Fikret Bila コラム:トルコ軍から見たキプロス問題
2007年01月28日付 Milliyet 紙

陸軍司令官大将のイルケル・バシュブーが北キプロス・トルコ共和国(北キプロス)で行った演説は、トルコ国軍が現段階でキプロス問題をどのようにとらえているかを示すものである。

バシュブー大将が(演説で)置いた力点をたどると、一つの道筋が浮かんでくる。この道筋は、アナンプラン(※)の受け入れにもかかわらずその後に起こった事態が生みだした失望を指し示すと同様に、北キプロスに向けたメッセージも含んでいる。
北キプロス当局がトルコ政府の支援も受けて常に歩み寄るにもかかわらず、キプロス共和国(南キプロス)側が態度を変えないことや、互恵的関係の原則の機能不全は、参謀本部長のヤシャル・ビュユクアヌト大将も指摘した状況であった。

バシュブー大将の演説をこの観点から検討するならば、北キプロス当局と国際社会にいくつかの事柄を想起させたということができる。

■「国民的な、共通の問題」

バシュブー大将が国際社会と北キプロス当局の双方へ想起させた第1の事柄は、キプロス問題がトルコと北キプロスの「国民的な、共通の問題」であることだった。これは、キプロス問題において国際社会あるいは北キプロスが「トルコをないものと考えて」行動できないことを強調するものだ。

この事実の法的、政治的理由も列挙されている。バシュブー大将は、1960年8月16日に締結されたキプロス共和国の設立、保証および同盟条約に言及し、この条約が後見役の国としてのトルコに与えた権利と課した責務について論じている。

「共通問題」という点に力点を置く根拠はここから来ている。(バシュブー大将は)条約にも記されているように、トルコの責務の筆頭にキプロスのトルコ系住民の安全と保護を保障することがあることに触れながら、問題の「国民的」側面に注目している。バシュブー大将の与えたメッセージは、キプロス問題がトルコと北キプロスにとって「共通の、国民的」性格を有しているということだ...

■どちらのキプロス?

バシュブー大将が国際社会に与えたメッセージは、EUの一員である「キプロス共和国」はどちらのキプロスなのか?という問いにも潜んでいる。
陸軍司令官は、EUが全島を代表するという主張により加盟を承認した南キプロスが、1960年に建てられた2つの民族の共通の意思を反映した「キプロス共和国」ではないことを注視している。南キプロスがトルコ系キプロス人を代表していないことや、2つの民族の共通の意思なしに「キプロス共和国」の意思が形成されないことも強調している。

■分断状態

南キプロスが、特にEU加盟国となった後に島の「分断状態」の現実を変えることを目指したことが知られている。南キプロス当局が島の北側でも主権を承認させ、このようにして2つの領域、2つの社会、2つの民主主義の体制を打破することに努めたことは事実だ。南キプロス当局は、(自らが)島で唯一の主権であると主張している。この過程でトルコ系住民側も南キプロスの主権を認めるために大きな努力を払っている。このこともまた、南キプロス当局が正当かつ安定した、2つの主権国家に依拠した1つの連合国家という解決法にかなっていないことを示している。
バシュブー大将は、この事実にも力点を置いて注視している。分断状態が破られた場合、トルコ系キプロス人の将来が「抵当」に入れられることになると述べている。

バシュブー大将の演説は、問題の根を明らかにしつつ、「誰も自らをだまさない」必要があるというメッセージを伝えている。


(※)アナンプラン:国連のアナン事務総長がキプロス問題解決のため、2002年11月に南北キプロスに提示した、連邦制、大統領輪番制、非武装化などを内容とする包括的合意案。改訂後、2004年4月の南北キプロスでの住民投票の結果、南キプロスで反対多数により否決されとん座した。
参考:外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pko/unficyp.html(日本語)

Tweet
シェア


現地の新聞はこちら

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:10026 )