イスラエルは常にイランを脅威に晒し続けてきた シャルグ紙
2005年08月24日付 Sharq 紙

2005年8月24日付シャルグ紙5面(外交面)

【ジェフリー・ヤング:エルシャード・アリージャーニー訳】
〔*注:以下の文章は、Iran's Missiles Extend Their Reach(「イランのミサイル、射程距離を拡大」)というタイトルで、アメリカ政府広報用の放送局であるVoice of Americaにて放送された、ジェフリー・ヤング氏のレポートを元にしていると思われる。このレポートはhttp://www.voanews.com/english/2005-08-19-voa23.cfmで読むことができる(シャルグ紙に掲載された文章には、出典をAINAというニュース・サイトであるとしているが、ここに掲載されたヤング氏のレポートもVOAからの引用である。http://www.aina.org/news/20050819195751.htmを参照)。なお、英語の原文を読めば分かるように、原文はイランの軍拡傾向と核問題について注意を促す内容となっており、イランに対して警戒的な典型的なアメリカの議論となっているが、アリージャーニー氏が訳したとされるペルシア語の文章では、そのような論旨は完全にそぎ落とされ、原文の無断の省略、恣意的な内容の付け加え・改変、あるいは単なる初歩的な英文の読み誤りがあまりに多いため、翻訳文とはとても言えず、むしろヤング氏の議論を参照してアリージャーニー氏が作りかえたレポートという方が正確であるので、その点留意ありたい。〕

 中東は元来不安定な地域であり、イスラエルも自ら中距離ミサイルを生産、展開することで、中東地域をさまざまなミサイルの射程距離を示すリングに満ちた地図へと変容させていった。このような中で、中東地域の他の諸国もまた、自国の防衛を図るため、必然的に同様のミサイルを追求してきた。イランもこのような国の一つであり、近年、多様なミサイルの生産において多大な発展を遂げてきた〔*英語の原文では、冷戦の影響で中東地域にソ連製のスカッド・ミサイルがエジプトやシリア、イラクで配備されたこと、それへの対抗として、イスラエルもまた自ら中距離ミサイルを開発したことなどが背景として説明されているが、それらは「中東は元来不安定な地域」として省略・置換されている。また原文では、「このような中で‥‥」以下の文章は一切なく、軍拡によって中東がさらに不安定化したこと、そしてミサイル開発競争がイランで続けられていることなどが述べられている〕。
 
 アメリカの連邦研究所〔the Federation of American Scientists=アメリカ科学者連盟〕の研究員であるイヴァン・オルリック〔Ivan Oelrich〕氏は、このことについて以下のように述べる。「テヘランが最終的にイランを地域のミサイル大国へと変貌させることとなる道を踏み出したのは、およそ1980年ごろからである。その動機は、イラン・イラク戦争、いわゆる《都市間の戦闘》と呼ばれるものにさかのぼる。イラクは数多くのスカッド・ミサイルを保有し、たびたびイランの首都へ向け発射していた〔*英語の原文では「そこ(都市間の戦闘)では、イラン・イラク両国が互いに互いの首都に向けてミサイルを撃ちあっていた」とある〕。このことが、イラクのスカッド・ミサイルに対しては全くといってよいほど自衛力に欠けており、イラクが行っているのと同じようにミサイルによって対抗する以外に自衛のための方策を有していないとの考えを、イランにしっかりと植え付け、こうしてイランはさまざまあるミサイルのうち、最低でも一種類は保有しておくことの重要性を理解したのであった」。

 アンドリュー・コーク〔Andrew Koch〕氏は週刊誌『ジェーンズ・ディフェンス』の中で、これについて次のように言及している。「スカッドミサイルの中でも、それほど新しくない型のものは、約200キロメートル程度の射程距離にとどまるものであった。しかし、イランはより長い射程距離のミサイルを必要としていた。イランがより長い射程距離のミサイルを求めていた主な理由は、イラクへの対抗に終始した。同様に、イランはアメリカやその他の地域大国の《横暴》に強く懸念を抱いていたが、このような問題が発生するのを未然に防ぐために、イランは他の地域諸国の多くとは反対に、非通常兵器には頼ることなく、むしろ大陸弾道弾ミサイルの開発の道を選んだ〔*英語の原文では「彼らは自らの領域へのこれらの国々の侵略に対する抑止力として、通常弾頭あるいは化学兵器弾頭を搭載した長距離ミサイルを捉えている。そして、もちろん、彼らは最終的には核による抑止を望んでいると、私は考えている」とある〕。

