Murat Yetkin コラム: EU加盟交渉開始に際しての政治的礼儀(Radikal紙)
2005年10月07日付 Radikal 紙

EU拡大担当委員オッリ・レーン氏が昨日アンカラで行った発表は、加盟交渉が本格的に始まればより一層大変なものになるということを早くも示した。おそらく政府は2004年の12月17日の交渉の後もそうだったように、数ヶ月の間は一息つこうと考えていたはずだ。しかし欧州委員会は交渉の日にちが決まったと同時に交渉は始まっているということを今すぐアンカラに気づかせる必要があると考えているようだ。

レーン氏が人権や社会的平等を強調したことは、トルコの実行してきた国内改革を疑いの目で見ている人々の不満を増大させかねない。勝負に負け、味方が少なくなっていることへの怒りからこれまで以上に声高に叫びだすかもしれない。トルコが政治的・経済的観点からより自由になることで何の利益も得られない人々は置いておいて、トルコの変化から利益を期待できる大多数は生活水準の向上のために必要なプロセスを静かに支持している。さらに言えばこの静かな支持は大多数からのみではない。

10月4日にアンカラのスペイン大使館で行われたレセプションでかつてのDSP-MHP-ANAP政権時代に大臣を務めた3人と会ったが、3人ともEUとの交渉はこの条件であっても始めるべきだと言っていたのだ。しかしながら3人とも名前が出されるのは拒否した。所属している政党から非難されることを恐れてのことだ。

同時に皆がよく知るところの野党が初日に見せた強い反発は、昨日にはより冷静な陣営に席を譲り始めたようだ。CHP(共和主義者人民党)党首デニズ・バイカルはNTVでのインタビューで、CHPはトルコのEU加盟にはもちろん賛成だが政府の受け入れた交渉の条件はトルコの完全加盟にはつながらないため反対すると述べた。MHP(民族主義者行動党)党首デヴレト・バフチェリは政府が交渉を始めないよう求める気はないと述べ、その理由を、今はどうであれ2006年にはキプロス、アルメニアといった問題がトルコの前に現れ、交渉を続けるだけの条件がそろわなくなるからだとした。

2006年はトルコにとって多くの面から重要な年になると思われる。例えば次第に深刻化しているイラク情勢は、2006年の前半には起こるであろう政権危機によって手の付けられない事態になりかねない。イラクが分裂し北部にクルド国家が成立するということが現実になるかもしれないのだ。同時にEUとの交渉も、キプロスやアルメニア問題といったことが原因になるばかりでなく、交渉の完結のために必要となる政府間の会議ででも大きな困難にぶつかる可能性がある。

この悪いシナリオは内外で、2006年に早期選挙が行われるという憶測を呼んでいる。この憶測をエルドアン首相やビュレント・アルンチ国会議長は強く否定しているが、この種の分析や予測は後を絶たない。なぜなら、様々な理由により政治が次第に不安定になっているからだ。

また政治が不安定になっているというのに最近政治的な心遣いが見過ごされているようにも見える。
例えばギュル外相はおとといの国会で野党CHP党首バイカルに「我々にEUとの交渉の書類を渡さなかった」と言われると、椅子から降りてバイカルに近づき「これが書類だ」と言った。バイカルが「こんなやりかたがあるか」と返すと、振り返り怒りもあらわに書類を取り返した。このようなやり取りは必要だったのだろうか?ギュル外相がこれまでに見せてきた礼儀正しい姿勢にも合わない。

エルドアン首相も10月3日には野党の党首たちに会ってもよかったのではないか?エルドアン首相も、以前国会でギュル外相が口にした「連立ではないのだから」という発想で動いたのだろうか?もしや10月1日に将軍ヒルミー・オズキョクが「決断を下した者はその代償を払う」という言葉を使って警告したことを受けて「どうであれ代償はこっちが払うのだから、誰かと一緒に決断しなければならないわけじゃない」と考えてのことだったのか?おそらくはそうなのであろう。しかし難しい時期には政治的礼儀をもう少し大事にしてもいいのではないだろうか。


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( 翻訳者:加賀谷 ゆみ )
( 記事ID:1030 )