行政裁判所、銃撃で5人が死傷 -スカーフ問題が引き金か?(Milliyet紙)
2006年05月18日付 Milliyet 紙

 行政裁判所は、トルコ共和国史上もっとも凶悪な銃撃事件を経験し、激しく動揺している。行政裁判所は、児童・生徒らは共和国の基盤である世俗主義に則って育てられるべきであるとして、幼稚園にスカーフを巻いて出勤した教師に対し、管理職をまかせることはできないという決定を下した。その決定が原因で、弁護士アルパッサン・アスランの弾丸の標的となったとみられている。

会議中に銃撃を受けた第2部局の委員達のうち、ユジェル・オズビルギン委員は死亡。ムスタファ・ビルデン部局長、アイラ・ギョネンチ委員、アイフェル・オズデミル委員、アフメト・チョバンオール捜査判事が負傷した。

■ 行政裁判所のビルに来たのは2度目だった
前日にも行政裁判所に入り込んでいたことが分かったアスランは、昨日は、自動車をネジャティベイ通りに駐車した後、行政裁判所を訪れた。このとき、側にある将校クラブの監視カメラに写っていたアスランは、弁護士のIDカードを見せて行政裁判所に入っていった。腰には、「幻の武器」として知られるグロック社製のピストルを携えていたにも関わらず、X線検査装置も難なく通過した。

■ 「ムスタファさんはここにいますか?」
第2部局のある別館に向かったアスランは、エレベーターに乗って6階に上がった。第2部局のある5階に下りたアスランは、直前にチャイ屋(※1)が入っていったドアを通り、アイヌル・タスル秘書の部屋に入った。アスランはタスルに、「ムスタファさんはここにいますか?」と尋ねたが、「会議中ですので、面会できません」と返答された。しかし、アスランはビルデンの部屋のドアが開いていることに気付いた。供述によると、紅茶が振る舞われている間に、武器を取り出し部屋に飛び込んだアスランは、「私はアッラーの使徒であり、アッラーの兵士である!」と叫んだ。アスランは、そのときドアの一番近くの席で立ち上がっていたチョバンオールに体当たりをして、会議中の委員達に弾丸の雨を降らせ始めた。

■ 廊下での発砲
行政裁判所院長代理タンセル・チョラシャン委員の説明によると、11発の銃弾は、ビルデン、オズビルギン、ギョネンチ、オズデミル、そしてチョバンオールに命中した。カムラン・エルブーア委員は、銃撃の間、机の下に隠れていたため、無傷で助かった。部屋に居合わせたチャイ屋も負傷しなかった。悲鳴を上げながら部屋から飛び出したタスルを黙らせようとアスランは銃口を彼女に向けた後、廊下で空に向けて発砲し階段に向かった。

■ 銃弾が尽きてアスラン逮捕
別館と本館をつなぐ渡り廊下の出口で警備員と職員に出くわしたアスランは、ピストルを再び取り出した。そして、「こっちへ来るな!みんな殺すぞ」と言った。
「私はオスマン帝国の子孫だ。行政裁判所にアッラーの天罰が下るだろう」などと叫んだアスランは、警官たちが向かってきたのを見ると「神は偉大なり」と唱えて再び発砲した。警官は、アスランに飛びかかり身柄を拘束した。

■ チョルトゥオール院長と委員たちの恐怖
アスランが逮捕されたころ、第2部局の階に上がっていた行政裁判所のチョルトゥオール院長と委員達は、血まみれの同僚を目にして、恐怖に包まれた。チョルトゥオールは、同僚を乗せた救急車に同乗して病院に付き添った。スカーフ問題の決議に反対票を投じたオズデミルも銃撃を受けていたことから、アスランが無差別的に攻撃をしかけたとも解釈されたが、警官は、アスランが「確実に全員を殺すために発砲した」と話した。
 行政裁判所ビルデン部局長が周囲に「1日1回脅迫電話が来る。まったく嫌になる」と漏らしていたことが分かっている。

■ 行政裁判所第2部局は、スカーフ問題に関する決議を行っていた
行政裁判所第2部局は、教育関係諸機関、教育関係機関で働く公務員、そして大学の運営業務に関して法的監視を行っている。行政裁判所スムル・チョルトゥオール院長の指示によって、行政裁判所のビルには巨大なトルコ国旗が掲げられた。

■ 「ヴァキト」紙を所持
アスランは前日に、「34 BE 0126」というナンバーの車でアンカラに来ていた。行政裁判所の部局長室を訪れたアスランは、ドアをこじ開けようとしたが、鍵がかかっていたため入れなかった。このときアスランは、通りかかった人に「誰を探しているのですか?お手伝いいたしますよ」と声をかけられたが、適当に答え、その階から離れた。疑わしい状況にもかかわらず、通常の訪問客の一人であろうとみなされ、監視カメラの画像もチェックされなかった。行政裁判所の何人かの委員は、アスランのこの最初の訪問が、「偵察目的」であったと考えている。
 銃撃事件の後、犯人の所持品として、新聞「ヴァキト」の切り抜き、極端な愛国主義で知られている「愛国軍事同盟活動支援」のIDカード、そして国民TV(ウルーサルTV)の名刺などが押収された。アスランの車からは、事件で使用したものとは別のグロック社製の14ミリ経口のピストルも発見された。アスランと一緒に行政裁判所に侵入した2人の容疑者が見張り役をしていたこと、彼らも武器を携帯していたことが明らかになった。彼らに対する捜査も始まっているという。

※1:チャイ屋・・・オフィスに紅茶(チャイ)を出前するサービスを行っている人

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( 翻訳者:田林 玲 )
( 記事ID:2459 )