「テヘラン資産家女性連続殺人事件」の裁判始まる:主犯の男と共犯の女、責任をなすり合い ハムシャフリー紙
2006年07月06日付 Hamshahri 紙


2006年7月6日付ハムシャフリー紙事件面

【事件部:マフディーイェ・モスタファーイー】世間を騒がせた《テヘラン資産家女性連続殺人事件》の主犯格として起訴された被告は、裁判の席上、殺害は全て共犯の若い女によって行われたものであり、自らは殺害には何ら関与していないと主張した。

 マスコミが「テヘラン資産家女性連続殺害犯」として大きく取り上げた若い男女をめぐる裁判が、昨日朝開かれた。裁判が開かれたテヘラン州刑事裁判所公開法廷は、昨年もっとも話題を呼んだテヘランでの事件の容疑者らに対する裁判を傍聴しようと駆けつけた人々で、一杯になった。

 主犯として起訴されたアリー・レザーが入廷すると、殺害された3被害者の遺族らからは、「人殺し」との叫び声とともに、被告に対してキサース刑(同害報復刑)を求める声が上がった。そして共犯として起訴されたアアザムが入廷すると、被害者遺族らの興奮と抗議の声はさらに高まり、裁判所の職員らが騒ぎを収める事態となった。

 アズィーズ・モハンマディー裁判長とその他4名の裁判官らによって裁判が始まると、まずテヘラン検察庁の検事が法廷に立ち、起訴状を朗読した。ヘイダリー検事は起訴状の中で、事件は公衆の感情を著しく傷つけたと指摘した上で、ファラフナーズさん、メフナーズさん、ショフレさんの3名の無実の女性が連続して、両被告によって強盗殺害された事件について、詳細を述べた。

 起訴状によると、最初の殺害はアーザル月26日〔2005年12月17日〕に起きた。ガーンディー通り第103分署の警官らの報告によると、資産家の女性ファラフナーズさんが自宅寝室にて手と足を赤いひもで縛られた状態で殺害された。第2の殺害はデイ月6日〔2005年12月27日〕に発生した。通報で現場に駆けつけた捜査官らは、メフナーズさんが先の事件と同様の方法で、手と足を赤いひもで縛られた状態で殺害されているのを発見した。

 第3の殺害は、デイ月11日〔2006年1月1日〕に発生した。この事件でも、ショフレさんが、まったく同様の方法で殺害されていた。これら3件の類似の殺人事件が発生したことを受け、アスガルザーデ予審判事より広範な捜査が開始された。トラヴェラーズ・チェックがアフリカ通りで現金化されていたことが糸口となって、アリー・レザーが容疑者として浮上した。

 さらに捜査を続けた結果、殺人事件の最初の被害者であったファラフナーズさん宅への最後の電話連絡が、アリー・レザーの自宅のあるアフリカ通りよりかけられていることが判明した。取り調べの中でアリー・レザーは、当時大学生の女アアザムと共謀し、殺人を犯したことを自白、殺害動機について次のように語った。「3ヶ月前より金銭的な問題から、盗みを働くことを決意した。新聞紙上で持ち家の売却を広告していた家を発見し、アアザムと共謀して、家の購入を口実にして家主に近づいた。家主の女性が単身であることを確認した上で、窃盗を行い、身元がばれぬよう、ナイフで刺殺した」。

 検事は続けて、共犯の被告が捜査・取り調べのさまざまな段階で行った明快な自供について述べ、殺害の詳細を説明した上で、両被告に対して法に則った刑罰を裁判官に求めた。

 ▼ アリー・レザー:「殺害の実行犯はアアザムだ。私は誰も殺していない」

 事件の被害者の遺族からキサース刑が要求されると、青ざめた様子の主犯の被告は席を立って、冷静さを必死に保ちながら、裁判官らに向けて「私は誰も殺してはいない。起訴事実を否認する。アアザムのために殺害を認めただけだ。私は強制されたんだ」と訴えた。

