レバノン志願兵登録の現場レポート シャルグ紙
2006年07月30日付 Sharq 紙

2006年7月30日付シャルグ紙4面

【バーバク・メフディーザーデ】「エフード・オルメルト氏よ、あなたはイランを攻撃するなどと公言していたが、現在レバノンのヒズブッラーやパレスチナの前に屈服を余儀なくされているのは、どういうわけか?あなたは負けたのではないか?」。

 マイクを手に、ラシュト市の市庁舎前広場に立ち、このようにイスラエルの首相に向けて演説を行っていたのは、若い男性であった。彼のよく通る声は、《エステシュハーディユーン(殉教志願者)》司令部が市の中心広場に据え付けた強力な拡声器を通して、鮮明に耳に入った。そしてその声とともに流れていたのは、軍の行進曲、アラビア語のハマースの歌、《アッラーホ・アクバル(神は偉大なり)》、《ラーイラーハ・イッラッラー(アッラーの他に神はなし)》の掛け声であった。また、レバノン・ヒズブッラーのセイエド・ハサン・ナスルッラー総書記の写真やレバノンやパレスチナの戦士たち、そしてもちろんイスラエルによるレバノン侵略の様子を描いたイメージが、脇に飾られていた。

 ▼ レバノンへの志願兵の派遣

 ラシュト市の市庁舎前広場の周りは、彼らの熱狂的な声が鳴り響き、旗がたなびいていた。また、市庁舎の前には巨大な幕が取り付けられていた。ラシュト市の市庁舎の表玄関のすぐ脇には、三台の机が置かれ、またハマースの歌を流すための音響設備が一台、戦闘の様子を写し出すための映像装置が一台、置かれていた。またこれらの机の横には、巨大な幕が置かれ、そこには多くの署名が記載されていた。

 この巨大な幕は、ギーラーン市民がレバノン・ヒズブッラーの運動を支持することを表明し、また国連事務局長に対しレバノン・ヒズブッラーを支援するよう求めるための、署名付きの連判状なのであった。連判状をみる限り、多くの市民が署名に参加したことが窺えた。このことは、人々が署名をするために長蛇の列を作っていた様子からも、容易に分かった。

 また少しいったところには、人々が集まり、ペンを片手に、何かを紙に書こうとしている姿もみられた。レバノンに派遣される志願兵のための登録用紙だ。そこは、「レバノン志願兵派遣」のための登録本部だったのでり、用紙に必要事項を書き込んでいたのは、熱狂的なレバノン・ヒズブッラーの支持者たちだったのだ。彼らは恐らく、「エステシュハーディユーン(殉教志願者)国際センター」と名乗るこのセンターを介して、レバノンなどの戦闘地域に赴かんとしていた。

 登録用紙には、必要事項として、いくつかの質問が書かれていた。「アラビア語の知識はあるか」、「どのような武器を扱えるか」、「どのような領域で、レバノンの同胞たちを支援することが可能か」などの質問である。これらの質問、そしてそれに対して志願者たちが与えたさまざまな回答をみて、私はこの本部の責任者にインタビューを申し込む決意をした。

 私は年齢約35歳の男性を紹介してもらい、インタビューを行った。彼は当初、本名を名乗ることを躊躇していたが、最終的には自らを「エステシュハーディユーン(殉教志願者)国際センター」の「ハッダーディー」であると述べた。彼が主張するには、このセンターは政府機関ではまったくなく、NGOであるとのことであった。

 ▼ 政府機関ではない

 彼らは市庁舎の前に集まっていた。ハッダーディー氏はこの場所に本部を設置したことについて、「ここは人通りも多いので、この場所に集まることにしたまでだ。政府や市役所とは何の関係もない」と語った。彼らはさらに、この場所に本部を設置したことについて、市役所や市関係者とは何の取り決めもしていないと述べた。そこにある物はすべて自らの私有物であり、政府機関から借り受けた物などないとのことであった。彼はまた、バスィージ〔*革命防衛隊傘下の民兵組織〕のような機関とも何の協力関係もなく、「われわれはバスィージとは別であり、まったく独立に全国で活動を行い、志願者たちの登録をしている」と述べた。

 志願者登録のためには、18歳以上であること、という条件があるだけであった。「住所、その他テヘランから連絡を取ることができる連絡先」以外には、何の書類も必要とされていない。