 アメリカや他の西欧諸国は、イランのシャハーブ3型ミサイルに対して多大な懸念を有しているが、それはイランが同ミサイルを保有することで、一トンもの起爆剤を搭載して、イスラエルの国土にある標的を攻撃対象とすることができるからである〔*英語の原文では続けて、「それは基本的な核弾頭を搭載するのには十分な能力である」とある〕。

 しかし実際問題、最初にイスラエルがイランを脅威に晒していたのだ〔*この文章は英語の原文にはない〕。1980年代初めから、すなわちイランがシャハーブ3型ミサイルの製造に着手するかなり以前から、イスラエルは約1500キロの射程距離を有するエリコ2型ミサイルでもって、イランの西部全域を脅威に晒していた。シャハーブ3型にせよ、エリコ2型にせよ、単なる固定ミサイルにとどまるものでない。双方とも装甲車に取り付けられ、普段は地下の駐車場に埃をかぶった状態で出動態勢に置かれている。可動性の発射機は、容易に移動させることが可能な上、攻撃の対象となりにくいという特徴がある。実際これは、湾岸戦争の際、イラクが用いたテクニックである。

 イスラエルと異なり、イランは地球の軌道上に衛星を有していない。『ミリタリー・ペリスコープ〔Military Periscope〕』という名のアメリカ軍の出版物の編集長、ウィリアム・ホア〔William Hoar〕氏は以下のように述べる。「イラン、イスラエル両国は、国家の重要課題に宇宙計画を掲げているが、同地域に関する多くの専門家によれば、両国が宇宙技術を支援している重要な理由の一つに、軍事的動機、特にミサイル関連の動機と結びついていることが挙げられるという。イスラエルは自国の宇宙設備を宇宙船〔space launch vehicle=宇宙打ち上げロケット〕と称しているが、実際それはイランでは、シャハーブ4型ミサイルに当たるようだ」。イラン人は一部の点で、イスラエルに比べて弾道弾の能力ですぐれたものを有しているものの、独自の宇宙船の未来に関して重要な政策決定を下すべき時期が到来しているとウィリアム氏は指摘する〔*英語の原文では「ウィリアム氏はさらに『一時期イラン側は、それ(シャハーブ4)は実際のところ、より能力の高い弾道弾ミサイルである、と言っていたこともあった。しかし彼らはその後、そのことについて前言を撤回し、いまやそれを「宇宙打ち上げロケット」として性格づけることにしたのである』と付け加えている」とある〕。

 一部の軍事専門家は、2500キロの射程距離でイラン全土を攻撃対象に収めるイスラエルのエリコ3型ミサイルが中東地域においては最先端のミサイルであると考えている〔*英語の原文ではエリコ3ミサイルは「最先端」ではなく、「現在開発中」と述べられている〕。一方、推定によれば、イランのシャハーブ4型ミサイルは約2000キロの射程距離を有し、中東地域を越える範囲を攻撃対象をすることが可能となるとされている。さらに一部識者は、イランが約4000キロの射程距離を持つシャハーブ5型ミサイルの製造計画も有しているとみている。

〔*英語の原文では、これほどまでに長距離の弾道弾ミサイルを開発している理由として、《特別な弾頭》、すなわち核弾頭を搭載する狙いがあるのではないかとの専門家の見解が紹介されているが、一切の断りなく省略されている〕

 中東地域の専門家は、イランはイスラエルのみを脅威・敵国とみなしているわけでないと考えている。イヴァン・オルリック氏の確信するところ、イランは不安定な地域に身をおいているが故に、自国に対するあらゆる侵略者に対抗するための包括的な防衛戦略の一つとして、ミサイルを重要視している。さらに同氏は以下のように続ける。「イランのミサイル拡大政策は、外部からの侵略者に対する防衛を目的としている。将来にわたり何が起こるか予測不能な地域にイランが属していることを忘れてはならない〔*英語の原文では、一般的な議論として、多くの国がこれといった特定の敵国を想定して兵器を開発しているのではなく、ただ将来がどうなるか不透明であるがゆえに、軍拡に走るのだと論じられている〕。実際イランは情勢不安定なパキスタンと比較的広範にわたる国境を接しており、イランがパキスタンに対して強い警戒心を抱いている可能性もある。同様に、サウジアラビアや他の不安定国家に対し警戒していることも考えられる。自国が安全であると確信できない国家にとって、自ら安全を作り出そうとすることは、当然の権利である〔*英語の原文ではこの文章は存在しない〕」。

〔*英語の原文では、これに続けて、保守強硬派のアフマディーネジャード氏が大統領に選出されたことで、イランのミサイル計画と核開発に対する懸念が増していること、他国と利害の衝突が生じ、ミサイルがそこに関係してくる可能性もあること、などが論じられているが、省略されている〕

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( 翻訳者:柴田愛子(注は斎藤正道) )
( 記事ID:768 )