世界の工場になる南アジア
2016年12月14日付 Prothom Alo紙


(11月14日付)中国では生産コストが上がっている。また、日本や韓国のような東アジアの国々では高齢者人口が増えている。こうなると、将来どの地域が世界の工場や産業の拠点となり、どの地域で労働集約型産業が発達するのだろうか?
世界銀行の新しい報告書によると、この分野で南アジアの可能性は言うまでもないという。2030年には世界の就労可能人口の4分の1は南アジアに暮らしているだろう。この地域で人々の就学の割合は増えており、また毎月100万人が新たに労働市場に加わっている。都市化も急速に進んでいる。
こうした有利な材料がそろっていれば、南アジアを妨げる何かがあるのだろうか?報告書によると、この地域の可能性の道を邪魔するのは南アジア諸国そのものであるという。投資を誘致する能力で、南アジアの競争力は他の地域より低い。世界的な様々な指標を見ると、この地域の国々は最下層にある。ここで作られる製品の品質もそれほどよくない。生産数や市場も少ない。地域内での貿易の絆も限られている。
世銀の報告書では、可能性を生かすために、この地域の国々に対し生産性の向上に力を注ぐよう求めている。そのためにビジネス環境の改善、世界的供給連鎖の一環となること、管理と労働者の質の向上、そして、集約的立地のメリットを活かすことを呼びかけている。
新たに発表されたこの報告書のタイトルは「South Asia’s Turn: Policies to Boost Competitiveness and Create the Next Export Powerhouse」(南アジアの出番:競争力を高め、次世代の輸出強国をつくりだすための政策)となっている。およそ200ページにわたるこの報告書では、様々な調査研究、世界的な指標さらには独自の分析に基づき、南アジアの競争力の現状、生産性の状況や今後なすべきことが挙げられている。
世銀のウェブサイトに掲載されたこの報告書について、同銀行のアネット・ディクソン南アジア担当副総裁は「所得増加と世界市場への参入の程度を上げるという点では、南アジアの持つ可能性はとても大きい。しかしそれを生かすためには、生産性や投資を増やすような政策を採用する必要がある」と述べている。

中国の生産コスト上昇で増加するバングラデシュの輸出

中国で生産コストが上がるとどの様な影響がでるのか、それについて報告書では以下のように述べられている;中国で製品の生産コストが10%上がればアメリカの中国からの製品輸入は約8%減るだろう。一方バングラデシュからアメリカへの輸出は13.6%、金額ベースで言うとおよそ5億2千万ドル増える。一方アメリカへのインドの輸出は14.6%(およそ4億2千万ドル)パキスタンの輸出は25%(およそ3億4千万ドル)増加すると見られる。しかしベトナムやカンボジアのの伸びはそれを上回ると見られる。ヨーロッパでの生産コストが上昇した場合は、バングラデシュとパキスタンには特に何の恩恵もないが、インドやスリランカにとっては有利な材料となるだろうと報告書は述べている。

世界市場でバングラデシュは南アジア2位

過去数年間、南アジアの製品輸出による収益はかなりの高率で上昇してはいるものの、その世界市場に占める割合はわずか1.8%に過ぎない。その内訳をみるとインドのシェアが大きく、1.46%となっている。一方バングラデシュは0.16%で、パキスタンを追い越して2位に地位を上げた。パキスタン、スリランカ、ネパール、モルディヴのシェアはさらに減っている。アフガニスタンの数値はわずかながらも上がっている。
この輸出収益にはまた、限定的な製品と市場から得られているという特徴がある。バングラデシュ、ネパール、アフガニスタン、パキスタン、スリランカの輸出製品のうち高い割合を占めているのは縫製品だ。これ以外では、ブータンは鉱物資源、アフガニスタンやモルディヴは農業製品に多く依存している。報告書によると、2001年から2013年までの期間で、この地域の輸出額拡大分の80%は同じ製品を同じ市場に出すことで実現されており、残り20%は特定の商品を新しい市場で売ることによって得られている。

バングラデシュでは大規模・中規模の企業の割合が高い

世銀の報告書は、企業が大きいほどその生産性の伸びると述べている。この地域の国々では、中小企業の数が多いのだが、そうした中でバングラデシュは例外となっている。バングラデシュの企業のおよそ27%は大企業である。一方インドではおよそ13%、パキスタンでは16%、フィリピンでは13%、インドネシアでは2%、中国では13%、ベトナムでは18%、スリランカでは6%にとどまる。大企業においては資金調達、良質な労働者の確保やリスクを負うことを含めた様々な分野で能力が高いと報告書では述べられている。

研究開発でバングラデシュの企業はリード

研究開発に従事している企業の比率はインドやバングラデシュで多い。その割合は東ヨーロッパや中央アジアの国々をも上回る。しかしパキスタンやネパールではその割合がかなり低い。バングラデシュでは大小保で輸出指向が強く、外国資本で伝統のある企業ほど研究開発の傾向が強い。報告書のデータによると、インドの56%、バングラデシュの19%、パキスタンの6%、ネパールの4%の企業が研究開発の努力を続けている。
ここで研究開発というのは、基本的に新しい商品を市場に出すこと、質の向上、生産における新しい技術や機械使用などを指している。バングラデシュやインドの場合、この開発の大部分は模倣によるものである。この2国の企業は様々な商品やその生産過程を見て、自分たちで生産したり使用したりしている。

縫製品でバングラデシュが頼れるのは低い生産コストのみ

バングラデシュは縫製品輸出で世界で2位となってはいるものの、生産コスト以外では競争力に欠ける。製品の質、リードタイム(受注してから納品までの時間)、社会的法令順守と持続可能性などの面で中国、ベトナム、インドネシアやカンボジアはバングラデシュを上回っている。しかしインドはバングラデシュよりさらに遅れている。報告書では、製品の質、リードタイムと法令順守の面でバングラデシュとインドには赤い色のマークがつけられている。つまり、これらが2国で大きい障害となっているのである。

限られたIT使用

企業でのIT使用の面でバングラデシュはインドやパキスタンより遅れている。報告書によると、バングラデシュとネパールの半分の企業がコンピューターを使用しているが、それはアフリカの平均的な割合よりも低い。インドの企業ではITの使用はほぼ100%である。そしてパキスタンの71%の企業では少なくとも1人はコンピューターを使用しているという。ただし、IT使用に関するこの統計は2013年と2014年の情報に基づいている。

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(翻訳者:小田里沙子)
(記事ID:604)