 アリー・レザーは、「どんなことを理由に強制されたのか」との裁判官らの問いに対して、「アアザムは1年間私に圧力を加えていたんだ。彼女は私の人生をめちゃくちゃにするような写真やら映像やらを撮っていたんだ」と答えた。アリー・レザーは、ことの詳細につき、裁判官に向けて次のように述べた。「自分の生活を守るために、アアザムに協力しただけだ。人をあやめるなど、予定になかった。最初の殺害は、〔私にとって〕完全に不慮の出来事だったんだ」。

 アリー・レザーはさらに、「私は冷静な人間だ。私は女性の家に8回も一人で行った」と述べた上で、「私はアアザムに殺人を持ちかけたりなどしていない。アアザムは2年間にわたり、私を苦しめてきた。100回殺されるよりつらいことだった。彼女は、私にかつて妻がいたことを知っていて、そのことで私を脅迫したんだ。私はみんなのために、役を演じることを強いられていたんだ」と訴えた。

 彼は殺害方法について詳述し、法廷の中で殺害現場を一部再現した上で、「私は被害者の手足を縛っただけだ。アアザムが被害者に致命傷を負わせたんだ」と再度主張した。しかしアリー・レザーのこの主張は、殺された被害者に加えられた傷口と一致していなかったため、裁判官はアリー・レザーの主張は矛盾していると指摘した上で、被告に対し真実を話すよう求めた。

 もしアアザムが殺害の実行犯だとすれば、ではなぜ殺害の際に彼女の衣服に血痕が付着していないのかと問い詰められると、アリー・レザーは「アアザムはその時コートを着ていたから、血の付着した服がないだけだ」と主張した。

 ▼ 「私はアリー・レザーの最初の犠牲者」

 主犯の被告及び彼の弁護士による弁明の後、アアザムが震えた足取りで、法廷に歩み出た。彼女は、「アリー・レザーの話にショックを受けた」と述べた上で、殺害を幇助したとの罪状を否認し、次のように述べた。「罪を犯したことは分かっています。罰を受けねばならないということも。しかし、殺害にはまったく関与していません。〔事件の〕9ヶ月前に、アリー・レザーは破産しました。彼はどうしようもない男で、手に入れた収入できちんと生活をやりくりできるような人間ではありませんでした。彼は私を騙して、こんなことを言ったんです。『借金で苦しい。俺の人生、もうだめになりそうだ』って。私は彼のことが好きだったので、彼を助けてあげたいって、そんな風に思っていたんです」。

 若い女は、さらに次のように続けた。「アリー・レザーは私に、盗みに加わらないかって誘ってきました。その時、彼は私に『盗みの際、もしかしたら人をあやめることになるかもしれない』って言っていました。私はその時点で、協力は断りました。でも彼は、何度も電話をかけてきて、私を騙したんです。だから、私こそ彼の最初の犠牲者なんです。〔中略〕アリー・レザーはいつも、『これで、お前の将来も安心だ』と私に言ってました」。

 若い女はさらに次のように続けた。「3件の殺人で、私がやったことといえば、殺された被害者の手足を縛っただけなんです。人が殺されたなんてことは、知りませんでした。2件目の殺害の際、アリー・レザーの衣服が血にまみれていたのをみて、彼に『何をしたの』と訊きました。すると彼は、『抵抗しようとしたんで、ちょっと怪我させただけだよ』って言ってたんです」。

 「〔事件について報じた〕新聞を読んだだろう。そもそもなぜ殺人が行われたことを知っておきながら、二件目の犯罪にも参加したのか」との裁判官の質問に対し、アアザムは「裁判官、私は新聞を読んでいなかったんです。朝はレストランで働いていたので、新聞を読む暇なんてなかったんです。罪は認めます。私がこの男についていかなければ、彼もこんな罪深い犯罪など犯さなかっただろうってことも分かっています」と答えた。

 アアザムの弁明の後、公開裁判は終了し、非公開の裁判が始まった。本件に関する判決は、しかる後に出される予定だ。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:2955 )