政情不安の中の衣料品産業
2015年02月11日付 Prothom Alo紙

(1月24日付)この10ヶ月間というもの、アメリカ市場へのバングラデシュのアパレル製品輸出は全く伸びを記録しないままだ。また今会計年度の前半期ではオーブン衣料の輸出は前年度に比べて減少している。ニット製品だけは1.9%の成長を何とか保っている。こうした状況に、またもや不安定化した政治状況が打撃を与えることになった。
野党によるホルタル(ゼネスト)や道路封鎖が長引く中、国外のバイヤーはあえて危険を冒してまでバングラデシュに来ようとはしない。そのためバングラデシュのアパレル産業の経営者たちは自ら商談のために、タイやシンガポールといった国に出向いている。しかしバングラデシュ国内の不安定要素のために、国外からのオーダーは少ない。オーダーがキャンセルされることも起こっている。アパレル産業の経営者の団体、バングラデシュ縫製品製造業・輸出業協会(BGMEA)が傘下の5つの企業から受けた報告によれば、注文がキャンセルされたり、値引きに応じたり、商品輸送のための航空運賃を自己負担したりといったことに加えて、積み出しの遅れやホルタルなどに伴う妨害行動のためにこれまでに被った損害は610万ドル(約7億3200万円)に達するとされる。一方ニット産業の団体であるバングラデシュニット製品製造業・輸出業協会(BKMEA)によれば、ある企業が受けていた380万ドル(4億5600万円)近いオーダーがキャンセルされた事例があるという。

多くの経営者は業務上の機密だとして損害の金額を公表していないが、BGMEAとBKMEAの幹部たちは実際の損害額はもっと大きいと見ている。さらに大きな問題は、普段なら今がオーダーが集中する時期だということだ。しかし現在入っている注文は通常の30%から40%減となっている。現在の状況では、買い手はリスクを取ろうとはしない。BGMEAによればアパレル製品の今年度の輸出目標額は260億ドル(1兆1200億円)となっている。それをもとに考えるとゼネストや道路封鎖により、1日当たり69億5000万タカ(107億円)の輸出が妨げられていることになる。アパレル産業の1日当たりの生産高は約43億タカ(64億5千万円)に達している。バングラデシュの現在の政治情勢のために衣料品産業が危機的な状況に直面しているとして、同産業の経営者らは事態が総合的に正常化しない限り、今年度は衣料品のみならず全ての品目の輸出で目標達成が不可能になるとしている。
輸出振興局(EPB)の統計によれば、現在の2014~15会計年度の輸出総額の目標は332億ドル(約3兆9900万円)となっており、そのうち81%にあたる268億9千万ドル(約3兆2300億円)をアパレル輸出が占めることになっている。アパレル輸出は前年度を総額で4億ドル(480億円)、率にして9.79%上回るとされている。しかし今年度の前半(7月~12月)では衣料品輸出は120億2千万ドルで、伸び率はわずか0.77%にとどまっている。前年度の伸び率は13.86%に達していた。
BGMEAのアブドゥス・サマド・ムルシェディ前会長はプロトム・アロ紙の取材に対し、「今年度の前半は順調とは言い難かった。業績回復の努力はしたのだが、極めて厳しいのが現実だ」と語った。ムルシェディ前会長はさらに「現在のような状況がしばらく続くなら、多くの業者が甚大な影響を被ることになる。特に中小などでは立ちいかなくなる企業も出てくるだろう」と述べた。
BGMEAに損害報告を行なった5つの企業(マグパイ・ニットウェア、マグパイ・コンポジット、クリエーティブ・ウールウェア、ベンガル衣料、アルバ・テクスタイル)では合わせて370万4850ドル(4億4400万円)分の仕事がキャンセルになった。BGMEAでは去る1月12日、傘下の企業に対し政治不安による損害の報告を求めており、上記の5つの企業では1月14日から20日までの間でこの損害が生じたとしている。また、MBニットファッション社では、総額380万ドル(4億5600万円)にのぼるオーダー2つがキャンセルになっている。キャンセルを通告してきたのはフランスとスペインの買い手で、それぞれ240万ドルと140万ドルのオーダーを取り消してきた。このことについてMBニットファッション社の経営者でBKMEAの副会長もつとめたモハンモド・ハテム氏は水曜日プロトム・アロ紙に「買い手企業からはこの政治不安の中では納期を守ることができまい。そのために他国に注文先を変えると言われた」と語り、「明日木曜はバンコクに向かう。さらに金曜日にはイギリスとフランスで2つの企業と商談することになっている。しかし相手からはすでに、バングラデシュの政治不安のために、本来予定していたよりも30%から35%少ないオーダーを出すことになる、と通告されている」とも述べた。
BGMEAのショヒドゥッラ・アジム副会長は「この季節にオーダーが少なかったら、あるいはなければ分野によっては全く仕事にならないところも出てくる。そうなれば経営者たちは労働者の賃金を支払うことができなくなる」とコメントしている。
2013年は政情不安のために、アパレル業者は9億タカ(13億5千万円)にのぼる値引き要求に応じることを余儀なくされた。さらにそれ以上の経費で550億タカ(82億5千万円)相当の品を飛行機で輸送しなければならなかった。当時威力妨害行動が始まってしばらくしてからやっと警察と国境警備隊による警護のもと、ダカから積み出し港のチョットグラム(チッタゴン)まで輸送が可能になるまで、生産品を長期間にわたって倉庫に眠らせておくことになった。その損害額も大きかった。今回は道路封鎖が始まった日から警察と国境警備隊による警護の体制が取られており、ダカからチョットグラムへの輸送は、量的には少ないながらも継続されている。また原材料の輸入も続いている。2013年には4月24日、ダカ郊外でラナプラザビルが崩落し、入居していた縫製工場の1136人の従業員が死亡した。その年の終わりごろの政情不安と合わせ、バングラデシュのアパレル産業のイメージが低下した。そうした状況を克服し、2021年までに衣料品の年間輸出額を500億ドル(約6兆円)まで増大させるための戦略を立てる目的で、BGMEAは去年12月アパレルサミットを開催した。しかしそれから1か月後、BGMEAはそれらの希望は全て灰燼に帰したとコメントすることになった。
「現在の問題を早急に解決し、外国のバイヤーに、我々はビジネスの場に戻ってきたとのメッセージを伝えなければならない。ゼネストや道路封鎖を行なう民主的権利はあるにせよ、暴力や威力妨害行為をする権利は誰にもないはずだ」。BGMEAのアティクル・イスラム会長は記者の取材に対しそう語った。

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(翻訳者:小林加奈)
(記事ID:382)