Murat Yetkinコラム:2007年大統領選に向け軍の2つの懸念(Radikal紙)
2006年01月26日付 Radikal 紙

1.我々にとって2007年は誰が大統領になるかではなく、大統領が何をやるかが重要。憲法が遵守されれば問題ない 
2.分離主義に対して対応が遅れている。政策が明示されるべきだ。


「我々にとって2007年は誰が大統領に選ばれるかではなく、大統領が何をやるかが重要である。大統領が憲法を遵守するかぎり問題は起きない。」軍の幹部が最近注目している政治問題は、現首相のタイイプ・エルドアンがネジュデト・セゼルの後任として大統領に選出される可能性である。そうなればことは内政問題に留まらず、トルコの国際関係を揺るがす事態になりかねない。デニズ・ゼイレキ記者の情報によれば、エルドアンは1月20日にアンカラにおいてEUの大使との食事会においても同様の質問がなされたようだ。国内のみならず国外においても心配の根源は、エルドアンの妻エミネ夫人がスカーフを被っていることによって政治的安定、経済的バランスにマイナスの影響を与えるのではないかということだ。
 匿名を希望する軍の幹部は次のように語った。「法律では大統領に選出される人物や、その配偶者の服装までは規定していない。そのため現首相が大統領になることにとりわけ障害はない。しかし服装がレセプションで不快感をもたらすとすれば・・・レセプションへ参加しないで終わる。そしてレセプションすら行われなくなるだろう。重要なのは、大統領に選出される人物が、共和国の基本原則および憲法の基本原則を遵守し行動するかである。重い責務を要される地位は、その地位に就くものにより責任ある行動を求めるのである。例えば大統領は憲法裁判所への権限を持つ。憲法は変更されない、憲法改正を要求されないという基本原則がある。憲法ではこう定められているが、もし憲法改正を要求した場合、どのような手続きが取られるかは明示されていない。つまり法的な拘束はないのである。しかし見解の一致があある。憲法の不可侵性は基本原則が守られている限り問題にならないのである。」さらに次のように言葉を続ける。
「いくつかの政策には社会の大多数の同様、我々も不愉快に思っている。例えばイマーム・ハティプ高校出身者が組織の中で優遇されるような改革が続いている。現在は通信制高校という形で試みがなされ、機会が保障されている。こうしたニュースを聞く度悲しくなる。民主主義のシステムの中で、自身にも関わる問題を話し合い、その見解を法的に政府に伝えている。他の形での干渉はしない。しかし何の効果もない。」

■テロ対策が出遅れすぎている。
上級幹部は、最近数ヶ月の閣僚会議で最も重要な議題であるイラクとそれに関するクルド問題への対応について以下のような見解を述べた。「イラクの動向はアメリカの望まぬ方向に展開している。選挙後、シーア派の統治下でクルドやスンナ派も参加する連立政権発足が望まれている。クルドが参加しない連立政権は、イラク分裂の危機をもたらす心配がある。望む望まないに関わらず、向かい合わねばならない現実がある。クルド人支配地域においては、アメリカからもクルド勢力からもPKKに対して我々の望むような援護が得られない。諜報活動は支援されても、捜査ができなければ諜報活動の意味はない。クルド問題と呼ぼうが他の名称で呼ぼうが、問題はもはやテロ問題だけではない。不安をもたらされ、存在感をアピールされようが、テロ問題は二の次である。問題はもはやクルド分離主義運動、つまり政治問題なのである。分離主義の要求がなされるようになれば、テロはもはや必要ない。」
「思想、表現の自由が悪用されている、民主市民党(親クルド政党)の党員がテロ行為を評価する。警察はオジャランのポスターを掲げデモ行進を行う者に対し、西部と東部では異なった対応をする。
西部では干渉するのに東部ではしない。これは命令に従っているのだろうか。返答はない。そのうち市役所の門にはトルコ国旗ではなく、別の旗が翻るかもしれない。それでも声を上げないだろう。」
「こうした問題は治安部やテロ対策部以外の行政部では話題にならない。対応が遅すぎる。テロ対策委員会では根本的対策が取られているそうだ。しかし新テロ対策委員会では、目的は単にテロとの戦いである。しかしそれだけでは不十分である。政治的な対策が必要であり、そうしないかぎり手遅れになるのである。」
(以下省略)



********************本記事への解説********************
トルコの大統領は大国民議会によって選出される。大統領には
・議会の議員であってはならない
・特定の政党に在籍してならない
・大卒以上であること
・任期は7年
・再任は不可
などいくつかの条件が付き、議員が大統領に選ばれた場合は即時に議員を辞職しなくてはならない。
トルコ共和国において80年代までの大統領は軍人から選出される傾向があったが、90年代以降はすべて文民出身者である。89年に選出されたトゥルグト・オザル(93年に急死)、93年に選出されたスレイマン・デミレルはいずれも与党党首で、首相から昇格する形となった。2000年に就任した現大統領のアフメト・ネジュデト・セゼルは憲法裁判所長官とという大統領としては異例の経歴であり、アタテュルクの思想を最も強固に護る司法の監視役として、親イスラームの与党と度々衝突していた。セゼル大統領の娘の結婚式の際に、スカーフを被ったエミネ首相夫人には招待状が送られず、首相も欠席したというエピソードがある。
 なおトルコの大統領制は、比較政治学では半大統領制として分類されることが多い。大統領は自ら立法権は持たないが、議会の提出した法案を最終的に信任する権利を持っており、法律畑出身のセゼル大統領はとりわけ厳しい判断を下してきた。
(文責:大島 史)



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( 翻訳者:大島 史 )
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