論説:イラク・クルド社会における女性問題
2007年04月07日付 al-Sabah al-Jadid 紙

■ 女性に対する暴力という文化について

2007年04月07日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)1面

【アーザー・ハシーブ・カルダーギー】

クルド自治政府人権省が公表した報告書によれば、自治区内の女性の死因について、自殺が2005年の22%から2006年の23.88%と、割合にして4%増加し、殺人が2005年の4%から6.34%へと上昇した。自殺、または殺害された女性の総数は、2005年の289人から06年は533人と増加した。

報告書は、暴力に晒される大多数の女性の年齢は13~18才で、それらの暴力行為は、殴打、性的暴行、殺すという脅迫、罵倒、中傷、強制結婚、拉致、学校へ行かせない、学校教育を修了させない、行動の自由を認めない等、多岐にわたる事を示している。

東洋の社会一般、特にイスラム社会でそうであるように、クルド社会にも各種の要因で女性に対する暴虐行為が存在する。社会文化的な要因として筆頭に挙げられるのは、女性を知性と宗教心において劣っているとみなし、女性の政治、社会、経済的問題を省みない文化、そういった習慣と伝統が支配的であるという事実である。

クルディスタン社会は、女性を二級市民、あるいは彼女らの知的可能性という点ではそれ以下の地位に置く男性社会である。この性質は、イスラム的なルーツとは無縁の民俗的伝承や慣習に基づく説話と宗教を混同し、コーランの章句を大衆的に解釈した、誤った理解の結果であり、従って宗教的なものではなく、世代から世代へと受け継がれてきた社会文化的なものである。

神聖なコーランの章句を、それらが下された当時のコンテクストから切り離し、またそれらを適用すべき現在の状況と往時の状況を比較することもなく解釈する事により、このような文化が引き継がれてきた。これは、人間社会の発展、その一部である女性と彼女達の政治、経済、文化的役割という視点を意図的にないがしろにする行為であるが、クルド社会の中では、極端な改革主義の傾向がこのような振る舞いを助長している。

これらの過激な傾向は、我々の社会の中で女性に対する暴力の文化を育んできた。女性問題は、社会的なタブーの領域に踏み込み、哲学的にではなく大衆的に解釈されたモラルや尊厳に関わるが故に、政治的な争いの中で焦点となる議題の一つである。過激派は、女性解放、男女同権といった要請は、モラルから逃れたいという声であり、尊厳を傷つけるものであるという考えを人々の間に吹き込もうとし、これらのプロパガンダが更に男性側の過剰な反応をもたらす。

ところで、クルディスタン愛国解放運動は、女性の政治参加を保証しており、武装闘争の段階においては女性も軍に参入し、民主闘争においては女性の国会議員や閣僚が活躍している。

クルド自治区政府は女性団体を支援し、現在社会で起きている戦いにおいては、女性の権利を守る側につき、政治、社会、経済、文化面での男女同権を達成すべく努力している。女性福祉のための法令発布などの措置が近年取られてきたが、自治政府は個人の地位に関わる法律の改正案をクルド国会に送り、真剣な討議の結果多くの条項が改正される事となった。また自治政府は、数年前に、(家族、一族の)名誉を守るための殺人を法によって罰せられるものとする法令を出している。政府の措置は大胆で抜本的なものであり、過去のクルド社会には必要なものであった。
しかし残念な事に、女性に対する暴力、抑圧は社会の文化に根ざすものであり、絶え間なく自己増殖し次世代へと受け継がれる病的な症状を示している。法制定機関としてのクルド国会、執行機関としての政府、人々のメンタリティに働きかける社会機関としての宗教組織、個々人のための社会を育てることに重点をおく教育機関、個性創出の場としての家族、これらが一丸となって社会文化の総体的な改革を目指さない限り、暴力の文化、特に女性に対する暴力が阻止される事はないだろう。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:10602 )