グルシャンの凶事~私たちは深く哀しんでいる~

2016年07月03日付 Prothom Alo 紙
ついにバングラデシュも、過激派武装勢力によるおぞましい襲撃に直面することになってしまった。金曜日夜8時45分から土曜日の午前まで、首都ダカの中でも高級で比較的安全な地域として知られ、多くの大使館などが集まるグルシャン地区にあるレストランを舞台に繰り広げられた襲撃事件は、残虐で鬼畜に等しい思想の忌まわしい発露である。何の罪もない人々を殺害した者たちは人間の敵であり、どんな言葉をもってしても非難しきれるものではない。
この事件では国内外の20名の方々およびふたりの警察幹部が犠牲となった。残されたご家族の皆様には心からのお悔やみを申し上げたい。また負傷した20名の警察官たちの一日も早い快復を祈る。
軍の主導で警察など治安維持部隊が一体となって行われた突入作戦により、人質となっていた13人が極めて短時間のうちに救出され、また武装グループのうち6人を殺害、ひとりを拘束して事件は終結した。だがこの悲劇的でおぞましい事件の影響と結末は今後もずっと尾を引くことだろう。
今回の出来事は、バングラデシュですでに起こっていた武装勢力による活動の度合いがさらに一歩進み、これまでのひとりかふたりに狙いを定めた犯行から無差別の殺戮を行なう段階に移行したことを示唆するものだ。そのことはさらなる恐怖と懸念を生み、イラク、シリア、パキスタン、アフガニスタンなどの無差別テロを想起させる。私たちはこれまで、バングラデシュはそうした国で起きた残虐極まる事件とは無縁だと安心していた。しかし今回グルシャンで事件が起こったことで、私たちはもう安閑としていられなくなった。
今回の襲撃が周到に用意され、組織的に実行されたことは間違いない。襲撃者たちは治安部隊と戦闘の用意を整えてレストランに押し入り、警察による掃討作戦に対抗して警察幹部ふたりを死に追いやり、警官20人にけがを負わせた。そしてレストランに食事に来ていた罪もない人々を、鋭い武器を使って殺害した。こうした残虐極まりないやり口は、イラクやシリアで活動を続けているイスラミック・ステート(IS)の戦闘員たちに見られるものだ。その目的は明らかに、健全でごく普通の人間社会に極端な心理的打撃を与え、恐怖心を広めることだ。
さらにもう一点注目すべきは、外国人が常に訪れ、各国の大使館が立ち並ぶ地区にあるレストランを、犯人たちが標的として選んだことだ。すなわち、犯人たちの狙いはこの襲撃で国際社会の注目を集めることだった。人質を取った後も、犯人たちはバングラデシュ政府に対して何のメッセージも発しなかったし、何らの要求も行わなかった。襲撃者たちの目的は自らの極まりない残虐性を示すことにより、人々を恐怖に陥れ、国際社会の視線を引き寄せることだった。
この事件でISはその関与を認める声明を出した。その真偽については十分な検証が必要であろう。ただひとり生存したまま拘束された戦闘員の口から、その点について多くの重要な情報が得られることだろう。
近年バングラデシュで過激派による犯行が増加していることについて、国の内外から懸念の声があがっている。そしてその懸念は徐々に増大している。今回の事件について世界のマスコミが早急に取り上げたことは、バングラデシュでこうした大規模なテロ事件があるかも知れないという危惧を外国のアナリストたちが抱いていた事実を裏打ちするものだろう。
こうした襲撃は予測可能だったとも言われる。
にもかかわらず政府はこれまで、バングラデシュでは過激派の問題は深刻ではなく、情勢は政府の統制下にあるとしてきた。しかし今回の事件は情勢が政府の統制を逃れた、もしくは逃れようとしていることを示している。武装過激派の動きに関する治安部隊の認識は十分でなく、武装勢力を抑え込み無力化するために必要な準備、能力、責任意識がどれほどあるかについて疑問が生じている。
多くの国がテロの問題で頭を悩ませており、対策に努めている。我が国もそうすべきだ。そのためには政府による政治の面での真摯な取り組みの姿勢と積極的な対策が必要となる。過激派による武力攻撃が、国の重大な課題として我々の目の前に出現しており、国全体が過激派からの攻撃の脅威にさらされていることを私たち国民すべてが自覚する必要がある。それゆえ、こうした脅威を抑止するためには、政府による断固とした方策とならんで、政治的な心情を超えて国民みなが団結し進んでいくことが必要なのである。


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翻訳者:渡辺一弘
記事ID:561