Milliyet紙 Semih Idizコラム「目を閉じて、デミレル元大統領の話を聞く」
2005年06月06日付 Milliyet 紙

スレイマン・デミレル第9代大統領の話を、昨日CNNトルコの番組「アンカラの舞台裏」で聞いた。あらゆる面で“リベラルな民主主義者”という姿が描かれていた。内向きの国家主義者の集まりやベールに包まれた反EU主義者たちを全く評価しなかった。最近の論争にも言及したデミレルは、任命されたり選ばれたりした人に対する干渉を批判し、常に国会を通じて解決を図るべきだと主張した。

スカーフの話になると国民の大多数は反対しないだろうと語るデミレルは、まず政治的な議論がなければならないと言う。ここでも議会と「話し合いによる民主主義的な解決の手立て」を指し示している。一方で「少数派や多数派の圧力には反対だ」と言う。つまり社会での強固な立場を利用しようとする人にも、「議会で多数を占めるのだから好きなようにやろう」という人にも反対の立場をとる。

デミレルはこの話に関連して「自身がスカーフをかぶったり、スカーフをかぶった妻のいる人が大統領に選ばれるとしても、これを妨げる理由は何もない」という趣旨の発言をしている。「それが気に入らないのなら、大統領のドレスコードにかんする法案を出すべきだ」と言い、話題を再び国会に戻した。現行法が上記のような大統領に反対するものであるとすれば「法解釈に従う」、すなわち「従わせなければならない」と述べた。

EUについて、デミレルは「20世紀最大のプロジェクトだ。終戦を知らない人がEUの価値を理解することはできない」と言う。EUが政治かつ平和構築のプロジェクトであることを挙げ、チャーチルの言葉を引き合いに出しながら「EUは賛意を示す有能な人のプロジェクトだ」と述べた。

フランスとオランダの国民投票の結果について論評する際にも、デミレルはまずヨーロッパ人が根本に抱いている恐怖を列挙する。例えば「フランス人労働者は韓国人労働者よりも労働時間は少ないが稼ぎは多い。この優勢な立場を失いたがらない」と言う。しかし「ヨーロッパはもはや社会福祉国家の荷を降ろすことのできる状態ではない」と付け加える。グローバル化がヨーロッパの平安を壊したとし、ヨーロッパはアメリカの資本や中国、インドの安い労働力に対抗できないと指摘。「アダム・スミスの理論は元に戻った」と述べた。この現実を、また国民投票の結果を正しく受け止めることができなければ、ヨーロッパにおけるトルコの立場を難しいものにすると語るデミレルは、次のような興味深い見方を示した。

「EUの意味がなくなれば、トルコにとっての(EUの)意味もない。ヨーロッパが国民投票後まとまることができるならば、EUは意味を持ち続け、トルコにとっての意味も継続する」。正しく理解するには少々説明が必要なこうした言葉の後でデミレルは、「国民投票はEUを分裂させない。ヨーロッパには賢い人がたくさんいる。ヨーロッパは知恵の産物だから」という表現でそれでも希望を持っていることを示した。「EUが存続するなら、トルコをあきらめない」、ただしトルコには目下いくつもの懸案が残っていることを認め、トルコ-EU関係には今後とも紆余曲折があるとも述べた。しかしすぐにこう付け加える。「ヨーロッパが将来バルカン諸国やトルコ、ウクライナに門を閉ざすなら、大きな問題と直面する。新しいベルリンの壁を築くことになってしまい、誰の利益にもならない」と。
こうした言葉は人に「非の打ちどころのないリベラルな民主主義者万歳」と言わせんばかりだ。それから目を開けて思い返してみる。「40年間政治の舞台の中心にいて最も活発に活動した人の一人であるデミレルが過去に同じ方針で活動していれば、今日のトルコの状況は違ったものになっていただろうに」とぼやくことだろう。

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( 翻訳者:穐山昌弘 )
( 記事ID:155 )