệch]他の理由の一部としては、まさに各タインドン、バーンデン、バーンフー[訳者注:フー(府)での信仰をケアする人々のグループと思われる。原語:bản phủ]の実践意識の中にある。そのため、聖母信仰における儀礼の実践方法の是正は、現在、遺産の実践過程における歪曲に歯止めをかけるために限りなく必要なことである。

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( 翻訳者:須藤遼 )
( 記事ID:5381 )