Sahin Alpay コラム:「深層国家」とは結局何なのか?
2007年02月08日付 Zaman 紙

トルコにおける政治的安定を崩すことを目的とした殺人事件が起きたいずれのときと同じように、アゴス紙総発行人のフラント・ディンクが殺された後にも「深層国家(derin devlet)」の議論が盛んに行われた。

この(言葉)の概念がそもそもトルコの政治用語に入ってくるきっかけとなったのは、1996年12月に起きた「ススルルク・スキャンダル」だと言うことができる。このスキャンダルは、何人かの国の高官がPKK(クルド労働者党)を支持していると思われる人物を殺すために裏社会の構成員(無法者の殺人犯と麻薬密売人)を利用していたことが判明した事件であった。次第にこれらの構成員が自分の利益のために国を利用しはじめていたことが分かってきた。(首相府調査委員会のクトゥル・サヴァシュ委員長や、トルコ大国民議会ススルルク委員会、MİT(国家諜報機構)の作成した、インターネットでも閲覧できる報告書がこの問題の重大さについて知るよい手掛かりを与えてくれる)。

その時から今日まで徐々に広まった概念としての「深層国家」に、その由来やその言葉が何を意味するのかという点についての一致した意見がないのは確かだ。「深層国家」の起源に関しては少なくとも2つの説がある。ある人々によれば、「深層国家」の起源は冷戦時代にNATO(北大西洋条約機構)の加盟国で形成され、CIA(アメリカ中央情報局)の指揮と資金援助を受けた諜報・軍事活動組織にある。この組織のトルコでの名称が「コントラゲリラ(Kontrgerilla)」である。コントラゲリラについては1974年に故ビュレント・エジェヴィト首相が初めて言及した。

一方、他の人々によれば、「深層国家」はオスマン朝時代の末期に統一と進歩委員会政権によって作られた秘密の諜報・軍事活動組織である「Teskilat-i Mahsusa(特別部隊)」に端を発している。エルドアン首相が最近、「深層国家の存在に同意しない、というわけではない... これはいつの時代にもあるもののようだ。トルコ共和国になってから始まったものではない...」「深層国家は(我が国の)伝統になっているようだ。この言葉はオスマン朝時代から使われている。国家機関内部にある暴力集団とも言うことができる。このような構造がある...」(各紙、2007年1月28~30日)という時にはこのことを指しているのである。

「深層国家」が何であるかについて、スレイマン・デミレル元大統領・首相によればこうだ:「深層国家とは、軍隊だ」(ラディカル紙、2005年4月18日)。トルコには「1つではなく2つの国家」がある。「文民国家」が退出すると「深層国家」が姿を現す。
デミレルを政権の座から追い落とした1980年9月12日の(クーデターを行った)軍事政権のトップであったケナン・エヴレン退役大将も、デミレルと同じ見解である。曰く「デミレル氏は正しいことを言っている。深層国家とは我々のことだ。国家が機能不全に陥ったとき、我々がその役目に乗り出す...」(NTVMSNBC、2005年11月16日)。

(深層国家の)概念は、国際的な百科事典にも載っている。英語版ウィキペディアによると、「深層国家」とは「トルコの政治システムの中で法律に依拠しない、しかし影響力のある反民主的な連合体を指す。この連合体(の構成員)には治安部隊や諜報機関、司法機関の上層部のメンバーや組織化された犯罪組織の有力なリーダーたちも含まれる... 過激な民族主義・国家主義のイデオロギーと強く結びついた軍人と治安、司法組織のメンバーとで構成され、見解を共有しない政府を妨害し、転覆させることも辞さない」。

外国人の専門家が「深層国家」をまた違った形で解釈しているのも目にする。「深層国家は、治安、諜報組織と並んで、国家の官僚機構の中に巣食い、変化に対して時には暴力を使って反対するグループである... 政治において国家が中心的な役割を果たすことを主張する高位の司法、教育機関のメンバーが共有する信条(に基づいた)システムであるとも定義できる... それほど(世間に)広まった概念であるため、トルコ人は冗談として職場や日常生活で他の方法で表すことが困難な出来事をその言葉を用いて説明する...」(Associated Press発 Today's Zaman紙、2007年2月2日)。

エルドアン首相による定義は次のものだ:「深層国家は、公共機関の内部で自らの認識や信条の名の下に権限を超え、法律を逸脱する形で形成された暴力集団である」。(各紙、2007年2月7日)

ある問題を解決するためのおそらく最初の条件は、問題が何であるかを定めることだ。

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:10126 )