Ismet Berkan コラム:国民教育省「100冊の基本図書」、中身の質をどう高めるか(Radikal紙)
2006年08月24日付 Radikal 紙

朝、ヒュセイン・チェリキ国民教育相から電話があった。本紙が連日見出しに取り上げた、国民教育省の発表した「100冊の基本図書」の各出版社から出されたバージョンに関する記事について議論した。チェリキ大臣は、これらの本が「国のお墨付き」あるいは「教育省のお墨付き」と見なされることに非常にご立腹だ。「でも先生、」私は言った。「国民教育省推奨と書かれていますよ?」

実際、ある本が「国民教育省推奨」を名乗るためには、(同省の)教練・指導委員会のチェックを受け、この委員会から「推奨に値する」と認められなければならない。にもかかわらず、市場で売られている「100冊の基本図書」のどれ1つの版として、この公の推奨を得てはいないのだ。出版社は、ある意味でもしかしたら消費者を欺いているのかもしれない。

チェリキ大臣は、市場に出回っている本をチェックすることは不可能だと言う。私も大臣に同意した。「そもそもあなた方マスコミが一般市民の代わりにチェックしているではないか」と大臣。そう、もともと我々が記事を通してしたことはこれなのだ。質の悪い、イデオロギー的な偏りのある翻訳について、保護者に注意を促したのだ。
大臣と、これらの本にしばしば登場する「アッラー」という言葉についても話した。「後生だから(Allah askina)」「さようなら(Allaha ismarladik)」「おやすみなさい(Allah rahatlik versin)」のような慣用句を翻訳に用いることには異論がないことを大臣にも伝えた。私が反対するのは、キリスト教徒の登場人物がおのおのイスラム教徒のように話すことであり、翻訳によってそうさせられていることである。

慣用句辞典やなぞなぞ辞典のような、この数日間我々が取り上げた隠語を超える悪言を載せた辞書の問題でも、チェリキ大臣の考えは極めて明快だ。
「では、」大臣は言う。「(よくない言い方だが)悪言ではない慣用句の例を挙げよう。たとえば『真実を言う人を9つの村から追い出す(=村八分)』はどうだろう。私ならこの表現も小学校に薦める辞書に載せていいとは言えない。子どもたちに真実を言わないことが1つの徳だとか、苦しみから救われる1つの方法であるという風に教えることはできない」。
そう、トルコ語や我々の文化には、このような格言がある。「マイナスの意味を持つ慣用句」とでも言えようか。こうした格言は、我々の文化の豊かさを示す一方で、残念ながら悪い習慣を助長するものにもなっている。
あるいは人種差別的な慣用句や表現もまたある。「ジプシーが踊り、クルド人が楽器をひく(またはジプシーが楽器をひき、クルド人が踊る=事態の収拾がつかないさま、てんでんばらばら)」という言葉がその典型だ。こういったたぐいの語句を辞書に載せ続けることに、誰に対する何の得があるというのか。

***
私はこの「100冊の基本図書」のリストが発表されて以来、ずっと同じことを考えている。狙い自体は大変好ましく、少なくとも何もしないよりはいい。
しかし、国民教育省が本のタイトルを発表しただけでさえ、商売にうまく利用されるのではないかという懸念が生じている。中身がカットされたり、おかしなトルコ語に翻訳されたり、脚色されている。教育省が望む望まないにかかわらず、ビジネスチャンスを生んだことは明らかだ。さらにこれを防ぐすべもなく、どのみち誰かがお金をもうけることになるだろう。

国民教育省は、存命の著者や訳者の本を推薦することを、(本を選ぶ)そのときにはよい方法と見なさなかったようだ。その理由が何であれ、この決定は適当ではなかったと思う。
その代わり、専門の委員会が皆が納得できる著者や人物の名を挙げたり、出版社のリストさえ用意することで、子どもたちに読ませる作品の質を維持することができたはずだ。子どもたちにトルコと外国の古典を質の高い翻訳と質の高い現代のトルコ語で読ませ、さらに同時代のトルコの文学や児童文学に触れさせることだってできたはずだ。

国民教育省が評価できる取り組みをしていることについては何の疑いもない。だが、とられた手立ては残念ながら作品の質の問題を生み出している。この質を高めることもまた、教育省の役目である。
教育省がこの問題についても一刻も早く解決に向けて動き出すよう願っている。


※関連記事:涜神もあればイスラーム的用語もある、本紙が西洋文学を精査(2006年8月20日、Radikal紙)http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/newsdata/News2006820_3301.html
※「100冊の基本図書」のリストはこちら(トルコ語):http://www.meb.gov.tr/duyurular/duyurular/100TemelEser/100TemelEser.htm

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:3341 )