映画「雨の中のサイゴン」:現代の若者の煩悶
2020年11月05日付 VietnamPlus 紙
「雨の中のサイゴン」はホー・トゥー・アインとアルヴィン・ルーの息の合った俳優ペアと、若者に合った主題のおかげで冒頭の瞬間から人々を惹きつけた。(写真:映画配給会社)
「雨の中のサイゴン」はホー・トゥー・アインとアルヴィン・ルーの息の合った俳優ペアと、若者に合った主題のおかげで冒頭の瞬間から人々を惹きつけた。(写真:映画配給会社)

 この映画は、華やかな柴城[訳注:ホーチミン市の旧称の一つ]で生まれたロマンスを届ける。それは、人生の初めの衣食の問題や若者が情熱を傾けて追求するための苦しみの夢の上で生まれた。

 今週末の11月6日に三つの映画が全国各地の映画館で同時にリリース、上映され始める。その映画とは、複雑な心理的変化を表すホラー映画の「感情のない人々[Don’t Look Back]」、美しいアン・ハサウェイが美しい姿や醜い姿に「突然に」変わる悪役を演じる「魔女がいっぱい」、そしてホーチミン市で夢の風景の上で現代の若者の問題を表す「雨の中のサイゴン」である。
 この中で、「魔女がいっぱい」と「雨の中のサイゴン」は全国のいくつかの映画館では[ひと足]早い上映日程だ。

 [関連記事:「魔女」アンハサウェイは、子供たちには敢えて自分の映画を見せない]

 18歳から25歳くらいの年代の観客向けの「雨の中のサイゴン」は、レー・ミン・ホアン監督の最初の作品だ。この映画は独立系に属しており、現代の若者の素朴さや誠実さを思い起こさせるアコースティック音楽やインディペンデント・ロック(indie)を演奏する傾向の独立映画「目を閉じれば夏が見える」(2018年)、「晴れた、みな寝よう」(2019年)の流れの、夢を見る感覚を継承している。
 ストーリーは二人の若者をめぐる内容だ。アルヴィン・ルー演じる音楽家のヴーは、ハノイを離れ、未熟で純真なまま、自身の音楽バンドであるボン・ベインと共に音楽事業を発展させたいと考えてホーチミン市に来た。そこで、彼はマイに出会った。フーイエン[省]の女性で、彼女も、見本市で物売りをしたり、結婚式で雇われて踊ったりといった充分な仕事で生計を立てる場所として、この都市を選んだ。
 二人は詩的情緒溢れるカップルとなる。雑多な柴城[ホーチミン市]の生活に慣れてくると、マイは、暮らしの中でヴーを先導するようになり、ヴーも彼女の拠りどころとなった。
 サイゴンの雨季に大空から降ってくる大雨の下で、若いカップルが音楽に合わせてダンスしながら抱き合い、騒がしく忙しい大都市で小さい二つの心と心で慰め合う。ロマンチックたっぷりな始まりの後、映画は急速に衣食、米、お金[という生活必需品]の問題へと移っていく。お金を稼ぎつつも[夢への]情熱は維持しなければならない。ボン・ベイン[バンド]のメンバーは、バンドの共通の進むべき道を見つけられず分裂してしまう。一方、雑用や小さな仕事をするだけであるが、マイはファッションデザイン業界の勉強への意欲を失ってはいない。
 生活の浮き沈みはヴーの人間性を変えた。彼は、もはや最初の頃の情熱も夢中さもなくなった。自分がマイのための充分な生活のめんどうをみることができないと気がついた時、辛くなった。マイも、もはや自分の恋人が南部に来たばかりの頃のような詩情溢れるヴーではないことに気がついた。
 この映画は賑やかなまちのシーンを取り入れ、それを少しくすんだ暗い色に調整することで懐かしさを感じさせ、現代の若者がかなり好む傾向になっている。しかし映画製作者は、「成功者とは、幸せな人のことか、それとも金持ちの人のことなのか」という若者も大人も考えなければならない問題を提示している。
 音楽も全体の要素となっており、キャラクターの感情を、リズムを通して視聴者に伝えている。「渡り鳥の群れ[Flock of Migratory Birds]」という曲は、映画の主演者、助演者それぞれの人物の強い願望を表現しており、アルヴィン・ルー自身が演奏している。
 メインの俳優の2人は、ベトナム映画ではまっさらな新人俳優、ホー・トゥー・アインとアルヴィン・ルーである。しかしホー・トゥー・アインは、これまでにも多くのミュージックビデオを通じて若い視聴者に非常に馴染みのある顔で、個性的なモデルだ。そのミュージックビデオとは、[ベトナム男性歌手]ソン・トゥンMTPの「ラックチョイ[LOST]」、音楽グループのDA LABと[ベトナム女性歌手]トック・ティエンによる「私は新しい愛で涙を拭き取る」、そして[ベトナム男性歌手]エリックの「結局」である。アルヴィン・ルー(本名ルオン・アイン・ヴー)は、トック・ティエンのグループのベトナムの歌唱プログラムであるTheVoice2018で注目に値した出場者だった。
 二人は非常に情愛深く息の合った相互作用を生み出した。映画製作グループによると、俳優を募集するとき、彼らはキャラクターの明確な形を定めていなかったという。ホー・トゥー・アインとアルヴィン・ルーが最初のシーンを一緒に試しに演じた時に初めてマイとヴーが明確に出現したという。


[訳者注:原文のページではこの映画の予告編が動画で視聴できます]

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( 翻訳者:沖田英恵 )
( 記事ID:5610 )