Fikret BILA コラム:イランのPKK政策 (Milliyet紙)
2006年05月10日付 Milliyet 紙

イランのアリ・ラリジャーニ国家安全最高評議会長官は、アンカラ訪問の際に「アメリカとPKK(クルド労働者党)との会談」について力説した。ラリジャーニ長官はアメリカ・PKK会談についてアンカラ政府に詳細に報告したことも話した。会談の場所と時間も明かした。ムスルとキルクークで1ヶ月前のことだ。

それとは別に興味を惹かれたのは、ラリジャーニ長官のアンカラ訪問と同時に、イラン軍がPKKのキャンプにミサイルで集中的な攻撃を加えたというニュースだった。在アンカライラン大使館主催の食事会でも、ラリジャーニ長官は再度PKKの問題について力説した。

■一石二鳥
PKKはトルコの最もデリケートな問題だ。テヘラン政府は最近進めている対PKK政策によって一石二鳥を狙っている。PKKのキャンプをたたいたイランは、アンカラに二つのメッセージを送っている。

1-トルコがアメリカに期待していることを、我々が実行している。あなた方はアメリカがカンディルを、つまりPKKのキャンプをたたいてくれると期待しているだろう。しかし、彼らではなく、我々がたたくのだ。PKKとの闘争においてトルコの真の同盟国は、ワシントンではなくテヘランだ。

2-核開発問題のためエスカレートするアメリカ・イラン間の緊張関係のなかで、トルコはワシントンではなく、イランの味方になる必要がある。

■メッセージの二つの目的
1-PKKとの闘争でアンカラを満足させながら、トルコ・アメリカ間の接近に溝を作り、反イランの国際間の連帯に重大なひびを入れる。

2-PKKとの闘争を通して(テヘランに)歩み寄るアンカラを、核問題危機の際にアメリカを制止させるための仲介者として役立てる。

PKKとの闘争は、アンカラと接近するための最短で確かな方法だ。PKKと激しい闘争に突入したテヘランに向かって、アンカラが真正面から反発することは難しくなるだろう。常に国家と外交の歴史について話題になるテヘランが、PKKを利用して対PKKのイランの有用性を証明したと言えるだろう。アンカラを影響下に置くという観点から、テヘランが最短の方法を使ったことが分かる。イランの対PKK政策が、アンカラに「アメリカに反対、イランに賛成」という態度を公式にとらせるまでには至らないとしても、世論に(イランに対する)肯定的な雰囲気、同情が生み出される事は明らかだ。

■ニューバランス哲学
マフムード・アフマディネジャード大統領をはじめイランの権力者は誰一人として、核兵器を保持したことまたは保持しようとしていることを認めていない。核開発を平和的目的で進めていること、その技術を手にし、用いることはあらゆる国と同様イランにも権利があることを強調している。しかし、アフマディネジャード大統領をはじめあらゆるイランの権力者の言い回しに、「核の力」を誇示する雰囲気がすでに定着しているように見える。

イランがすでに「核保有国クラブ」の一員であることと、イランの核保有が世界のパワーバランスに重要な変化をもたらすということを感じないわけにはいかない。ラリジャーニ長官が行ったように、イランが手にしたあるいは手にするであろう核の「力と技術」は、全イスラム諸国の「力と技術」として認識される必要があるのだとの呼びかけが行われている。イランはこの方法で、イスラム諸国の世論において、アメリカに対峙して反アメリカ感情を高め、自信を膨らませ、下位コンプレクスを克服させようとしている。

アメリカのリーダーシップ下にある西洋の支配、一極化、一国がスーパーパワーを有する世界新秩序に対し「バランス」を探る世界のなかで、イランも重要な「アクター」であるとの印象を与えようとしているのだ。反アメリカ的リーダーが続々と政権についている南アメリカ諸国との関係を親密なものとしながら、このメッセージを強めていこうとしている。

一方でロシア・中国・インドという軸、他方で南アメリカとの親密な関係のなかで「ニューバランス」を構成することを狙っている。これがアメリカを悩ませる、テヘランの狙いだ。



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( 翻訳者:塚田 真裕 )
( 記事ID:2400 )