Haluk Şahin コラム:詩の効用―3月21日世界詩歌記念日を前に―
2007年03月18日付 Radikal 紙

人生とは一方では喪失のプロセスである。何が本当に重要で、何が重要でないのかを、生きていくうちに我々は学び取っている。日々の生活のあらゆる局面で火花が飛び散り、炎が燃え立つけれども、個々の精神のなかにあるボイラーでは、ひとりでに、ある種の蒸留作用が絶えることなく進んでいる。

ぽた・・・ぽた・・・ぽた・・・

蒸留器から滴りおちるのだ、蒸留を経た液体が、混じり気のない純水が。
人によっては、歳を重ねるにつれ、財産や権力欲、功名心の無意味さを悟りはじめる。賢明な人は、この問題について時代を経て語られてきたこと(の意味)をよく理解している。そして個々の人生における重要性や優先性のリストをそれに応じて変えるのだ・・・。

ぽた・・・ぽた・・・ぽた・・・

私の(内面の)蒸留器からは、ここ数年、詩が滴り落ちている。現代の人間の喧騒に満ちた生活からは放逐されてしまったが、かといって誰もが無視できない、かの真髄たるもの、最後の砦。それこそが詩だ!

人生を見渡してみると、ただ一篇の詩によってその人生が価値があったと考えるであろう人々がいるように、私には思われる。ただ一篇の詩が、その生涯を苦難に費やすに値するものであろう、と・・・。

例えば、アフメト・ハーシムの詩「カーネーション」。それは、わずか6行で「この人が生きていて良かった」と人に言わしめる。

但し「ある日の終わりの求め」をも、彼は綴った。

今や、私にはこう思われる――ただ一篇、あのような詩を綴れるようになるために、私は自分のやってきたことを何もかも諦めることができる、と。

アフメト・ムヒプ・ドゥラナスの詩「雪」。ヤフヤー・ケマルの「ウトゥリー」。テヴフィク・フィクレトの「霧」。ジャーヒト・スクトゥの「日よ翳るなかれ、わが窓から」・・・カヴァフィスの「イサカ」・・・。これらは偉大な生涯に値するであろう詩だ。

ビル・ゲイツは、――仮定の話だが――シェークスピアのようなソネットを綴れるようになるために、彼自身の富を諦めることはないのだろうか?私には、まるで(彼がその詩作の衝動を抑えて)やり過ごせたかのように思われる。

分かってはいる、詩をあざける人々や、蔑視的な心ない言葉を投げかける人々が世の中にはいるのだと。彼らは、一体彼ら自身に何が欠けているのかさえ気付いていない。私は、彼らに歯がゆさをおぼえる・・・。喉元まで「目に見えること(の価値)」に浸ったすべての人には、息をするのと同時に、詩こそが大いに必要なのである。私が生きてきた中で学んだことは、それだ。

詩(そのもの)に日や時間は関係ないが、3月21日は世界詩歌記念日である。詩人ジャヴァト・チャパン氏が世界詩歌記念日についての告知で、その日について説明しているのをご覧あれ。

「ある人は公園で、ある人は会議室で、ある人は愛する人と一緒に、それぞれの間で詩を口に出したり、詩について語り合ったり、詩について考えたりして祝うのが、今日(3月21日)なのです。詩が、人間の苦しみ、喜び、理想、そしてそれと気付かないようなより微かな感情をいかに言葉たらしめる存在であるかを、改めて思い起こすことになるでしょう。ある人々はボスフォラス海峡の両岸に植えられたハナズオウを目にして、それ(→詩の魅力の再認識)をするでしょう。人によっては実際には頭を吹き飛ばす威力のある爆弾が側にある状況で、絶叫のなかで、火薬の匂いのなかで(詩の魅力に気付くことになるでしょう)。ある面では虐げるものと虐げられるものがいることで、また別の面では、夜、星、芳香、丘から麓へと花をつける木々があることで、人を狂わせるこの世界に思いをめぐらしつつ、この祝典に参加するのです。詩こそが、存在するもの全てを、我々の五感を活性化して(見て、聴いて、嗅いで、味わって、触れて)理解するのを可能にするための、繊細な源泉であることを、また、詩こそが、我々に各々の感情にしたがって考え、各々の考えにしたがって感じることを教えるものであることを、世界詩歌記念日の祝典が、我々に思い出させるのです。自由や連帯が失われつつある中で、詩こそが、「一本の樹のような孤高さと自由を持って、一群の森のような兄弟愛を持って」生きよと呼びかけるものであると思い至るでしょう。エディルネからアルダハンまでだけではなく、中国からペルーにまで及ぶ期待と共に・・・」

この呼びかけは我々全てに対してのものだ。私はその通りだと納得している。


***解説***
○世界詩歌記念日(3月21日)
 トルコ語:Dünya Şiir Günü (Dünya Şairler Günüとも)
 英語:World Poetry Day
 国際連合のユネスコが文芸の振興増進のために1999年(平成11年)に制定した記念日。

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( 翻訳者:長岡大輔 )
( 記事ID:10445 )