Taha AKYOL コラム:ギュル外相のイラン・ミッション(Milliyet紙)
2006年06月26日付 Milliyet 紙

アブドゥッラー・ギュル外務大臣のイラン訪問の目的は「核危機」の解決のため、西洋諸国とイランとの話し合いを始めさせること、つまり、欧州がイランに示した「ウィーン核問題包括提案」について関係者を話し合いの席に着かせることである。
ギュル外相がイランに出発する前、私は彼と短時間話をする機会があった。見たところ、あまり多くを語りたくないようであったし、今回の訪問が注目されることも避けたいという様子であった。
「今回の任務を表立った形で進めたくはない。関係する双方の立場の世論を刺激することなく、冷静かつ理性的に事を運ばねばならない」とギュル外相は語った。
このため、ギュル外相はアメリカ、ロシア、ドイツの外相や、EUのソラナ共通外交・安全保障上級代表と行った会談の内容について全く明らかにしなかった。だが彼らがギュルに今回のミッションを引き受けるよう強く要請したことは、周知の事実である。
それというのも、イラクに話し合いの席に着くよう説得できる唯一の国がトルコだからである。ギュル外相が、レースを編むような細かさで今日まで波風立てずに念入りに進めてきた外交プロセスもまた、彼が今回の極めて重要な任務を遂行できる唯一の外務大臣であることを示した。彼の名は、欧州でもイランでも敬意と信頼を勝ち得ている。

■もし二隻のタンカーが沈没したら・・・・

私との話の中で、ギュル外相は自身のイラン訪問が注目されることを避ける一方で、イランとの間で起こっている核問題の重大さを強調した。
「ペルシャ湾で二隻のタンカーが沈没したら、原油価格はどこまで跳ね上がるだろうか。世界経済はどうなるだろう。そうです。考えてみてください」と述べた。
世界で最も厄介な問題はすべてトルコの周囲で起こっている。イラク、イラン、シリア、パレスチナ... 石油問題や政治危機、またイスラムと西洋との衝突によって、中東全体が21世紀に汚名を残すだろう。
トルコはこうした問題により最も大きな被害を被っている国である。かつ、これらの問題において、当事者双方に信頼感を与えることができれば、解決へ向けて最も有力な働きができる国でもある。イラクではスンナ派を説得し、パレスチナ問題では敵対する双方と信頼ある関係を築き、イランに話し合いの席に着くよう説得することになったときに最初に名が挙がる国こそがトルコなのだ。
欧州が示した「ウィーン核問題包括提案」をイランがすぐに拒否するだろうことを西洋諸国は熟知している。そうした事態を避けてイランに提案を検討するよう促すのがトルコの役目である。
トニー・ブレア英首相がエルドアン首相に電話をし、イラン問題でのトルコの努力に謝意を示したのには理由があるのだ。

■三大陸の中心

トルコが「三大陸の中心」に位置することは、リスクと可能性とを同時に生み出している。三大陸のどこかで問題が起これば、トルコにも影響が及ぶのだ。
湾岸戦争以降、イラク問題で一体どの国が最も被害を被っただろうか。今日、もし「ペルシャ湾で二隻のタンカーが沈没したら」最も被害を受けるのはどの国か。EU加盟候補国中でトルコほど緊張をもたらした国はあっただろうか。
もちろんトルコは、アメリカとの友好・同盟関係や、EU加盟プロセスをきちんと進めていかなければならない。
しかし、トルコは「西に目を向ける」ことで、自らの置かれた地理的条件が変わるわけではなかったのだ。中東はオスマン人にとって重要であったのと同じだけ、共和国にとっても重要であり、しっかりとした関係を築いていくことが必要なのは極めて明白である。
このような状況の中で、ギュル外相が引き受けたミッションで成功を収めることは、全て人にとっての大きな害悪を防ぎ、全ての人にとっての新たな可能性への扉を開くことになるはずだ。ヨーロッパ人に対してもトルコ抜きではできないということや、キプロス問題でゲリラの残党である(南キプロスの)パパドプロスに肩入れすることがどんなに大きな誤りであるかを示すことになる。
ギュル外相の前には、イランの後ワシントンへ、その後イラクへ、そして近隣諸国会議のために再びイランへの長い道が待っている。彼の成功は全ての人の利益になるであろう。

Tweet
シェア


現地の新聞はこちらから

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:堀ノ内夏子 )
( 記事ID:2820 )