北キプロス・トルコ航空機バクーへ「落ちる」!(Radikal紙)
2005年08月30日付 Radikal 紙

キプロス・トルコ航空が初めてバクーへ直行便を飛ばした。セルダル・デンクタシュは、これがEUに対するサインとなり、孤立状態に幕が引かれることに期待感を示した。

セファ・カラハサン

バクー発

トルコと北キプロスがキプロスのトルコ系住民の国際的孤立を解消しようと策を講じるなか、アゼルバイジャンを交えた相互の歩み寄りがみられる。7月28日にアゼルバイジャンのImair航空が100名の代表団を乗せて北キプロスへ飛んだのち、一昨日の夜、キプロス・トルコ航空(KTHY)に所属する航空機によって、トルコ以外の国への、つまりアゼルバイジャンへの初の直接乗り入れが実現した。アゼルバイジャン語で言うなら「エルジャン発バクー行YK6001便は落ちた」のだ。
エルジャン空港を「北キプロス国旗を直接他国にはためかせるのです」とのパイロットのアナウンスとともに離陸した航空機は、バクーへ「おはようございます」といいながら着陸した。23:00出発のはずが、機体トラブルで、イギリスから到着した別の機体によって3:00に離陸した便に乗った90名の一団は、昨朝、バクーに降り立った。代表団に名を連ねる北キプロスの建国者ラウフ・デンクタシュ前大統領とセルダル・デンクタシュ外相は、イルハム・アアリエフ政権から非公式の招聘と受けており、ビジネス関係者はアゼルバイジャンのビジネス関係者からの招聘を受けていた。
セルダル・デンクタシュは非公式訪問について「角の立たないはじめの一歩」と評した。アゼルバイジャン政府が北キプロス旅券を承認したことを物語るように、北キプロス一行は北キプロス旅券で入国し、空港でアゼルバイジャンのナーズム・イブラヒモヴァ国務相、アゼルバイジャン-トルコ実業家連合のアフメト・エレントク会長ら関係者の出迎えを受けた。

■「わが宿願でした」
セルダル・デンクタシュ外相は、訪問について「相互のチャーター便就航について議論されたら、と望みます。アゼルバイジャンの踏み出したこの一歩が、他国に対しての、とりわけEUに対してのサインになれば、と願っています。」と語った。今回の代表団は、政治的・経済的協力についての共同合意文書に署名し、エルマル・メメディヤロフ外相、ムルトゥズ・アレスケロフ国会議長と会談することが予定されているが、イルハム・アアリエフ大統領との会談実現も期待されている。
バクーへの歴史的フライトに際してラウフ・デンクタシュは、本紙に次のように語った。「この瞬間こそわが宿願でした。バクーを、あるいは他国を直接訪れるのは初めてのことです。これは兄弟同士の面会なのです」。機長のアリ・コチャバンは「これは、われわれにとって最も幸せなフライトです」と述べ、副操縦士のイルハム・イリムは「インシャッラー、この幸福が続きますように」と語った

■「他からも招待を受けています」
代表団は、バクーで今は亡きアゼルバイジャン指導者ヘイダル・アアリエフの墓廟と殉教者墓地を訪れた。ラウフ・デンクタシュはアゼルバイジャンが北キプロスを承認するには時間が必要だと述べ、「他のトルコ系諸共和国からも招待を受けています。インシャッラー、訪れる予定でいます。まずアゼルバイジャンにお礼申し上げます」と語った。
デンクタシュは、バクーが北キプロスを承認することで、ギリシャ系側がナゴルノ・カラバフを承認するとの見通しについては、「道理のないこと」と述べた。加えて、EUがこれまで(キプロス問題について)満足な役割を果たしてこなかったにもかかわらず、ギリシャ系政権を正当なキプロス政府としてEUに加盟させたことを批判し、「この世には正しいことなど無いのです。我々は自らの権利を護ったのであり、北キプロスはその象徴なのです」と語った。

■訪問で気付いたこと
・北キプロス一行には、バクー着陸前に北キプロス国旗が配られた。バクーで北キプロス一行が遭遇した小さなグループは、北キプロス国旗を手に熱狂的なデモを行っていた。
・ラウフ・デンクタシュの妻アイドゥンさんが、娘たちや孫たちとともに今回の訪問に同行した。
・機内でアゼルバイジャンでは用いられない単語の一覧表が配られた。huy(性質)という単語の代わりにhaysiyet、bardak(グラス、杯)の代わりにsteka、subay(将校)の代わりにbekâr、küçük(小さい)の代わりにkiçikを用いることが求められた。
・報道陣に随行するガイドが、報道陣と民衆とが接触しないようやたらと注意を払っていることが目に付いた。ガイドが隔離しようという態度を取ったことで、報道陣に反発が生じることになった。


***********解説*************
本文中、航空機が「落ちる」となっていたり、「着陸する、降りる」となっているのは、飛行機の着陸に関する語用が、現代トルコ語、アゼルバイジャン語間で(言語的に近いとは言ってもやはり)異なることによります。
トルコ語で「着陸する、降りる」に相当する動詞は「in(-mek)」ですが、アゼルバイジャン語では「düş(-mek)」で、トルコ語で「düş(-mek)」といえばもっぱら「落ちる」の意味で用いられます。

本文によれば、トルコ語-アゼルバイジャン語の単語対照表が配られたとのこと。カラハサン記者は今回の訪問の同行記者。記事はバクー発。とすれば、一見、対応表の原則に「忠実に」従った記事の題名でしょう。しかし、同記事をトルコ語で目にする読者にとっては、強烈な皮肉として映るかもしれません。今回の訪問が北キプロスにもたらす結果は「穏やかな着陸」ではなく「激しい墜落」なのかも…このような訳者の理解は深読みでしょうか?(文責:訳者)

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( 翻訳者:長岡大輔 )
( 記事ID:773 )