解説コラムSemih İdiz「アゼルバイジャンのキプロス支援は重要だが遅すぎたし不十分」(Milliyet紙)
2005年07月01日付 Milliyet 紙

セミフ・イディズ

エルドアン首相のアゼルバイジャン訪問によってバクー政府が表明したキプロス支援は極めて意義深い。が、遅きに失し、満足のいくものではない。ラウフ・デンクタシュ前大統領もきっとそう考えているはずだ。会談が済んでみて、ここでアゼルバイジャンという時、どこか任意の一国家について論じるわけではない。血を分けた兄弟国家について論じるのだ。そのうえ、トルコがカラバフ問題について徹頭徹尾支持を表明しているかの国について論じるのだ。

■支持の限界
エルドアンが、イルハム・アアリエフ大統領とのバクーでの昨日の共同記者会見の席で、ヨーロッパ評議会によってアルメニアがカラバフ地方の「占領者」であるとの声明が出された折に、トルコがいかに決定的な役割を果たしたのかについて言及したのは、こうして眺めてみれば、注目すべきことだった。つまり、アゼルバイジャンから経済面での支援がもたらされることは、キプロスに住むトルコ人の兄弟たちの間でずっと以前から望まれていたものだった。今や、このような支援が政治面にまで拡大されることを彼らが望んでいるのは疑いようがない。まさに、経済面のみならず政治面でも孤立させられていると彼らは痛感しているのだ。例えば、アゼルバイジャンがレフコーシャに、また北キプロスがバクーに、一人づつ双方の大使を置かないのはなぜだろうか?しかし、この問題は現段階では不可能だと考えられている。ここでの特別な議論に関する限り、その原因はカラバフ問題に関係がある。北キプロスに対する政治的立場は、バクー政府にとっては、カラバフ問題との「共通性」から生じるトルコと共通の政治的基盤を失うのではないかという懸念に直結する。

■カラバフという障害
こうした中で、北キプロス旅券問題に関して昨今いくつかのトラブルが指摘されている。トルコ、アゼルバイジャン、北キプロス各国間のこれまでの暗黙の了解によって、北キプロス旅券はアゼルバイジャン入国の際に有効であった。しかし、このところ、何人かの北キプロス国民がアゼルバイジャンの国境責任者によって送還される事態が目に付くようになってきていた。こうしてアンカラ政府は動いたのである。両国間の公式会談の席で、この事態がアゼルバイジャンの官僚風土に起因するものであると確認された。北キプロス旅券承認はアゼルバイジャンの官僚にとって見れば、カラバフを占領するアルメニアに対しても「同様のケース」が生じるのではないか、との恐怖感となっていたのだ。しかし、この問題はエルドアン首相の訪問前に解決されていた。但し、旅券問題はバクー政府のもつ懸念を如実に反映した一例である。

■戦略的パートナーシップ
要するに、北キプロス問題が議論の俎上に載せられる際にアゼリー人が常に念頭においているのはカラバフのことだ。これこそが、北キプロスの国家承認を阻む主要因である。しかし、アアリエフ大統領が「夢物語の実現」と評したバクー―トビリシ―ジェイハン・パイプラインの開通によって、両国間関係はもはや必然的な「戦略的」重要性を帯びることとなった。「戦略的パートナーシップ」というのは、双方が、それぞれを通常以上に支援することが必要とされるのだ。
例えば、今回の訪問でのエルドアン首相に対する要求の第一は、アルメニアがカラバフ占領を継続する間は、たとえEUからの圧力があっても、トルコ―アルメニア国境を開放しないでほしい、というものであった。エルドアン首相は、アアリエフ大統領との共同記者会見で、同問題に関する質問に応じ、コペンハーゲン基準に同問題に関する規定が存在しないことを強調して、アルメニア国境閉鎖を確約したのであった。

■重要だが…
言い方を変えよう。トルコは、アゼルバイジャンにとっての政治的懸案に支持を表明している。その一方でトルコが、自身にとっての政治的懸案についてそれと同様の支持を期待するのはごく当たり前のことだ。キプロスのトルコ人の兄弟たちも同じように考えている。
長々と述べてきたが、要するに、我々はアアリエフ大統領の表明した支援を過小評価しているわけではない。これらは重要なことだ。ただし、やはり繰り返しておくほうがいいだろう。これらの支援は遅すぎたし、いささか不十分だ。なぜなら、我々は兄弟なのだから。兄弟であればこそ互いに支えあわなければならないのだ。



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( 翻訳者:長岡大輔 )
( 記事ID:488 )