軍隊が再びキャンパスへ 「スハルト時代」のデジャブ?
2025年04月21日付 Kompas 紙
去る4月16日、インドネシア大学のキャンパスにやってきた国軍の隊員
去る4月16日、インドネシア大学のキャンパスにやってきた国軍の隊員

ジャカルタ、kompas.com配信
インドネシア国軍(TNI)の、大学キャンパス内への関与が、再び世間の注目を集めている。
複数の評論家や学者は、この現象を民主主義の後退と見なしており、インドネシア第2代大統領スハルトの政権時代、通称「新秩序(オルバ/Orba)」を思い起こさせると述べている。
当時、軍は、教育機関を含む市民生活の中で支配的な役割を果たしていた。では、評論家の批判はいかなるもので、TNIが再びキャンパスへ侵入した事態はどのように新秩序の時代を想起させるものとなったのだろうか?また、TNIはこの現象にどう対応するだろうか?

インドネシアの人権監視団体IMPARSIALの上級研究員でセントラ・イニシアチブ会長のアル・アラフ氏は、スハルトが政権を握っていた新秩序の時代にも軍がキャンパスに侵入する現象が起きていたと述べた。
彼は、最近も繰り返されている学生イベントでの軍隊のキャンパスへの侵入現象の後に、このことを明らかにした。

「軍がキャンパスに入ってきたのは、1970年代から1980年代にかけての時代であり、ITB(バンドン工科大学)に軍が入ってきたのも70~80年代だった」と、去る4月20日にアラフ氏は電話で語った。

ところが、この出来事が再び起こった。
アラフ会長によれば、これはますます現実味を帯びる一種の民主主義の後退、特にインドネシア国内の治安管理体制の劣化を裏付けるものだという。
「しかし今や起きてしまった以上、これは悪しき先例となるだろう。また軍隊を再びキャンパスの敷地内に立ち入らせるような治安管理体制という意味では、我々の過去に逆戻りするようなものだ」と同会長は述べた。

その一方で、安全保障及び戦略研究所(ISESS)の共同創設者及び、軍事評論家のハイル・ファフミ氏は、インドネシア国軍(TNI)がキャンパスに再び入ったことは度を超え、行き過ぎたイニシアティブだと評価した。

「私はシステム的な方針というよりも、現場におけるイニシアティブが行き過ぎたものになっているとみている」と去る4月18日にハイル氏は述べた。
ファフミ氏は、この出来事は現場の隊員が自らの判断に基づき、自身の権限の限界を知らずにとったイニシアティブであると評価している。
ファフミ氏によると、インドネシア国軍(TNI)トップは、このことに対処するために説明を行い、流布している憶測や誤解を正す必要があるという。

インドネシア国軍が再度キャンパスに入った5件の事例

Kompas.comは、2025年以降3月以降に発生したインドネシア国軍(TNI)のキャンパスに進出した事例が合計5件あったと記録している。

1つ目は、去る3月24日に学生執行機構(BEM)と中部ジャワ州バニュマスの第0701陸軍管区軍との間で行われた会合であり、その背景には3月21日に行われたTNI法案への抗議行動があった。

2つ目の出来事は、去る3月25日に発生した。パプアの学生たちは、第1707陸軍管区軍(メラウケ)からメラウケ地方事務局宛に送られた、学生の個人データを要求する文書が出回ったことに対し、自分たちが脅かされていると感じたと語っている。
その文書の冒頭で、同陸軍幹部はデータ提供を求める根拠として2点を挙げている。ひとつは情報・保安分野における業務計画、もうひとつは指揮官および第1707陸軍管区軍の幕僚による判断である。

三つ目は、TNIとウダヤナ大学間の協力の発表だ。この協定は、デンパサールで3月5日に陸軍総長の名において、ウダヤナ大学のイ・ケトゥット・スダルサナ学長とウダヤナ第九軍司令官のムハンマド・ザムロニ司令官によって結ばれたが、このことは3月26日に注目を集めた。

四つ目は、去る4月14日にスマランのワリソンゴ国立イスラム大学にて、TNIのメンバーが「ファシズムがキャンパスを脅かす:学問の自由に潜む軍の影」と題する議論に参加したことである。アムスティ・インターナショナル・インドネシアの報告によると、そのTNIのメンバーは、議論の主催委員会員らに、名前から住所、学期成績に至るまで、詳細に訪ねていた。

最後に、去る4月16日にインドネシア大学のキャンパスにTNIが来訪した。
この報道はSNSで拡散され、「TNIがインドネシア大学(UI)のキャンパスに学生執行機構(BEM)の活動中に入ってきた」と話題になった。
しかし、UIの学長室は、「TNIを今回の活動のためにキャンパスに招待した事実はない」と公式に表明している。
TNIの複数の隊員がUIデポックキャンパス内の学生活動センター(Pusgiwa)に姿を見せたのは、4月16日の23時(西部インドネシア時間)頃と報告されている。
その夜、学生たちはPusgiwaにて「全国学生連帯会議(Konsolidasi Nasional Mahasiswa)」を開催し、全国の大学のBEM代表や他の学生団体のメンバーと、国家の課題について議論していた。
TNIの反応
TNI情報センター長(Kapuspen)のクリストメイ・シアントゥリ陸軍准将は、TNIがキャンパスに立ち入った際、SNS上で報じられているような大学生への威圧行為は行っていないと主張している。
同准将はTNIが大学生に威圧をしたというこの見解を、権威に対する背信の一形態であるとも評している。
「私としては、これはTNIや大学生を窮地に立たせることで政府を弱体化させようと目論む勢力がいるように感じます」とクリストメイ准将は去る4月18日、Kompas.comに対して述べた。

クリストメイ氏はソーシャルメディア上の、インドネシア大学内の学生活動センターで行われた全国学生連帯会議の際にインドネシア国軍(TNI)が来訪したことについての見解にコメントした。
クリストメイ准将はインスタグラムアカウント@pantauaparatの、キャンパスにおけるインドネシア国軍の存在は威圧的であり学問の自由への侵害であるとする投稿を見た。
そのアカウントには去る4月16日にインドネシア国軍がキャンパスに来訪した際の写真が掲載されている。
「威圧行為はどこにあるのか」とクリストメイ氏は述べている。
クリストメイ氏はすでに友達になった学生諸氏に招かれたから軍が訪れただけだと説明した。
「作られた言説はインドネシア国軍が討論を監視しているというものだ。それは訪問と関係がない」とクリストメイ氏は反論している。
さらに、彼は軍がキャンパスに入ったことは新秩序の時代における国軍の国防と政治の二重機能を取り戻す試みではないと説明した。もし誰かが二重機能の回復に関する試みと関連させるなら、それは過剰すぎる評価だとクリストメイ准将は語った。

「もしも国軍が新秩序時代において当時の国軍(ABRI)が持っていたような二重機能を取り戻すことを恐れているなら、それは過剰せはないか」と同准将は述べた。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:平山克己 )
( 記事ID:7100 )