Ismet Berkanコラム「少数派宗教財団の不動産」(Radikal紙)
2005年06月17日付 Radikal 紙

さて、トルコのEU加盟に向けて古いながらも新しい議論が再燃している。はっきりしているのは、これから数ヶ月の間我々はこの問題を取り上げていくだろうといういうことだ。この問題によってEUがトルコを苦しめ、もっと言えば脅迫する様を我々は見ることになる。まずその問題を明らかにしておこう。

トルコにある少数派宗教財団(訳者注:少数派宗教とはトルコ国内のユダヤ教、ギリシャ正教、アルメニア教を指している)は、保有していた不動産の多くを失った。「失った」のには訳がある。①政府に「これはあなた方の所有物ではありません」と言われ没収された。②政府に「あなたがたにはこれを買うことが許されていません。いますぐ、購入時の値段で(つまり不動産登記にある値段で)元の持ち主へ返しなさい」と言われ売るしかなかった。(訳者注:1936年に政府は少数派宗教財団の保有する財産を申告させた。74年にはこの36年の申告書に「将来新たに不動産を購入することが可能」という文がなければその財団は不動産を購入してはならないと決めた。違反のあった不動産は没収された。こうすることで富裕層であることの多かった非ムスリムの財団から財産を没収していった。昨年EUの提示した、トルコの加盟のための条件のひとつがこの財団に対する補償であり、現在財団法の改正が議論されている。)

今、EU加盟のプロセスの中でトルコ政府が過去の過ちを償い、財団法の改正に伴って少数派宗教財団の問題を解決することが求められている。上に挙げた過去の政策①には補償の余地が大いにある。没収された不動産が今も国家不動産(Milli Emlak)やワクフ総局(Vakıflar Genel Müdürlüğü)にあるのなら、少数派宗教財団に返還することはいたって簡単だ。改正中の財団法はその道を開くだろう。

しかし、②の補償はむずかしい。トルコのエリート、特にワクフ総局のエリートにこの問題について質問をすると、壁にぶつかる。彼らにとって少数派宗教財団の不動産のことは問題ですらない。しかし30年代~60年代にかけて財団が買った不動産を当時の値段で元の持ち主に売るというのは明らかに尋常ではなかった。

一方でこの問題の難しいところは、不動産の多くが第三者に売却されているというところだ。この善良な第三者に財団へ不動産を返せというのは勿論無理がある。しかし改正中の財団法では何らかの補償のメカニズムを作らなければならない。結果として明らかな不動産所有権の侵害があったのだ。そして侵害したのはトルコ共和国政府である。補償のメカニズムを作るのは絶対だ。もしトルコ政府がこのメカニズムを法によって作れなければ、今度は欧州人権裁判所が必ず介入してくる。欧州人権裁判所の命じる補償はトルコにとって一層苦しいものとなる可能性があるのだ。それを忘れてはならない。

少数派宗教の問題、その財団の問題は最も見過ごされてきた問題のひとつだ。財団の不動産の返還はトルコの過去の清算であり懺悔でもある。政府がいつの日か自国の国民である少数派との関係について腰をすえて議論するための最初の段階が財団の財産の返還なのかもしれない。


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( 翻訳者:加賀谷 ゆみ )
( 記事ID:277 )