ボスフォラス海峡のトンネル工事進む~マルマライ・プロジェクトを現場レポート(Milliyet紙)
2006年08月21日付 Milliyet 紙

イスタンブルのアジア岸とヨーロッパ岸を(鉄道で)繋ぐマルマライ・プロジェクトが急ピッチで進んでいる。深さ34メートルの海底で、うだるような暑さにもかかわらず行われているウスキュダルのトンネル工事は、プロジェクトの壮大さをうかがわせる。幅18メートル、高さ16メートルのトンネルは、底部と直径が大きいため、古典的な方法で掘削されている。毎日、何十台もの作業機械が、何百トンもの土を地表へと運んでいる。細心の注意を払って進められている掘削だが、一番の恐怖は、万一起こるかもしれない落盤である。そのため地下に配置された60台のセンサーを通して、どんな小さな地滑りでも瞬時に感知できるよう対策がとられている。

工事は、日本の大成建設とトルコのガマ社、ヌロル社により進められている。現在、全長130メートルのウスキュダル駅の工事の40%が完了している。12月にも最新鋭の掘削機が投入され、1カ月で2250メートル掘り進むことができるようになる予定。(これら)世界の巨大建設企業があらたに導入した1台1200万ドルのトンネル掘削機5台は、1日に15メートルずつトンネルを掘ると同時に、即座に(壁面を)コンクリートで固めている。
アジア側の長さ19キロメートルの地下部分が完成した後、郊外鉄道の改良に着手される。その後、トゥズラ造船所で建造中の沈埋函(ちんまいかん)※が、ボスフォラス海峡まで洋上を引かれて運ばれてくる。初のトンネル沈設作業は、10月か11月に行われる見込み。
この間、アジア側のカドゥキョイ-ゲブゼ、ヨーロッパ側のスィルケジ-ハルカル間では、鉄道の運行が休止される。この区間の古いレールを取り払い、3本のレールを敷設する。線路の1つは都市間列車や国際列車に充てられる。これらの列車は(市内線の)乗客が少ない時間帯に通される。貨物列車は真夜中に運行される。

■ボスフォラス海峡を4分で横断

海底の地形の不規則さと、ボスフォラス海峡トンネル建設の困難さから、世界中のエンジニアの目がマルマライ・プロジェクトに注がれている。有名なドキュメンタリー番組であるディスカバリー・チャンネルの取材クルーは、しばしばイスタンブルを訪れて作業の様子を撮影している。
マルマライ・プロジェクトは2010年の開業を予定している。マルマライ・プロジェクトにとって、26億ドルの借款を外国から得ることは問題とはならなかったが、考古学的に重要な遺跡をどうするかが唯一の障害となった。
路線の総延長は(ゲブゼ-ハルカル間)約76キロメートルとなる。ボスフォラス海峡トンネルを通過して1時間に15万人の旅客を運ぶことができる。鉄道便は5分に1本運行される。スィルケジ-ウスキュダル間の所要時間は4分、スィルケジからカドゥキョイへも6分で行くことが可能となる。ゲブゼ-ハルカル間の所要時間は105分となる。

■ヨーロッパ岸からアジア岸へ

マルマライ・プロジェクトは、イスタンブルのボスフォラス海峡の両岸にある鉄道線を、海底トンネルを通る鉄道で繋ぐものである。カズルチェシュメで地下に入る鉄道は、新地下駅のイェニカプ、スィルケジを進む。ボスフォラス海峡の下を通り、新地下駅ウスキュダルに達した後、ソウトルチェシュメで再び地表に出る。プロジェクトが完成すると、ヨーロッパ側のハルカルと、アジア側のゲブゼが、1つの鉄道システムで結ばれる。


※沈埋函:トンネルを複数に分割した筒状の函(はこ)。陸上で沈埋函を製作し、海底に沈めて接合することによりトンネルを完成させる沈埋工法で用いられる。(参考:国土交通省九州地方整備局 http://www.kitaqport.go.jp/4-wakato.html)
※マルマライ・プロジェクトの概要(土木学会):http://www.jsce.or.jp/committee/rm/News/news7/bosphorus.pdf

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( 翻訳者:坂 泉穂 )
( 記事ID:3315 )