Can Dündarコラム インターネットで広がる都市伝説(Milliyet紙)
2006年06月01日付 Milliyet 紙

母と子がイズミルのカルフールで買物をしている。
母が売り場のディスプレイを眺めている間に、数人がやってきて子どもにエーテルを嗅がせた。
失神した子どもを小脇に抱えて、「急病人だ!道を開けて」といいながら人ごみを駆け抜け、警備員を抜き去る。1週間後、臓器を取られた子どもの遺体がスーパーのごみ捨て場に置き去りにされていたという。

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またイズミルで、ある女性がガーズィエミールのキパ〔訳注:イズミルで展開している大手スーパーマーケット・チェーン〕に行った。オードトワレの売場を見ているとき、40歳台の男性が近づいてきた。「妻に香水を買ってやりたいので、選ぶのを手伝ってくれませんか」と言って、持っていた瓶を嗅がせた。女性は気を失った。男は「妻が倒れた」と叫んで女性を抱えて外へ出た。
女性の行方は杳として知れないらしい。

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バーで知り合った男性の家に行った若い女性が、朝(どうにか死なずに)氷がたくさん入った浴槽で目覚めた。手で体をさぐってみたところ、縫い跡に気付いた。そばにあったメモにはこう書かれていたという。「腎臓はもらった」。

またしてもイズミルで、25日前、6歳の子どもがごみ捨て場で袋詰めの状態で見つかった。もちろん内臓は抜き取られていたらしい。

先週の火曜日、ヤマンラルで4人の子どもが学校の休み時間中にいなくなった。臓器マフィアが黒い車で辺りをうろついていた。エーゲ海地方では、行方不明になった子どもの情報提供を呼びかけるビラが手渡しで配られているという。

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インターネットで最近ウイルスのような速さで広まっているニュースはこういったものである。一般に、メールを受け取って流す人は「マスコミは何をさぼっているんだ」などという警告文もつけたりする。うわさがバーチャルな空間で広まるや、恐ろしい姿をとるようになる。
それはかまわないが、これらの話は事実なのだろうか。
休み時間中に4人の子どもが消えたら、誰かが気付かないものだろうか。
家族は黙っているだろうか。警察やマスコミは動き出さないのだろうか。

昨日、メールで名前が出たイズミルのカルフールやガーズィエミールのキパの責任者と話す機会があった。これらの店には電話での問い合わせが相次いでいるらしい。この責任者たちは絶対に、うわさの事件について全く知らない。

ドアン報道通信社のイズミル支局は、アリーアー郡の長、ティレ警察署長、ウシャク警察署長代理など関係機関に取材を行った。「うわさは全くもって根拠のないもの」という回答を得た。イズミル警察は、「そのような通報はありません。落ち着いてください」と声明を発表した。

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九月九日大学臓器移植コーディネーターのチティム・ドントルに聞いてみた。彼も困惑していた。うわさが広がるとすぐエーゲ海地方の臓器移植コーディネーター全員に電話をしたが、そのような連絡は誰も受けていないということだった。
「うわさで説明されていることは、完全に空想の産物です」とドントルは言った。

臓器移植を行うには、脳死状態であることが必要だ。しかし脳死状態とは、ICUでほんの一時ようやく確保される状態である。さらに、臓器を取り出すためには移植医が必要だ。そのうえ、心臓は4時間以内、肝臓は12時間以内、腎臓は48時間以内に移植することが絶対条件である。その間も臓器は特別な保存液に漬けておかなければならない。
「この種のうわさは我々が行っている臓器提供キャンペーンにも大きな打撃を与える」とドントルは言う。

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情報により速く簡単にアクセスするために、インターネットは天国のような環境を保証してくれる。しかし残念ながら、インターネットは同時に、うわさや騒動やムダ話をあっという間に流布させ、社会をパニックに陥れる道具にもなってしまう。メールボックスに入った情報を全て、検証もせずに垂れ流してしまうことで、我々もこのパニックに加担し、道を踏み外すことになる。
つまり、想像力の豊かな誰かが書いた物語が、ものの2日で人々を混乱に陥れることも可能になってしまっているのである。
もちろん、知識を持つことは大切だ。しかし、あまり安易に情報に飛びつかないように心がけたい。


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( 翻訳者:宇野陽子 )
( 記事ID:2628 )