Fikret Bila コラム:矛盾に満ちた北イラク融和説
2007年02月28日付 Milliyet 紙

北イラクに関連して主張されるようになったシナリオの1つが「よい隣人関係」、さらには「パトロン関係」を築くというシナリオである。
このシナリオは、経済を軸とするものである。北イラクに位置するこの地域を経済的にトルコと結びつけるという説に基づいている。海への出口を持たない北イラクがトルコ経由で世界市場にアクセスできるようになり、また経済インフラと物流機能もトルコからまかなうことができるという考え方を基盤とする。
この説には議論すべき面があるのと同様に正しい面もある。
この考えを基に、トルコと北イラクは「紛争」ではなく「協力」の間柄でなければならないと主張されている。この見解を支持する人々によれば、北イラクに独立したクルド国家が建てられる場合でさえ、トルコとの関係はこの考え方に沿ったものでなければならない。さらにトルコはこの国家の「パトロン」の役目を果たさなければならない。

■解消されない矛盾

この地域(=北イラク)との経済関係を発展させることに努めている政府がこのシナリオからとても縁遠い場所にいるとは言えない。
特にアブドゥッラー・ギュル外相は、北イラクのクルド人はトルコ国民の親戚であると事あるごとに口にしている。経済関係や福祉の増進、民主化の促進(の必要性)を主張している。
トルコの公の政策は、イラクの国土の一体性の保持を基礎とする考え方に基づいている。イラクの一体性の枠内で経済関係を深めることを基本目標としている。
しかし、今日北イラクにおける「解消されない矛盾」が問題となっている。この矛盾はアメリカの高官にもマスード・バルザーニをはじめとする北イラクのリーダーにも言えることである。もしトルコ・イラク(北イラク)間で上記のような関係が築かれることを望むのなら、その前提条件として、トルコの国土と国民の一体性に敬意を払うことが求められる。
一方でクルド労働者党(PKK)を支持しながら、他方でトルコに友好関係を求めることは「(どこまで行っても)解消されない矛盾」である。北イラクでクルド国家(の樹立)を宣言し、その後にトルコやイラン、シリアから国土の(立地上の)要請に基づいた政策を実行する過程を支えながら、トルコから引き続き「友好」を期待することもまた現実的な方策であり得ない。

■バルザーニの発言

昨日共和人民党(CHP)のデニズ・バイカル党首も言っていたが、バルザーニの発言や、トルコに向けて送られたメッセージに対して「一緒に座って何を話すのか?」と問うことは重要である。「PKKとの軍事闘争は期待しないでほしい。しかしあなた方とは戦っていく。傍観者のままでいないでほしい」などといった発言は、バルザーニがPKKをどのように捉えているか示してはいないだろうか?
バルザーニは「北イラクの枠組み」を、(トルコの民放である)NTVのメテ・チュブクチュの質問に答える際にはっきりとした形で次のように示した:「PKKとは戦わない、キルクークをその管理下においた、適当な機を見計らって独立を宣言するクルド国家である」。
バルザーニは、「我々の北イラクとPKKに対する立場はこうだ」とし、次のように付け加えた:「トルコが我々との対話を求めるのなら歓迎する」。
エルドアン首相は、「首相あるいは外相」レベルでの交渉はあり得ないが、技術(代表団)レベルでの会談はあり得ると述べた。
おそらく「今のところは」という条件つきで...
首脳レベルでの「イラク隣接諸国サミット」の活性化に向けた新たな会議と、「技術代表」レベルでのバルザーニとの会談の準備が行われているとの情報が流れている。
技術的な交渉がトルコあるいはバルザーニの考え方を変えることができるのか、見守っておこう。

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:10293 )