イードの経済拡大、上がる購買力
2015年07月17日付 Prothom Alo紙


大きな変化が起きている。バングラデシュは低所得国から最近、中所得国へと格上げされた。人々の収入も以前と比べて上がっている。それに伴って購買力も増している。そしてこの購買力を資本として、イード祭がらみの経済活動も盛んになってきている。イードの経済そのものも拡大しているのだ。断食明けのイード「イードゥル・フィトゥル」を核として繰り広げられる経済活動に関わっている業者たちによれば、イード関連の経済規模は1,500億から2,000億タカ(2,340~3,185億円)に及ぶという。イード関連の経済は今や、サリーから始まって自動車にまで及んでいる。

イードの経済について、シンクタンク「政策対話センター」(CPD)のコンドカル・ゴラム・モアッゼム研究次長はプロトム・アロ紙に対し「人々の給料の上昇とともに、消費財の需要も多様になってきている。イード関連の経済活動といえば、従来は服や靴の購入に限られていたが、今では人々は電子機器を買ったり、贈ったりするようになっている。一方でオンラインショッピングも増えてきており、また国内外の旅行に出かけたりもしている」と述べた。
モアッゼム次長はさらに「イード関連の経済規模がどうであれ、それが国内にどれほどの益をもたらしているかが重要だ。なぜならばこの時期、外国から輸入される品が商品の多くを占めるからだ。ただ、イードを取り巻く経済活動の拡大により、都市部、農村に限らず、多くの雇用機会が創出されていることは確かだ」と語った。

イード関連の売り上げの多くを占めるのは服飾品だ。バングラデシュ国内では、イードやポエラ・ボイシャク(ベンガル暦正月)の時期に狙いを定めた、かなりの規模のファッション産業が成立している。高級ファッションブランドの数は4,500ほどにのぼり、その大半がダカとチョットグラムに集中している。こうしたブランドの集まり「バングラデシュファッション企業家連合(FEABまたはファッション・ウッドグ)によれば、高級ファッションメーカーの売り上げは国内で年額600億タカ(955億円)に達するとされるが、断食月とその終了後のイード祭の時期がその半分を占める。
FEABの会計担当理事で、ファッションブランド「ロング」の重役、ショウミク・ダスさんはプロトム・アロに「服飾ブランドの売り上げは毎年増えている。今回もよく売れている。ただ期待していたほどではない」と述べた。
このような望ましい状況にも関わらず、なぜ売り上げが思ったほど伸びないのか、という質問に対してダス理事は「ファッションブランドは基本的にダッカやチョットグラムに集中しているが、イードの服飾品の大きな市場はそれ以外にもある。そうした市場はインドやパキスタン製の製品で占められてしまっている」と答えた。その市場規模は、少なく見積もっても国内メーカーによる売り上げの3倍に達するという。

国内産服飾品の主要卸売市場関係者たちは、全て合わせてこの服飾品の市場規模は150億タカ(240億円)ほどになると考えている。サロワール・カミーズ、シャツやパンツ、サリーやルンギといった服飾から様々な布製品が集まるイスラムプルは、今国内で衣料品の市場となっている。イスラムプルの衣料品業者協会には大小合わせて約4,000の店舗が登録されている。この他にもさらに2,000の中小の店がある。業者たちによれば、イスラムプルでは毎日平均5~6億タカ(8~9.5億円)の売り上げがある。イードの前となると10億タカ(16億円)に達するときもある。イスラムプルの業者たちは、この市場で売買される衣服は年に1,800~2,000億タカ(2,865~3,185億円)におよぶと見ている。そのうち30~40%が断食月に売りあげられるという。イスラムプル衣料品業者協会のアブドゥス・サッタル・ダリ会長はプロトム・アロに「ここでは、イスラム教の宗教行事ショベ・ボラトからラマダン月(断食が行われる、イスラム暦9番目の月)の15日まで、多くの客で賑わう。ただ今年の売り上げはそれほどでもない。なぜなら、多くの商売人が今ではノロシングディのバブルハトやルポゴンジョのブルタ・ガウチヤから商品を仕入れているからだ」と語った。
国内における衣料品のもうひとつの主要な卸売市場、ノルシンディのバブルハトでは、サリー、ルンギ、女性用のスリーピース(サロワール、カミ-ズ、オルナ)、シャツ、パンツ、フルサイズの布地、パンジャビ用布地、ガムチャ(薄手のタオル)、ベッドのシーツなどあらゆる種類の布製品が手に入る。普段市がたつのは金、土、日曜日のみだが、イー土の前には毎日市場が開かれ、多くの人で混み合う。バブルハト商工会のG・Mタレブ・ホセン会長は「ここ3年のイードの時は、国の政治的状況が不安定だったため売買は多くはなかった。しかし今回は売り上げが好調だ。それぞれの市で70~80億タカ(110~127億円)の衣料品が売れている」と述べた。

