Fikret Bila コラム:民族主義者行動党首、ディンク事件と民族主義との関わりを否定
2007年01月29日付 Milliyet 紙

フラント・ディンク殺害の責任を「民族主義と民族主義者」に負わせようとする動きが、民族主義者行動党(MHP)のデヴレト・バフチェリ党首と党員を不愉快にさせている。さらにディンク殺害の容疑者であるオギュン・サマストと、その扇動役と言われている人物たちが世間に「民族主義や理想主義青年組織」と関係があるかのように紹介されたことが、この不愉快さを反発へと変えさせたようだ。

MHPのバフチェリ党首は、今回の殺人事件と民族主義とを関連付けようとする努力と、一部の高官が殺人事件が「民族主義的感情により」行われたとする説明を不当で根拠のない、さらに意図的なものとさえ考えている。

■ディンク殺害事件

バフチェリは、この件で私の質問に答える一方で、フラント・ディンクの殺害を大変残念に思っていると述べ、次のような見方を示した。
「1人のアルメニア系同胞が殺されたことは、大変残念な出来事だった。フラント・ディンクの事件だけでなく、いかなる殺人事件も賛意を得られるとみなされてはならない。しかしこの忌むべき事件の責任を民族主義、すなわちトルコ民族主義に負わせようとすることもまた非常に大きな不当行為である。フラント・ディンクが殺されることでトルコに得られるものは何もない。この事件をきっかけに民族主義を糾弾しようとすることも、民族主義に問題があると主張することも承服できない」。

■「我々にいかなる責任もない」

バフチェリは、アルメニア系の同胞をどのように見ているかについて、次のように語った。
「アルメニア系の同胞と我々の間にはこれまで何の問題はなかった。(アルメニア系の人々は)オスマン朝時代には忠実な臣民として、共和国に入ってからは少数民族の地位にある兄弟民族となった。我々トルコ民族には彼らを守る責任がある。これにもかかわらず、フラント・ディンク殺害の理由によって民族主義に問題があると主張することや、新たな分裂の種をまくような形で反民族主義の行動を起こしたり主張をすることは正しくない」。

デヴレト・バフチェリ党首は、トルコ民族主義に「人種主義」(の要素)を見出だそうとすることも無駄な努力であるとし、MHPによる民族主義の理解を次のようにまとめて述べた。
「トルコ民族の歴史において、人種主義が生じたことは一度もなかった。人種主義はヨーロッパ起源の概念であり現象である。トルコ民族主義に人種主義の要素を見出そうとする者は、間違った場所を見ている。ヨーロッパを見る必要がある。人種主義はヨーロッパの恥であり、トルコ民族にはこのような恥ずべきものはない。我々の民族主義の系譜においては、心の荒廃もまた一度もなかった。我々の民族主義に対する理解は明確だ。この150年間変わっていない。MHPの民族主義の認識はアタテュルクの「自分をトルコ人だと言える人は何と幸せか」という金言に集約されている。こうした表現や理解において、人種主義はない」。

■ファシズムとナチズム

MHPのバフチェリ党首は、トルコ民族主義に対する安直な糾弾は意図的に行われた方策であると述べ、次のような見解を示した。
「ファシズムやナチズムを擁護してもトルコ民族主義には決してならない。民族主義を正しく認識することはどのような立場の人にとっても有益だ。我々の民族主義に対する理解はいつ何時も人種主義になったことはない」。

■「誇張があってはならない」

バフチェリは、フラント・ディンクの葬儀で示された反発が誇張されたものであったと述べ、次のように話した。
「1人のアルメニア系同胞が殺されたことに、当然ながら我々全員が悲しんだ。しかし(事件に対する)反発にも誇張があってはならなかった。葬儀で『我々は皆アルメニア人だ』と言うとき、(トルコ人に代わってアルメニア人という)上部アイデンティティが示されたことになる。これは正しいやり方ではなかった。誇張された態度であり主張だった。この誇張を不愉快に思う同胞がいることもまた考慮されなければならなかった。アルメニア系トルコ人という表現は一度も用いられなかった」。

■「街角にはいないようにしよう」

バフチェリは、ディンク殺害と理想主義青年組織とが関連付けられようとされていることを不当であるとみなした上で、理想主義青年組織に関連して次のような見解を示した。
「理想主義青年組織を街角で探さないでほしい。我々はいかなる形のけんかや争い、通りでの対立にもくみしないつもりだ。理想主義青年組織は、共和国が100周年を迎える2023年に政治や官僚組織、経済、学問の領域で活動する年齢になる中で、リーダーの立場でトルコを支えているはずだ。トルコの若者を、通りでの争いに向かわせたり、社会的な暴力にさらすことはトルコを暗闇に埋めることと同義である」。

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:10028 )