Semih Idiz コラム:「政争の具」と化している派兵問題、まずは自国のポジションを定めよ(Milliyet紙)
2006年09月04日付 Milliyet 紙

レバノンへの派兵をめぐって我が国で続いている議論の大半は、中東での状況、あるいは中東で生じた新しいバランスについてではない。これほど重大な問題をまたも国内政治に埋没させた状態にある。皆この問題を利用して相手をおとしいれようと懸命だ。明日の議会での派兵許諾書をめぐる審議でも同じことが繰り返されるだろう。

状況をはっきりさせるために、一歩引いて全体像を見てみよう。セゼル大統領は、派兵問題における苦言によって「PKK(クルド労働者党)に対抗して我々に誰が援助しているというのか。(していないのだから)他国を助けないでおこう」という考えを世間に示している。つまり一種の“国家的な憤り”の表明が発言の趣旨である。
元大使が党の要職に就いているにもかかわらず、(野党の)共和人民党もこの問題に対して有効な議論の枠組みを示せていない。単に与党を攻撃する目的で、関連する国連決議の文章のあら探しをして自分たちに有利な材料を探し出すことに余念がない。

■政治的混乱がある

「国民主義者」と「民族主義者」の勢力は、政府がトルコを再度「大国の帝国主義的なゲーム」の道具にしようとしていると主張している。この問題の持つデリケートさを逆手にとらえて、「状況が厳しいのなら(PKKの拠点のある)カンディル山に軍隊を派遣しろ」と挑発している。「宗教主義者」について言えば、彼らもまたレバノンへの派兵を「ムスリムに敵対してアメリカとイスラエルの下働きをすること」ととらえている。これにも内政上のもくろみの要素があることは明白だ。政府は、世論の恐怖と“1を置いて3を得る”という欲求との間で身動きのとれない状態にある。全く説得的でない形で「我が軍が行けば、あれをしよう、それをしないでおこう」と言いつつ、野党も世論も鎮めようと(野党によれば欺こうと)している。
この国は、これほど重要かつ大きな影響のある任務に就こうとする前に、国内のこうした政治的な混乱状態を解決しておく必要がある。なぜならこの混乱を解決せずに任務に就けば、より困難な状況に陥りかねないからだ。

■トルコが派兵する必要はなくなるだろう

こうした理由により、(国連軍の)任務がどれだけ重要であろうと、トルコがこうした政治状況のもとで任務に就くことは健全ではないと考える。くだんの任務は、必要な場合には武器を使用することも含む、様々な危険を内包している。それにもかかわらず、イタリアはベイルートに軍隊を派遣した。イタリアの動きにフランスや他のEU諸国が追従している。イスラム諸国について言えば、インドネシアとマレーシアは派兵に意欲を持っていると見られている。一方で国連のコフィ・アナン事務総長は、数日前にシリアからヒズブッラーを支援しないことについて具体的な約束を取り付けたことを明らかにした。シリア政府もこのことを否定しなかった。湾岸諸国は、国連に対しあらゆる物流支援を行う準備があることを表明した。
要するに、最初の段階でのためらいにもかかわらず、「スープの塩になろう(全体のために力になろう)」という国の数は徐々に増えつつあるのだ。こうした成り行きによっても、そもそもトルコが派兵する必要はなくなるだろう。

■世界での自国のポジションを固めるべき

もちろん、トルコ軍が行かなかった場合、(国内は)今度は「チャンスが逃げた、いや逃げなかった」という議論と非難の応酬できっとあふれかえるだろう。これもまた、問題の別の側面である。中東で新たなバランスが出来上がったことは間違いない。では、これらのバランスの中で、トルコはどこに位置づけられるのだろうか?この問いの答えを見つける前に、我が国の世界におけるポジションが何なのか確定させなければならない。我々は一向にそれができていない。なぜなら国内での政争が一向にやまないからだ。世界は我々を、いつも通り無視して通り過ぎている。

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:3425 )