Murat Yetkin コラム:国の二極化をもたらす“エルドアン大統領”― 実業界の見方(Radikal紙)
2006年12月23日付 Radikal 紙

昨日アンカラで開かれたトルコ実業家協会(TÜSİAD)評議委員会の会議は、昨年同様に今年も政治的な議題が熱く討論される舞台となった。昨年、会議に弁士としてアフメト・ネジュデト・セゼル大統領が招待されたことは、世俗主義に関するメッセージとともに、政治の司法への介入問題と選挙における最低当選得票率の引き下げの問題を議論したことが政府を不愉快にした。TÜSİADが今年招いた弁士はアブドゥッラー・ギュル外相だった。話し合われたテーマはやはり政治に関するものであり、EU戦略から大統領選挙、さらに早期選挙の議論までが議題に上った。しかしTÜSİADの出したメッセージは、政府も野党も完全に満足させるものではなかった。

そう、TÜSİADは、ちょうどトルコ商業会議所・商品取引所連合(TOBB)のように、早期選挙を望んでおらず、野党がエルドアン首相が大統領になる可能性に対する“解毒剤”だと見なした最も重要な法的プロセスを支持しないと宣言したのだ。
他方で(TÜSİADは)、大統領が合意により選ばれる必要があると指摘したが、つまりこれもまた、以前発表した「首相が留任するならそれに越したことはない」という趣旨の発表から後退しなかったことを示している。加えてTÜSİADのこうした声明は、エルドアンが前の晩に(民放テレビの)ATVで「我々には大統領に関する計画がある。それに着手し始めた」と語った後に出されたものだった。

TÜSİADはこうした方針に従って、1:政府(与党)が議会の多数派を占め、また社会的な反対勢力不在の状況において、共和人民党(CHP)をはじめとする野党が何を言おうとも政府が早期選挙の決定を下さないことを認めているように見える、2:しかし議会で多数派を占めるにもかかわらずエルドアンが大統領に選ばれた場合には、トルコが今後何年かの危機的な時代を(特に世俗主義のような根本的な問題に関して)国内の対立と不安定とともに過ごすことを受け入れてはいないように見える。
この点でTÜSİADも野党同様、エルドアンが大統領となること自体は合法だが、社会を二極化させ、トルコが決定を下す過程を滞らせるものとして見ていると言うことができる。
エルドアンが大統領になることにより、社会は彼に味方する者とそうでない者という形で二分されるだろうと考えられている。この二極化が徐々に世俗主義の議論のように体系化するのではないかという懸念がある。こうした様相は、以前のオザル-デミレル論争とも、セゼルの大統領就任によって生じた状態とも異なっている。

セゼルが大統領候補になることは、2000年5月に(大統領)選出が難航した、まさにそのときに議題に上った。(当時首相の)ビュレント・エジェヴィトが1970年代以来のノスタルジーによって憲法裁判所長官であったセゼルの名前を出すと、ことはひどく紛糾して、民主左派党(DSP)の議員だけでも今名前を思い出すと笑ってしまう4人の高名な政治家が大統領職に就くよう強く求めた。
セゼルは全ての政党の合意により選ばれた。セゼルを全会一致で選んだ議会は、2002年の早期選挙で完全に議員が入れ替わった。今日の議会でセゼルの大統領就任のために投票したのは、当時美徳党(FP)の一員だった今の公正発展党(AKP)の議員だけだ。セゼルは大統領に就任したあとも控えめな生活様式で、国民に「私はあなた方の一員だ」というシグナルを送るすべを知っていた。数カ月後に法令をめぐって起きた危機は、2001年2月19日の国家安全保障評議会(MGK)における不吉な憲法冊子の交換事件(※注)により頂点に達した。わが国最大の経済危機はこのようにして始まった。経済危機のもたらした政治的な横波は、早期選挙とAKP政権へと道を開いた。

セゼルは、AKP政権になって生じた不公正な議会構造において、(憲法裁判所とともに)ほとんど唯一のチェック機関であり続けた。特に世俗主義と人事登用(というのもこの2つは昨日TÜSİADが注目した問題だった)、それにいくつかの経済的な決定に関する態度は、社会の一方の勢力の目でそれを高く評価すればするほど、他方の勢力の反発の対象となった。残念なことであるが。
しかし少なくともセゼルは、1:政治的な人物ではなく、2:政治的な分裂の結果選ばれた訳でもなく、3:政治的な合意の結果選ばれた。にもかかわらず今日の状況は周知の通りだ。

ギュル外相は、昨日TÜSİADでの話し合いで、憂慮するような状況にはなく、2007年11月の選挙でも自分たちが勝つと伝えた。もしかしたらそうなるかもしれない。ひょっとするとAKPを驚きとともに政権へ就けた投票箱は、また驚きとともにこれを政権から追いやるかもしれない。

今エルドアン首相に我々の質問をぶつけよう。あなたにとって大統領が社会の半数によってはなからそっぽを向かれることは、国にとっていいことですか?


※注:セゼルがエジェヴィトに「きみは憲法を知らんのか。じゃあ教えてやろう」といって憲法の冊子を投げつけたといわれる事件のことを指していると思われる。

関連記事:2006年12月7日 トルコ財界、大統領選挙に懸念(Milliyet紙)(http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/newsdata/News2006127_4073.html)

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:4208 )