海外メディア、ローマ法王訪土についての報道ぶり(Radikal紙)
2006年11月30日付 Radikal 紙

■エルドアン首相、法王を罠にかける

ローマ法王ベネディクト16世の訪土に関し、海外メディアは大々的に報道したが、法王によるトルコのEU加盟支持に関しては懐疑的な見解がとられ、そして宗務庁長官アリ・バルダクオールの批判的な言葉が報道された。

■イギリス

法王はトルコのEU加盟交渉を評価した。訪問の最初の段階でアンカラ(トルコ政府)のEU加盟を支持した。キリスト教徒とイスラーム教徒の歩み寄りを求める法王は、宗教指導者達に対しても、信仰の名の下に行使されるあらゆる暴力を拒絶するよう呼びかけた。バルダクオールが「宗教指導者達はそれぞれの信仰の優越性を示そうとするのではなく、人類に共通の問題を解決するために努力すべきである。」と話すと、法王は困惑の表情を見せた。バルダクオールは、法王に戒めの言葉を与えることとなった。
法王はアンカラ到着30分後、政治的策略にかかった。エルドアン首相はすぐにトルコのEU加盟に対する法王の支持を求めた。法王はまだ枢機卿の頃これに反対であったが、エルドアン首相は法王の政治的見解の変化に踏み込み、現在はトルコのEU加盟を支持していることを述べ、それを誇示することに成功した。バチカンは後にこれに対する説明を行い、法王がこのような権力や政治的職務を負っていないことを強調した。バルダクオールはイスラームの寛容さについて言及し、イスラームが暴力に頼った宗教であることを擁護する人々は、過激派の怒りに新たな理由を与える以外何もできないだろうと述べたところで、法王が不快になったのが見てとられた。
【インディペンデント紙】法王はトルコを訪問することで一つの橋を渡ることとなった。ひとつの世界からもうひとつへ、ヨーロッパからアジアへ、キリスト教からイスラームへ旅したのである。EU加盟を望むトルコはこれに反対する国々に批判する口実を与えないため、最後の最後にエルドアンと法王の空港での会談を手配した。エルドアン首相は会談後、法王がトルコのEU加盟交渉を支持してくれることを望むと述べた。しかし人々は法王がまだ枢機卿の頃、反トルコの姿勢をとっていたことを知っている。それにも関わらず首相は「法王はこの件で助力するのか。」という質問に対しすぐに「イエス」と答えた。法王は本当にこう発言したのだろうか?バチカンは3時間かけて説明を準備した。スポークスマンであるフェデリコ・ロンバルディは、詳細に項目ごとの説明が記された文書による説明において、「法王にはこの問題に関わるだけの権力を持っておらず、政治的職務も負っていない。法王はこれを肯定的に見ているに過ぎない。」と述べている。

■アメリカ

法王は、自身に対するイスラーム世界の怒りを静めるため意外にも好意的な態度で訪土した。ベネディクト16世のこの態度は、イスラームと西洋の関係やイスラーム教徒が持つ法王に対する悪いイメージが問題となっている非常に微妙な時期に、まさにタイムリーな政治的舞台に登場するのに、よく考えられた演出であった。
【ロサンゼルスタイムズ紙】ベネディクト16世は、彼のなすべき役割の中において最も難しい旅とされたトルコ訪問中、トルコとの友好を数多く口にし、トルコのEU加盟への反対姿勢を和らげた。

■ドイツ

法王ベネディクト16世に対するアンカラの歓迎は控えめなもので、アンカラ市街に法王を見に来る人々の数は多いとはいえなかった。エルドアン首相は法王が語った言葉を間違って伝えたのだろうか。法王がエルドアン首相にトルコのEU加盟について実際は何を言ったのか、疑った見方をするものもいる。しかし法王は、思いがけず謙虚な姿勢でトルコの人々の喜びを誘った。
ベネディクト16世は自身を最も厳しく批判したバルダクオールと会談した。

■フランス

法王ベネディクト16世がエルドアン首相によって迎えられたことは、重要な外交的出来事であり、法王がトルコのEU加盟を支持すると表明したことはまさに革命である。神学者である法王は外交官になった。ベネディクト16世がイスラームに関し反感を呼び起こした発言をする以前から、トルコとバチカンの関係がそれほど良くないことは知られていた。しかし法王はあらゆる期待を裏切って、この議論にピリオドを打つための明確な意思が示された。

■イタリア

会談はアタテュルクの肖像画の前で行われた。エルドアン首相が法王を迎えることで間にあった亀裂はなくなった。
アヤソフィアには大量の罠がある。イスラーム急進派の人々は批判の口実を探している。
法王はひざまずくのだろうか?

■スペイン

オスマン様式の礼儀がこもった儀式とバチカンの洗練された外交は、文明を衝突から救った。欧米諸国はトルコを温かい目で見る一方、アンカラの人々は法王に背を向けた。街は法王に無関心であった。

■イスラエル

法王のトルコにおける微妙な訪問が始まった。多くの意味が込められているこの訪問において法王の行った会談は、西洋とイスラームの間の緊張がなくなるために重要なのであった。【マーリヴ紙】

■アラブ諸国のメディア

エルドアン首相は法王を飛行機から降りたところで迎え、驚かせた。【レバノン:el mustakbel紙】
法王によるアンカラのEU加盟への支持はアンカラ(トルコ政府)を喜ばせることとなった。【ロンドンのアラビア語メディア:el kudsul-arabi紙】
法王はこの訪問で文化間理解が強まったことを強調し、トルコを西洋文明とイスラ-ム文明との間の架け橋として見ていると話した。【エジプト:el cumhuriye紙】


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( 翻訳者:上田悠里 )
( 記事ID:4016 )