Yasemin Çongarコラム エルドアンが望むブッシュ大統領との会談:米政府の思惑は(Milliyet紙)
2006年06月05日付 Milliyet 紙

レジェプ・タイイプ・エルドアン首相のブッシュ大統領に対する会談申し入れを検討しているアメリカの政府関係者は、心の中でこんなことを自問しているだろう。「この会談がトルコで内政問題にならないようにするにはどうしたらいいのだろう」と。 
ご存知のように、エルドアンは5月半ばにウイーンからバリに向かう際に行なった会見で、「帰国次第アメリカへ行こうと考えている。会談を申し込む予定だ」と述べ、この緊急会談はイラン問題の話し合いのために極めて重要であると話した。
 アメリカの政府関係者に送ったメッセージもほぼ同じ内容だった。エルドアンは「イランとアメリカの間で、直接的に仲裁役は果たせないとしても、間接的に両者の対話を手助けし、イラン核問題の解決を外交面で図っていきたい」との意向をワシントンに伝えた。
 しかしその後の3週間に起きたことが、エルドアン・ブッシュ会談の議題や任務をも根本的に変化させてしまった。すでにイランでは異なるプロセスが始まっているし、行政裁判所襲撃事件後、ワシントンはトルコに関する政策一つ行うにも、国内のバランスを計算に入れる必要をますます感じている。

■内政?外交?
アメリカが先週発表した重要な政治変化は、イラン政府に核兵器開発を断念させるよう外交努力を行う余地を増大させた。ブッシュ政権は国連安保理のアメリカ以外の常任理事国4カ国やドイツと共に新たな共同行動に出た。6カ国の共同提案をイランに受け容れさせるため、EUも作戦に加わっている。イラン政府のウラン保有量拡大を阻止しつつ、ヨーロッパのトロイカ外交にアメリカまで加わって、話し合いの席に着くよう国際的な圧力を強めているのである。
こうした事態の進展は、トルコを蚊帳の外に置くことにはならない。トルコ政府は、イラン政府が話し合いから背を向けることを防ぐために説得を行なうべきである。すでに、エルドアンがブッシュに「イランと我々の間に対話を持たせ、イランを外交に向かわせてください」というメッセージを送るようなタイミングではなくなった。しかしトルコは、イラン政府に働きかけて外交的解決に向かう方法に貢献することはできる。
 イラン問題の状況変化から「エルドアンがホワイトハウスに行く必要性はなくなった」と考えるのは誤りである。イラン、イラク、対テロ闘争、パレスチナ、エネルギー保障、EU、キプロス、エーゲ海、南コーカサス、アフガニスタン、二国間問題等々、ブッシュとエルドアンが話し合うべき問題は実にたくさんある。
 ワシントンの担当者が考えていることも、そもそも「話し合うべき問題がない」ということではない。彼らの頭にあるのは、ブッシュ・エルドアン会談が、トルコにおけるあらゆる重要課題よりも優先して、国内政治向けの「大統領執務室写真」として利用されることへの懸念である。
 トルコの世論においてブッシュ政権に対する根強い反感があるにもかかわらず、ブッシュ大統領と「大統領執務室」で写真を撮ることは、トルコの政治家としてある種の政権の証のように考えられている。このことをアメリカの政府関係者と話していると、「逆説的ではないか」と疑問をぶつけられる。
 確かに逆説的ではある。しかし現代の唯一の逆説というわけでもなかろう。その関係者にこう話してみる。
「それではあなたがたは、これまでのエルドアンのホワイトハウス訪問によって、トルコの内政に影響を与えたことはなかったでしょうか。エルドアンがまだ国会議員ですらなかったときに首相のような重要人物として扱ったり、大統領府で任命を受けているわけではないエミネ・エルドアン夫人をホワイトハウスのお茶会に招待したりしたことは、国内政治向けのメッセージではないというのでしょうか。それらのことと今回のことは何が違うのでしょうか。」
 最近、私が似たような質問をしたアメリカの政府関係者から聞いた答はだいたい次のようなものだった。
 アメリカはトルコの政治的緊張を懸念している。緊張を招くような役割はトルコに望んでいない。ワシントンは一方で、公正発展党政権と最高幹部クラスの対話を持ち続け、二国間及び地域的協力について「ポジティヴな課題」を進めて行こうと考えている。しかし他方では、トルコ大統領や参謀総長、主要な野党の党首、実業界やメディア界との関係が悪化している政治指導者に手を差し伸べているように思われることには躊躇がある。

■会談にまつわるロビー活動
こうした躊躇があるからといって、エルドアンとは会談しないということにはならない。ブッシュ政権の内部には、会談を快く思わない人もいるが、「トルコの頼みは断れない」と考える人もいるのである。そのうえワシントンは、「タカ派」が「外交派」に対し弱体化しているという状況にある。イランと話し合いのテーブルに着こうという提案も、コンドリーザ・ライスがリードする「外交派」の尽力で、ディック・チェイニーやドナルド・ラムズフェルドといった「タカ派」のブーイングにもかかわらず提起されたものである。

最後に一言付け加えたい。エルドアンについてワシントンから上がっている様々な意見は、トルコからアメリカに耳打ちされる言葉と同様に無意味だ。ホワイトハウスの会談実現のためにロビー活動を行なう人々と同じくらい、「この段階でエルドアンを呼ぶのは大きな誤りだ。トルコに悪影響を与える」というメッセージをワシントンに送るトルコ人もいる。これもアメリカにとっては無意味なおまけなのである。



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( 翻訳者:宇野陽子 )
( 記事ID:2631 )