イードにおける履物業界:服飾に次いでイードの時に需要の多いのが履物だ。好みのサンダルや靴を履いていなければイードとは言えないということか。このことを考慮して、今回のイードゥル・フィトゥルを前に、履物製造会社が全国で少なくとも20のショールームをオープンした。国内では1年に2億足の履物が売れているといわれる。金額にすると400億タカ(637億円)規模に達するとのことだ。うち30%がイードゥル・フィトゥルの時期の売り上げとなっている。その計算でいくと、およそ120億タカ(190億円)もの履物がイードの時期に売れていることになる。これらの数値は、靴メーカー「ベイ・エンポリアム」のアブドゥル・カデルCEOによるものだ。カデルCEO は以前、(靴メーカーとして世界的に有名な)他国籍企業・バタの販売部長だったころ、バングラデシュ国内で履物市場の規模に関する業務を行っていた。
シェマイの市場10億タカ規模に:イードのもてなしに欠かせないもののひとつが、(小麦粉を原料にした細麺状で、ミルクや砂糖などで煮込んで作るスイート)シェマイだ。ラッチャ・シェマイ、バングラ・シェマイなど様々な種類のシェマイがイードの時にふるまわれる。大手シェマイメーカーなどによると、イードゥル・フィトゥルの時期には、全国で約7,000トンのシェマイの需要がある。市場でのシェマイの価格は、200グラム一袋で30~35タカ(47~55円)となっている。最安値で見積もったとしても、イードの時期、シェマイの売り上げはおよそ10.5億タカ(17億円)に達する。オールドダカのシェマイ業者は、「ダカ市内には100以上の工場でシェマイが作られている。いくつかの工場は閉鎖されたが、一方で大手業者がシェマイ生産に乗り出してきている」と語る。
宝石類も購買の対象に:イードの直後は結婚式が盛んにおこなわれる時期となる。そのため多くの人が、イードの前に宝石や装飾品を購入する傾向がある。イードに宝飾品をプレゼントすることもあるのは言うまでもない。バングラデシュ宝石商協会によると、国全体で約1万の宝石ショップがある。ラマダン月に各店で2ボリ(約23グラム)の金が売れたとして、全体では200~250キロの金の装飾品が買い上げられることになる。金額では9~10億タカ(14~16億)にものぼる。「断食後のイード(イードゥル・フィトゥル)の後、犠牲のイード(イードゥル・アズハー)までの約2か月の間は結婚式が多い。断食月に宝石商への注文が集中する。そのためラマダン月には少なく見積もっても200~250キロの金を使った装飾品が売れる」と宝石商協会デワン・アミヌル・イスラム・シャヒン元事務局長はプロトム・アロに語った。

イードには今や新たに車も:イードを目前にして、自動車を買う人も出てきている。しかも決して少なくない数の人が、だ。中古車輸入・販売業者協会(Barvida: Bangladesh Reconditioned Vehicles Importers and Dealers Association)から得られた情報がそれを証明している。同協会によると、今回のラマダン月ではこれまでに全国で350台の中古車の販売または受注があった。イードまでに400台に達するだろう。同協会のマホブブル・ホク・チョウドゥリはプロトム・アロの取材に対し「車の値段はまちまちだが、平均して200万タカ(320万円)として、このイードではおよそ8億タカ(13億円)の車が売れたことになるだろう」と述べた。しかし同氏は、昨年のイードでは車の販売はより多かったという。協会の統計によれば去年のラマダン月には500~550台の自動車の売り上げがあり、1台当たり平均で180万タカとして昨年は少なくとも9億タカ(14億円)の車が販売された。

イードの特設市でも購買上昇:かつては何かの行事にちなんで季節の特設市が開催されるのは、ベンガル暦新年の機会だけだったが、今ではイードゥル・フィトゥルの前にもこうした催しが行われるようになってきている。首都ダカをはじめ国内各地でイードの時期の1~2週間、特設市が開かれるのは珍しいことではなくなった。ラマダン月を通じてこのような催しが行われるところも多い。これらの特設市ではサリーやパンジャビ、サロワール・カミージュの他、履物やバッグ、宝石なども売られる。しかし販売量などに関する統計はない。様々な商品の製造業者たちは、普通1週間におよぶこうした市での売り上げは、決して少なくないと見ている。

Tweet
シェア


原文をPDFファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


(翻訳者:伊藤巧作)
(記事ID:439)