İsmet Berkan コラム:スカーフ問題に大統領の持つ影響力(Radikal紙)
2005年11月18日付 Radikal 紙

(訳者註:長年トルコで議論を呼んでいるスカーフ問題についてのコラム。詳細は13日「大学構内でのスカーフ着用は自由になるか?」17日「スカーフ問題を解決するか黙るか」各コラムを参照。)トルコの右派保守政治家とスカーフ問題の関係は米国の右派保守政治家と妊娠中絶問題の関係に酷似している。

トルコではスカーフ問題の根底には憲法裁判所が1989年に出した判決がある。米国では妊娠中絶問題の根底に米国高等裁判所が70年代に出した判決がある。我らが憲法裁判所はスカーフ着用を国家の基本原則である政教分離に反するとして禁止している。米国高等裁判所は中絶を同様に政教分離の理由によって条件付で認めている。トルコで宗教勢力がスカーフ着用を自由にするよう右派保守政党に強い政治的圧力をかけているように、米国でも信仰の厚い人々が共和党の国務大臣たちに圧力をかけている。

レーガンも父ブッシュも、今のブッシュジュニアも中絶を再び禁止するために尽力すると言って当選した。父ブッシュは当時「中絶を禁止するためには高等裁判所のメンバーを変える必要がある」と打ち明けた。今ブッシュジュニアが高等裁判所のメンバーを任命するにあたって1番議論になっているのはこの中絶問題だ。米国では高等裁判所のポストはメンバーが死去した場合か辞任した場合のみ空く。空いたポストには大統領が新たに任命をするが上院の可決を得なければならない。上院では投票の前に厳しい審議が行われる。何日もかかるこの審議では任命される者のあらゆる見解や生活が事細かに調べられる。完璧なシステムだと私は思う。

トルコでもスカーフ問題の解決のためには憲法裁判所の判決を変化させることが最も確実な道である。では憲法裁判所の判決、より正確にはその見解をどうやって変えるのか?米国との基本的な違いは憲法裁判所のメンバーがより頻繁に変わることである。そして現行の法律によれば憲法裁判所のメンバーを任命できる唯一の人物は大統領である。その任命も一方的なものである。拒否することはできない。大統領に一任されているのだ。

今のトルコ大統領は5年半の任期である。大統領は憲法裁判所に対して行った人事でメンバーの半分以上を変えた。新たに任命されたメンバーを我々はよく知らない。彼らの考え方については何も知らないが、タカ派世俗主義者であり、スカーフをはじめとする問題では妥協のない態度に出ると予想して間違いはないだろう。ここで問題となるのは、大統領は自分の限られた任期のうちにですら、憲法裁判所の見解を変化させることができるほど多くの人事をすることができるということ、それほど大きな影響力を持つということである。

ならば、次の大統領が公正発展党によって選ばれるとすると、今日から9年のうちに憲法裁判所の構成と見解を完全に変えることができるということを我々は直視しなければならない。もちろんこのコラムは憲法裁判所のメンバーの年齢を知らずに書いている。セゼル大統領が比較的若い者を任命し後の大統領に多くの仕事を残さないようにしたということも考えられる。(わが国では憲法裁判所のメンバーは65歳で定年となる)

ここで我々は、大統領府がいかに大きな戦略的重要性を持っているかという点に至る。しっかり聞いて欲しい、2007年の4月に新しい大統領を我々は選出する。今のところ大統領は現行の議会が選ぶことになる見込みだ。だからこそエルドアン首相が大統領になるという噂がよく聞かれるのだ。昨日も書いたことだが、大統領は憲法裁判所だけでなく、大学の学長の任命や高等教育協議会の議長と一部のメンバーの任命においても大きな力を持つ。そして学長と高等教育協議会で改正が行われれば、合法的ではなくても実質的にスカーフ着用を自由にすることができるのだ。このことを忘れないで欲しい。だから大統領府の問題は重要で今から議論すべきことなのだ。明日に続く…


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( 翻訳者:加賀谷 ゆみ )
( 記事ID:1345 )