西側諸国はトルコを失ってはならない(Radikal紙 7月20日付独Frankfurter Rundschau紙より引用)
2005年07月24日付 Radikal 紙

アメリカはPKK(クルド労働者党)に対する怠慢の、ヨーロッパはトルコのEU加盟に明確な道筋を提示するのをためらっていることの帰結をよく考えなければならない。

トルコ政府から見ると、トルコを取り囲む世界は今、陰謀に満ちているように見えるに違いない。東方ではNATOのパートナーであるアメリカがおよそ5000人いるPKKのテロリストと北イラクで戦うことに関心を示していない。アメリカ人はPKKによるトルコ国内でのテロ活動に対し、ほとんど何もせず傍観している。西方では、EUが40年以上に渡って留保したあとで、EU本部が巨大なイスラム教徒の国の加盟について、決して真剣とは言えないやり方でトルコ人に対する偏見通りに行動しているように見える。

もちろんこうした出来事の背景にあるのは陰謀ではなく、単に地政学的な判断がポピュリストの打算と不幸な形で結びついただけのことである。しかしEUもアメリカも今ある問題にうまく対処できる状況にはない。打つ手のないトルコは、ヨーロッパでの欧州の定義をめぐる論争がトルコにもたらしたトルコ加盟への否定的態度と、世界の覇権を握るアメリカのイラクでの苦難の間に挟まれ苦しみ続けている。

大西洋の向こう側から見れば、トルコに内在する困難な状況は、エルドアン政権のクルド問題とEU問題での失策の結果として説明されうる。トルコ政府はこれまで、貧しい東南部に経済発展の道筋をつけたり、クルド人の穏健派を支援することを怠ってきた。本質的にはPKKの弱体化と孤立化を示す今回のクシャダスとチェシュメの爆弾事件は、この意味でのみ政府にとって政治的な観点から“テロの罠”に変わる可能性がある。それと同時に“アンカラ・プロトコル”、つまりキプロスの間接的な形での承認が今日まで遅れたことは、ヨーロッパの反トルコ勢力にとっては喜ぶべき状況を生み出した。

■エルドアンは成功したが・・・
クルド、キプロス問題での意見の不一致で、(エルドアン政権は)EU加盟のための一層の努力の代わりに最小限の努力しかできない苦しみを味わっている。最小限のことでもこれまでの歩みを振り返ってみると大きな成功であるにもかかわらず、だ。しかし欧米諸国はトルコがイラク戦争に非協力的な態度を取ったことに対する失望のつけを、トルコ・イラク国境でのPKK掃討作戦を見て見ないふりをして払わせていたアメリカの戦略担当者は、そうした態度の帰結をよく考えるべきだ。ロシアやイランとのパートナー関係を模索するトルコは、アメリカを利するものではない。

■“ヨーロッパの砦”は解決策ではない
他方、ヨーロッパでポピュリズムの恩恵を受けていた人々は、トルコを拒否するEUの政策がもたらす結果をイラク、ロンドン、そしてトルコのリゾート地で起きた事件と照らし合わせてよく考えてみなければならない。急速にグローバル化していくテロから得られるべき結論は、“ヨーロッパの砦”でよいのだろうか?またそうあるべきなのだろうか?ドイツのメルケルやフランスのサルコジ、オーストリアのシュッセルの採る欧州政策とは、今後域内のPKKテロリストを厳しく追及するというものだが、それはつまりトルコを東アナトリアでのクルド問題と対峙させるということなのだろうか?

ディヤルバクルの東にある検問所や通りのバリケード、(当局との)小競り合いは、トルコ政府やヨーロッパの呼び覚ましたクルド系住民の望みを今から打ち砕かんとするばかりのものだ。定期的なEU加盟会談の生み出す圧力が、最終的にエルドアン政権に対し、PKK支部によるテロ活動に多くの軍事力を費やした民族主義者の犯した過ちを繰り返すことへの抑止力になるかどうかは全く分からない。しかし、ヨーロッパへの加盟の道筋の提示がもたらす統制力なしに、トルコ政府は“テロキャンペーン”のさなかにクルド問題で新しい、建設的なアプローチを展開することは不可能に違いない。まさにエルドアンとトルコのクルド人の双方が、政治的な対話のためヨーロッパの枠組みを必要としているにもかかわらず、EU諸国の外相たちはこっそりと加盟交渉から退出したがっているという印象がある。

ヨーロッパの政治家は、トルコとの加盟交渉が始まる10月3日まで、エーゲ海のリゾート地で起こった事件をテロの恐怖を知らしめる呼びかけに転化させるか、西側が共同歩調を採る根拠として利用するかの選択を迫られている。(ヨーロッパの政治家は)トルコの加盟がEU市民の過半数から拒否されたことでベルリンやパリで選挙に勝利したとしても、「差別的だ」という非難がトルコに関してどのような行動や戦略的な結果をもたらすかという問いには答えなければならない。

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( 翻訳者:穐山昌弘 )
( 記事ID:510 )