Can Dündar コラム:命の値段・・・2リラ
2007年02月12日付 Milliyet 紙

ここ数日、ずっと2リラ分の硬貨(新トルコ・リラ:約180円)を掌のなかで遊ばせている。
2トルコ・リラ…
道端に落ちていても、わざわざしゃがみ込んで拾わない方もいる。
つり銭であれば気にも留めない方もいる。
やれ、お小遣いだ、チップだ、義援金だといって貰っても顔を背ける方もいる。
2リラぽっちだし…

***

2月6日深夜、シャンルウルファに大雨が降った。
ジェイハンプナル農業労働(機構)の農場の中を流れるチュルプ川が氾濫した。川に架かる頑丈な通路は崩壊した。
あるトラックがその通路を渡ろうとしていたのは、ちょうどその夜のことだった・・・
トラックの荷台には44人が乗っていた。そしてその多くは女性と子供だった。
農業労働(機構)の農場へ羊の乳を搾るために向かっていたのだった。
トラックの運転手は道が無くなっていることに気付かなかった。そして、車体はチュルプ川に転落した。
荷台に乗っていた44人は川に投げ出され、流された。
トラックの荷台にうまくつかまることができた33名は救助された。
救助された人々はジェイハンプナル国立病院に収容された。
激流に飲まれた2人の労働者、エルマ・カヤさん、ハジェル・カヤさんが死亡。
ハリル・エテさん、アフメト・エテさん、エミネ・エテさん、アヌチ・エテさん行方不明。
ぜフラ・カヤさん、ハトゥン・カヤさん行方不明。
ナイレ・チョラクさん、ファトマ・メルチさん、ハルフェ・アイベルクさん行方不明。
これらの名前は第一報で報じられたものだ。

***

深夜、捜索救助活動が始まった。
ダイバーは夜を徹して川中で労働者を捜索した。
川のシリア側ではシリアの方々が捜索に当たった。
結果は芳しくなかった。
事故に関連してジェイハンプナル共和国検察局の捜査が始まった。農場での乳搾り業務を委託契約していたジェラル・ウルカヤが身柄を拘束された。拘束の理由は、生存者の証言によって明らかとなった。
生存者のひとり、ハリル・エルトゥールルさんは10年近くこの仕事に携わっていた。彼らは農場での搾乳業務で日給2リラを得ていた。
エルトゥールルさんは「では、(そんな僅かな額のために)どうして働いていたんですか?」と尋ねると、短くこう答えた。
「仕方なかった…職が無いから。」

***

日給2リラ、月給にすれば60リラ…
44名が川に流され、そのうち11名を雨で増水した激流で亡き者にした糊口をしのぐための苦闘――その代償がこれだ…
失業という病を患った貧しい人々を「何も無いよりはいい」と慰めて言いくるめる契約者が、安価な労働力を査定して付けた価値だ…
それが2リラ…
ここ数日私がずっと掌のなかで遊ばせてきた2リラ…
彼らの命の値段は2リラ。
お小遣いをせがむ子供たちには、このコラムを添えてあげてください。
命がどういうものかを学ぶために…

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( 翻訳者:長岡大輔 )
( 記事ID:10166 )