米国からトルコに5つのメッセージ -国務副長官が語る
2007年02月06日付 Milliyet 紙

1)偉大な国民であるトルコ人には301条のような法律は必要ではない。
2)「我々はみなフラント・ディンク、我々はみなアルメニア人」というスローガンはトルコ人であることを侮辱するものではない。
3)強力で偉大な国であるトルコは、アルメニアに手を差し伸べるべきである。
4)トルコ政府は、自らの利益の為に、歴史を慎重に検討すべきである。
5)トルコのイラクへの介入は重大なリスクを伴う。出来ればこれを引き止めたい。

アメリカ政府は、トルコで高まっているナショナリズム、ディンク氏暗殺、301条問題、トルコ-アルメニア関係、イラクやPKK問題についてトルコ政府に対し一連のメッセージを伝えた。ヨーロッパとユーラシア大陸の問題に責任を負っているアメリカのダニエル・フライド国務副長官は、今日行われるアブドゥッラー・ギュル外相とアメリカのコンドリーザ・ライス国務長官との会談前にミッリイェト紙に対して重要な会見を行った。

■ディンク氏と301条

「私は、ギュル外相を含め、301条を改正する時期が来たと主張するトルコ人の方々と同意見です。トルコは民主主義国家です。この法律はアナクロニズム(時代錯誤)の様に見えます。他の時代の他の国のことのように思えます。
また、トルコ人であることを侮辱しているのは誰でしょうか?ディンク氏?それとも彼を殺害した愚か者でしょうか?ディンク氏は、トルコ人であることを侮辱したりしませんでした。彼は、トルコの歴史と文化の最も良い面を代表していました。つまり多文化的な過去、コスモポリタン的な価値観、並外れた歴史的に奥行きのある感覚を代表していました。私がトルコについて確信したのはこれらのことであり、安っぽく、残酷なナショナリズムではありません。ナショナリズムは矮小な国民の所産であって、自身を信頼する国民が生み出すものではありません。私にとってトルコ人は偉大な国民です。偉大な国民には301条のような法律は必要ありません。私もトルコの今日と近い将来を担うトルコ人の方々と同意見です。」

■スローガンは素晴らしいメッセージ

「ナショナリズムはトルコに限ったことではありません。全ての国々がこの病に囚われていました。重要なのは、トルコにナショナリズムが存在するかどうかではなく、良い指導者達がこの問題について何をするかなのです。
指導者達が、より良い理想像の為に立ち上がる必要があります。このことをアメリカでは市民権運動のさなかに経験しました。偉大な指導者が白黒はっきりとした考えに立ち、「アメリカは、こうではない、こうあってはならない」と述べていました。時が過ぎるにつれ、、一世代後の私たちは変りました。つまり、最悪の状態から最良の状態へと変わったのです。これを行うには、道徳上のリーダーシップが必要です。私は、イスタンブルで行われた葬儀で、「我々はみなフラント・ディンク、我々はみなアルメニア人」と唱える人々を見て、このリーダーシップがトルコに存在しているのだと気づきました。このスローガンは、「もっと良い方法がある、私たちがそれを示している」という意味です。これはトルコ人であることへの侮辱ではなく、重要な姿勢です。これはトルコ人であることの可能性についての素晴らしいメッセージです。

■アンカラ―エレバン

「私は(トルコ・アルメニア間の関係をこの時期に正常化することは)可能であり、また不可欠であると考えます。トルコは偉大な国でありアルメニアより更に大きく強力な国です。あなた方は彼らに手を差し伸べるべきだと思います。これはディンク氏の、そして彼が今までなしてきたことがらの精神に合致するものです。」
ディンク氏は、トルコ人であることとアルメニア人であること両方に固執しました。彼はトルコの尊大な一国民でありアルメニア人の申し子でもありました。そして二つのどちらかを選ばなくてはならないと主張する人々に反発していました。トルコは、ディンク氏を偲んで、今アルメニアに手を差し伸べるため並外れて大きな一歩を踏み出さなければならないと思います。

■(アルメニア)大虐殺法案

「私たちはアメリカ議会に対して、この法案は、私たちがアルメニアとトルコの間に期待している歩み寄りのプロセスを前進させはしないと説明するつもりです。
共通の歴史を注意深く検討することが、アルメニアとトルコに残された課題です。トルコは、自国の歴史を慎重に調べなくてはなりません。大虐殺法案は、このプロセスに貢献するものではありません。トルコがこのプロセスを成し遂げる為には勇気を持つことが必要です。
ではトルコは何が出来るのでしょうか?私としてはトルコが、アメリカ議会や外国人たちが求めるからではなく、自らのために、自身の内側を良く観察することやトルコの歴史について正直になることが必要であると考えます。そしてアルメニアに手をさし伸ばし、将来に向けての道を提案することが必要です。トルコが、この問題にリーダーシップを発揮できることを、また実際に発揮することを望んでいます。」

■トルコ政府はクルド人に救済の手を

・「トルコに(混迷している者たちが戻るための手助けをするために)出来る事があります。PKKに対してではなくクルド人に手を差し伸べることを前提とすべきです。クルド人とは、トルコ国内にいるクルド人とイラクのクルド人地域の自治政府のことを意味します。これには重要な戦略が必要とされます。」
・「イラク連邦を支援する為にイラク政府、クルド人地区自治政府そしてトルコの同胞達と共に我々は協力していきたい。(イラクは)石油収入が平等に分配されるような国になることを望んでいますが、実際キルクーク問題も大部分が石油にかかわる問題です。トルコは、イラクを不安定にさせるような事は行わないでしょう。私たちは(キルクークの国民投票については)イラク憲法への尊重を示さなければなりません。」
・「軍事介入について話し合うことは、有利な軍事介入を行うよりも容易なことです。トルコが(イラクに)介入する事は深刻なリスクが伴うと考えています。トルコと協力してこの選択肢の回避に向けて取り組めるよう望んでいます。

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( 翻訳者:新井仁美 )
( 記事ID:10103 )