Murat Yetkin コラム:イラク・トルコの「クルド人ライン」と総選挙の行方
2007年02月22日付 Radikal 紙

アブドゥッラー・ギュル外相は、イラクのアーディル・アブデュル・マフディ副大統領と行った会談で、キルクークの地位に関して年末までに行われる見通しだった住民投票の延期について意見を交換したと語った。(ギュル外相は)この問題についてマヌチェフル・モッタキ外相とも会談したことが判明している。
イラクのクルド系のジャラール・タラバーニー大統領を補佐するシーア派のマフディ副大統領は、キルクークにもイラクにおけるクルド労働者党(PKK)の存在にも言及しながら「外からの干渉には反対である」と話した。外部からの軍事行動による占領で転覆したサッダーム・フセイン政権に代わってアメリカの保護の下に作られた政府のこの言葉を、本題から議論をそらさないためにただ記録に留めておくことにして話を続けよう。

イラクでのPKKの存在もキルクークも、現在トルコにとって重要な外交上の問題である。ギュルもヤシャル・ビュユクアヌト参謀本部長も、2月上旬に訪米した際にこれらの問題を相手側にそれぞれ伝えていた。
トルコはこれらの問題をアメリカと話し合い、アメリカとともに解決することを望んでいる。アメリカとイラクはというと、彼らも交渉の担当者を受け入れることや、このことにより問題解決が容易になるだろうという考えを表明している。
一面ではイラクの国土の一体性と政治的統一の維持を最大限重視しており、このためイラクの中央政府の強化が必要だと言っているトルコ政府だが、他方でイラクのタラバーニー大統領とは対面を果たしていない。スンナ派とシーア派の副大統領が2週間の間を空けて(それぞれ)アンカラに迎え入れられたのに対し、タラバーニーは呼ばれていない。
なぜならアンカラではこの問題で大きな見解の相違があるからだ。

政府は、タラバーニーとも、例えばPKKとの戦いについて北イラクのクルド自治政府のマスード・バルザーニ首相とも会談することができると考えている。ヤシャル・ヤクシュ元外相は「会談が兵士の命まで救うことになるのなら、やる価値がある」と述べ、議論の下地を作っている。
軍は、参謀本部長の口から「クルド人がPKKを支援する限り、私は会わない。政治家が求めるなら会うかもしれない」という言葉が聞かれる。これは、“諸刃の剣”(ここでは両義的な言葉の意)のような表現だ。この言葉を「政治家が会えばいい。私は会わない」と肯定的に解釈する人がいる一方で、真意を隠した脅しだととらえる人もいる。つまりいかようにも解釈できるのだ。
セゼル大統領はといえば、最もかたくなな態度をとっている。昨年、国家諜報機構(MİT)のエムレ・タネル事務次官がバルザーニと会談するという決定を伝えられたことが、国家安全保障評議会(MGK)でのセゼルの態度を硬化させており、タラバーニーともバルザーニとも会わないという考えだ。

アンカラではこのように少なくとも3つの異なる見解がある。
この見解の相違は、混乱を招いている。相違は明日2月23日のMGKの会議で乗り越えられるだろうか?あるいはより深刻になるだろうか?どんな状況でも何についてでも、こうした混乱状態や体制の弱体化を利用しようとする多くの国や集団がいる。
昨日のディヤルバクルでの2つの会見は、危険な事の行く末を示している。地域治安会議で座長を務めたアブデュルカーディル・アクス内相は、3月21日のノールーズ祭を政治的な清算をするための道具として利用することを許さないと述べた。にもかかわらず(クルド系政党である)民主市民党(DTP)県支部のイブラヒム・アイドードゥ支部長は、「政治的な清算」をとうに超えて、向こう側に行っている状態だ。
アイドードゥは会見で、1-トルコ(政府)が招かなくてもタラバーニーとバルザーニをDTPのアフメト・チュルク党首がノールーズ祭の催しのためにディヤルバクルに招待する、2-キルクークに対し行われるであろう攻撃をディヤルバクルに対し行われているものとみなす、と語った。
この2番目の話はおそらく、一部の野党議員が提唱し、軍は関心を示さなかった「キルクークへ行こう」という呼び掛けを念頭に置いた言葉だ。さてそのようにみなされるのなら、何が行われるかは民主主義の枠の中で容易に説明できるような類のものではない。

これらの事全てが(総)選挙にどのように関係しているのかといえば... 目下南東アナトリアで活発に活動している2つ半の政党がある。PKKと共通の基盤を持つDTPと(与党の)公正発展党(AKP)、それに最近まで(村落)監視員の部族の支持を得ていた正道党(DYP)である。(選挙での)競争はDTPとAKPとの間で起こるものと見られている。
AKPは、バルザーニのシンパの部族やグループの支持を受けることができれば、DTPに勝つことができる。つまり乱暴に言えば、残念ながら今年の総選挙はこの地域では(他の強力な政治的介入がなければ)アブドゥッラー・オジャランの方針を支持する人々と、マスード・バルザーニの方針を支持する人々との戦いになるものと見られている。
トルコがイラクやイラクにおけるPKKの存在に関してとった外交政策は、内政とこのような形でリンクしている。80年間の政治、いや、もしかしたら政治不在の結果、我々がたどり着いた地点がここなのだ。

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:10242 )