 ハッダーディー氏に「軍関係組織は、このセンターの活動についてどう考えているのか」と質問してみた。彼は「彼らがどう考えているかは、われわれよりもあなた方のほうがよく分かっているだろう。これらの人々の中に入って、登録した人々から統計でも集めてみてはどうだ」と述べた。

 ▼ レバノンには人員を送ることしか考えていない

 ところで、この組織はレバノンに赴く際、どのような支援をレバノンの戦士たちに提供するつもりなのだろうか。ハッダーディー氏はこの質問に対し、「レバノン・ヒズブッラーから支援の要請があった場合には、われわれは人員を送ることになるだろう」と答えた。恐らくレバノンの戦士たちへの支援として考えられているのは、このような種類のものだけなのだろう。実際、支援金や支援物資は集めておらず、志願兵らを登録して一定期間訓練を施した後に、彼らを訓練された人員としてレバノンに派遣することしか考えていない、とハッダーディー氏も認めている。

 それでは、どのような目的でこれらの人員をレバノンに派遣するつもりなのだろうか。責任者であるハッダーディー氏はこの質問に対して、「志願者たちが望むなら、彼らを戦地に派遣するつもりだ。しかし、これらの人員は宣伝活動や訓練のために、レバノンに派遣されることもありうる」と答えた。

 これまでのところ、レバノンに派遣された人員はいないが、その理由についてハッダーディー氏は、「関係する責任者」との調整が終わっていないことを挙げた。彼はまた、ヒズブッラーへの支援は人員の派遣に限っており、「これまでのところ、レバノンの戦士たちに軍需品や武器を送ってはいない」と強調した。

 ハッダーディー氏は最後に、目を見張るほど多くの人々が自らの活動に賛同してくれたとしたが、具体的な志願者数については、答えてはくれなかった。彼は「イラン国営放送に対して」すら、志願者数を明かしてはいないとのことで、「連判状に書かれた署名をみれば、人々がどれだけ賛同してくれているのか分かるだろう」とだけ述べた。

 同氏は組織の目的について、「クルアーンの節とイマームたちの言行にもとづいて、ジハード〔の精神〕を守ること」とした上で、「レバノンのムスリム人民に対する不正義がまかり通っている。我らが同胞たちに支援を手を差し伸べることは、当然の義務であろう」と述べた。

 ▼ アナン国連事務局長への連判状

 「国連事務局長に宛てたギーラーン州市民の連判状本文」と題された声明文が、通りを往来する人々に配られていた。同声明文はコフィー・アナン事務局長に対し、「国連の本来の責務の一つは、国連憲章にも述べられている通り、世界の平和と安全を守り、戦闘の発生を防ぐことにある」と呼びかけた上で、次のように付け加えている。

 「数年にもおよぶ占領地パレスチナをめぐる危機、そして最近のレバノン危機に際して、国連はこれまで自らの責務を果たしてこなかった。したがって、われわれ下記署名者は、国連が公正さを欠く形で沈黙を続けていることを非難し、またパレスチナ及びレバノンの無防備で抑圧された人民を全面的に支持することを表明するとともに、すべての国際機関に対して、イスラエルの野蛮なる体制と犯罪者アメリカを掣肘しつつ、中東危機に対して公正な視点を保ち、暴力行為を終わらせるよう求める」。

 ★ ★ ★

 行進曲はいまだ市中央広場に鳴り響き、何が起きているのか興味津々の人々や、レバノンに馳せ参じることを希望する志願者らの列は大きくなるばかりである。市中央広場は、一寸の余地も無いほど人でごった返し、往来にも支障をきたすほどだ。

 突然恐ろしい爆裂音が鳴る。遠くにいる人々すら驚くような音だ。心を締めつけるような子どもの泣き叫ぶ声が聞こえる。すると、若い男性が拡声器を使って次のように叫ぶ声が聞こえてきた。「殉教者を敬うラシュトの民よ、たった今届いたニュースに注目されたい。神のお力とお隠れイマームの祈り、そしてあなた方の祈願のおかげで、神の党(ヒズブッラー)の共同体は多くのシオニストどもを奈落の底に突き落とすことに成功した」。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:3147 )