トルコのEU加盟実現に、イスラーム世界も注目(Radikal紙 3月6日付英Kuds ül Arabi紙より引用)
2006年03月10日付 Radikal 紙

トルコのEU加盟が実現すると、全イスラーム世界に影響を与え、特にアラブ諸国の思想や政治的近代化を促進するだろう。

トルコのEU加盟は、公正発展党(AKP)にとっては単に経済的な目標というだけではなく、19世紀半ばのオスマン帝国のタンジマート期以来トルコを揺るがし続けてきた文化と文明に関する問いに答えを出す努力であるように見える。目的はといえば「歴史と国民の持つ宗教的アイデンティティを否定しない『トルコイコール欧州の一員』」という等式を作り出すことである。

同時に、国内改革もその目的の一つである。というのもAKPはEU加盟とその適合基準により、軍事組織を制限し政治領域から排除することを望んでいるからである。さらにAKPは、欧州基準を人権や現代トルコ国家とクルド・ナショナリズムとの衝突に終止符を打つために、少数民族の権利の分野で機能させようとしている。こうしたことから、EU加盟は単に経済発展だけでなく、改革と国内の安定をもたらす手段となっているのである。

EU加盟を目標とする政策により、トルコにはより民主的かつ自由、公正で、経済的な面でもより強力で着実な、不正行為のより蔓延していない社会が出現するだろう。単にトルコ社会とトルコのイスラーム運動にとってだけでなく、世界中のイスラーム改革運動や世界平和、イスラームと西洋文化との間の対話や共生の努力にとっても豊かな経験を生み出すだろう。

■歴史的なギャップ

こうした見地に基づいて欧州は肯定的な役割を果たすべきであるし、トルコをイスラーム国家であるという理由で永久に区別したままの状態に置いてはならない。欧州は、イスラーム教徒であるがために文明的ではないとの言葉で、トルコを隅へ追いやってはならない。さもなければ、この条件はトルコにとって悩みの種となり、結果として「あなた自身の服を脱ぐまでは、我々はあなたを認めないでしょう」という意味になりかねない。

アラブ諸国と欧州との間に、進歩や発展という点で歴史的ともいえる大きなギャップがあることは全く疑いない。しかし西洋が、我々が内部で陥った悲劇的状況から脱出するところまで何の援助の手も差し伸べないのであれば、‘文明列車’に乗ることや、人権、国民主義や法規に基づく国家を建設すること、あるいは宗教的寛容性を示すことを我々に要求する権利はない。

■EUも利益を得る

トルコのEU加盟が実現すると、全イスラーム世界、特にアラブ諸国に影響を与え、彼らを思想的、政治的な近代化へと駆り立てるだろう。遅かれ早かれ、他の国はトルコがやったことを真似するようになるだろう。特に貧困や発展を阻む障壁、宗教原理主義を克服できた場合には、である。

EUはトルコの加盟により、少なくともトルコと同じだけの利益を得るだろう。さらにアジア、アフリカ、アラブ、北アフリカも恩恵を受けるだろう。大欧州市場を生む経済的グローバリゼーションの時代には、皆がこのことから利益を得ることになるだろう。

欧州にとってトルコは、欧州の安全保障戦略に関するテーマで中心的な役割を果たす国として位置づけられている。トルコの戦略的重要性は冷戦期に生じた。冷戦終結後、中央アジアやバルカン諸国の安全保障問題が起きたのち、その重要性は増した。このため安全保障上の利益は‘欧州の一員としてのトルコ’を求める圧倒的な要素になっている。これに加えてトルコは、ヨーロッパ大陸の東からやって来る不法移民の流入を管理下に置くことのできる欧州の東の門である。従って、トルコ政府と欧州の間の良好な関係は、不可欠な状況である。

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( 翻訳者:幸加木 文 )
( 記事ID:2045 )